刑事施設においては,一般改善指導のほか,特別改善指導において「薬物依存離脱指導」が行われ(第2編第4章第2節3項(2)参照),少年院においては,従前から矯正教育において薬物の再使用防止指導に注力している。また,保護観察処遇においては,専門的処遇プログラムとして「覚せい剤事犯者処遇プログラム」が行われているほか,簡易薬物検出検査が取り入れられている(第2編第5章第2節2項(2)及び第3編第2章第5節2項(3)参照)など,覚せい剤事犯者に対しては,その特性に応じた相応の再犯防止策が採られてきている。
しかしながら,平成20年の女子の出所受刑者の累積再入率を見ると,覚せい剤事犯者の累積再入率は,窃盗に次いで高い(6-4-1-10図)などの実情もあり,更なる効果的な再犯防止対策の必要性がうかがわれる。とりわけ,覚せい剤事犯者が半数を占める若年者層の特性に対応した処遇が早期介入の観点からも重要といえるが,その教育程度,婚姻状況,就労状況等から垣間見える社会適応能力の不十分さ等の負因を克服しつつ,薬物から離脱し,それを維持するための処遇策を確立する必要がある。
この点,刑事施設においては,認知行動療法の手法を取り入れた薬物依存回復プログラムの試行に取り組むなど,指導体制の充実強化を図っており,少年院においては,平成24年度から,新たに薬物非行に関する矯正教育プログラム(本編第4章第2節コラム参照)を実施している。また,保護観察処遇では,同年度から薬物依存回復訓練の民間委託(第2編第5章第2節2項(2)参照)が始まっている。その再犯防止効果は未知数ではあるが,これら取組は,前述した問題にも配意したものであり,まずは,これらの新たな取組を着実に実施し,その成果を検証しつつ,女子の覚せい剤事犯者がこれら新しい教育プログラムや回復訓練を受ける機会の拡充と,その実施体制の充実・強化を図ることが重要である。