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平成25年版 犯罪白書 第6編/第6章/第4節

第4節 矯正施設における処遇体制の充実・強化

刑事施設の女子の収容率は,女子の収容定員の拡大及び入所受刑者人員の高止まりにより,近年低下傾向にあるものの,既決については100%を超える状況が常態化している(6-4-1-1図参照)。また,前記のとおり,女子の入所受刑者は,高齢者層では万引きを主とする窃盗事犯者,若年者層では覚せい剤事犯者が多く,また,それぞれの年齢層や入所度数等に応じた問題がある。男子の刑事施設は,受刑者をその犯罪傾向の進度や属性により区分して収容しているが,女子施設では,それらを問わず,同一の施設の中で混合して収容しているのが現状であり,受刑者の様々な特性に応じたきめ細かな指導を充実させるには課題がある。さらに,女子の受刑者は,精神障害を有する者の占める比率が高く,さらに,異常な食行動を繰り返す摂食障害のある者も少なくない(本編第4章第1節3項(7)参照)。こうした精神障害を有する者や高齢者等に対する医療的措置や配慮,心身のケア等は,個別的対応が求められ,また,適切な処置を行う上での専門性が高いものといえる。特に,摂食障害については,特効薬がないなど治療に困難が伴い,刑の執行を目的とした刑事施設においては,そうした問題についての専門性を有する職員の確保は容易ではない。

これらの問題に対処するには,事例の集積や施設間の情報共有に加え,心理療法,医療や介護等の分野の外部専門家と積極的に連携することにより,対応のノウハウを積み重ねていくことが有効であろうし,これら分野の専門職員の不足に対しては,民間の支援・助力を最大限に活用するとともに,施設の拡充を含む処遇体制の充実・強化を図るべきであろう。