前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和40年版 犯罪白書 第二編/第三章/一/2 

2 仮釈放の決定の状況

 仮釈放の許可決定の人員を,昭和三四年以降について,種類別にみると,II-79表のとおりで,II-78表の新受人員と同じ傾向を示している。

II-79表 仮釈放種類別許可決定人員(昭和34〜38年)

 ここでは,仮出獄および婦人補導院仮退院の決定状況をみることにし,少年院仮退院については,第三編第三章でふれることにする。

(一) 仮出獄

(1) 仮出獄の新受と許否の決定

 昭和二四年,犯罪者予防更生法施行後,昭和三八年までの仮出獄の新受と決定の状況を図示すれば,II-2図のとおりである。新受人員においては,昭和二五年(六〇,一五八人),許可人員においては,昭和二七年(四五,三八三人),棄却,不許可人員においては,昭和三八年(三,三〇一人)が,それぞれ最高の頂点である。これは,昭和二五年が,戦後の犯罪事情を背景として,刑務所収容者が最も増大した時期であること,また,昭和二七年は,いわゆる講和恩赦(刑の減軽)により,仮出獄の要件をみたす者が急増したこと,講和恩赦の趣旨にかんがみ,仮出獄が活発に行なわれたことの結果であると考えられる。その後,新受,許可人員については,昭和二八年に激減し,昭和三一,三二年に,やや上昇傾向をみせたものの,昭和三三年以降,下降の一途をたどっている。一方,棄却,不許可の人員は,ゆるやかな増減をともなった横ばい状を呈しているが,昭和三五年からは,新受と許可人員の下降傾向とは逆に,上昇傾向にあることが注目される。

II-2図 仮出獄者の新受と決定の状況(昭和24〜38年)

 これを最近五年間について,やや子細にみれば,II-80表のとおりである。棄却,不許可率が昭和三六年に急増し,以後上昇傾向にあって,昭和三八年は一二・九%で,昭和三四年の六・四%の二倍に達している。

II-80表 最近5年間の仮出獄の新受と決定の状況(昭和34〜38年)

 このように,仮出獄不相当の者が増加していることは,II-81表にみるとおり,暴力および暴力組織に関連する犯罪をした者など,更生を困難ならしめる諸条件をもった者の占める割合が少なくなく,しかも,これらに対する審理がきわめて慎重厳正に行なわれているためであろう。このことは,地方委員会が矯正施設の長から仮出獄の申請をうけてより,仮出獄許否の決定をするまでの審理期間一月以内のものの占める割合が,逐年減少していることからもうかがえる。

II-81表 仮出獄決定人員の罪名別年度別構成比率(昭和35〜38年)

 棄却,不許可率をさらに罪名別にみれば,昭和三八年でにII-82表のとおりであって,棄却,不許可率は特別法犯が二六・八%で刑法犯の一二・二%より著しく高率である。また刑法犯で,棄却,不許可率の高いのは,とばく,強盗強かん,住居侵入,放火,脅迫,強盗致死傷,殺人,わいせつ,傷害,恐かつの順であり,逆に低いのは,横領,傷害致死,強かん,偽造,賍物,詐欺の順となっている。概して,粗暴凶悪犯に対しては,棄却,不許可率は高く,財産犯のそれは低い。

II-82表 罪名別仮出獄決定ならびに仮出獄取消状況(昭和38年)

 次に二三才以上と二三才未満の年令別に棄却,不許可率をみると,II-83表のとおり,二三才以上の者が,二三才未満の者より棄却,不許可率が,各年度を通じて高い。

II-83表 年令別仮出獄決定状況(昭和34〜38年)

(2) 仮出獄処分の当否

 仮出獄処分(仮出獄許否の決定)の当否を判断するための一応の判定資料として,通常仮出獄期間中に再犯,または遵守事項違反による仮出獄取消の有無をみることが考えられる。この正確な資料を得ることは困難であるので,必ずしも適当な方法とはいえないけれども,従来行なわれている毎年の仮出獄許可人員と,その年の仮出獄取消人員とを比較する方法によって,五年間の仮出獄取消率をみれば,II-84表のとおりである。すなわち,取消率は若干の起伏はあるが,五年間を通じ,四ないし五%の横ばい状態で,低率ということができよう。

II-84表 仮出獄許可人員,取消人員とその率(昭和34〜38年)

 しかし,単に仮出獄期間中だけでなく,仮出獄期間の経過後も,再犯におちいらないことが望ましい。これについて,直接の統計資料ではないが,さきに法務総合研究所において,関東地方更生保護委員会が,昭和三六年に仮出獄許否の決定をした全ケース(いずれも仮出獄相当として,刑務所から申請されたもの)のうちから,三,三二〇人を抽出し,うち,同委員会の記録,警察庁指紋原紙による調査が可能で,許否の決定が,その後変更されることなく,仮出獄または満期出獄した二,八九二人について,出獄後一年六月のなりゆきをみたものがある。許可,棄却の決定別に,出獄後警察に逮捕されたものの割合(再逮捕率)をみると,II-85表のとおりで,一年六月間で,棄却(満期出獄)では五一・一%の再逮捕率であるのに対し,許可(仮出獄)では,三三・一%である。次に,六月以内でみると,棄却では二九・〇%,許可ではその半数の一四・七%ときわめて低率である。もとより,二更生保護で述べるように,許可により仮出獄した者には,保護観察が行なわれているため,棄却で満期出獄した者との間で,再逮捕率にある程度の差がみられることは,当然考えられるが,その差の大きいことから,単に,保護観察の有無によるばかりでなく,仮出獄の審理,許否の決定が,適正,妥当に行なわれていることの表われともみることができよう。

II-85表 仮出獄決定者のなりゆき調べ

 しかし,これを個々の事項について考察すれば,罪名別では,前掲II-82表のとおり,棄却,不許可率の高い強盗強かん,住居侵入,強盗致死傷,殺人に,仮出獄取消がより多くみられ,二三才未満と以上の年令別では,II-86表のとおり,棄却,不許可率の低い二三才未満(前掲II-83表)の者に,仮出獄取消が逆に多くなっているなどの特異な現象がみられる。これが仮出獄処分の当否といかなる関連があるかについては,今後,さらに多くの角度から,研究,討議がなされねばなるまい。

II-86表 年令別仮出獄許可人員,取消人員とその率(昭和34〜38年)

(二) 婦人補導院からの仮退院

 婦人補導院収容者の多くは,心身面や,家庭環境などに,複雑な事情を有する者が少なくないうえに,法律上,収容期間に六月という制約があるため,仮退院の制度を十分に活用することが困難な事情にある。
 したがって,出院者中,仮退院者の占める率は,II-87表にみるとおり,この制度の設立された昭和三三年から累年急減し,昭和三八年には僅か八・八%で,仮出獄に比べきわめて低く,また,仮退院の期間が短いのがその特色である。

II-87表 婦人補導院出院者の出院事由別人員(昭和33〜38年)

 いずれにしても,仮退院者の数が,ごく限られているので,ここではII-88表で,仮退院許否の決定状況を示すにとどめる。

II-88表 婦人補導院仮退院許否の決定状況(昭和33〜38)