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 昭和40年版 犯罪白書 第二編/第三章/一/1 

第三章 仮釈放および更生保護

一 仮釈放

1 仮釈放の概況

(一) 仮釈放の意味と種別

 仮釈放とは,矯正施設に収容されている者を,収容期間満了前の適当な時期に,仮に釈放し,一般社会においで,更生をはかろうとする措置である。
 わが国において,保護観察(二の更生保護で詳述する)に結びついた現行の仮釈放が,行なわれるようになったのは,昭和二四年七月一日,犯罪者予防更生法が施行されてからである。
 仮釈放には,刑務所からの仮出獄,少年院からの仮退院,婦人補導院からの仮退院のほか,刑務所(拘留場)からの仮出場と,刑務所に付設された労役場からの仮出場がある。このうち,仮出獄と仮退院は,ともに条件つきの釈放で,この仮釈放者は,いずれも一定期間保護観察に付され,その間,更生を助長されるとともに,誓約した遵守事項に違反した場合は,事情により,矯正施設に再収容されることにもなっている。これに対して,仮出場は,拘留に処せられた者や,罰金または科料を完納できず,労役場に留置された者について,仮釈放の手続がとられるだけで,この仮釈放者は,保護観察に付されることもなく,また仮出場が取り消され施設に再収容されることもない。

(二) 仮釈放決定の機関とその取扱い状況

 仮釈放を許可するかどうかの決定は,高等裁判所管轄区域単位におかれている全国八か所の地方更生保護委員会(以下「地方委員会」という)の権限に属している。
 地方委員会は,三人以上九人以下の委員で組織され,総数四四人の委員によって,その権限に関する事務がとり行なわれている。
 地方委員会は,矯正施設の長から仮釈放の申請があると,主査委員を指名し,これに仮釈放の審理を行なわせる(申請がない場合でも,地方委員会は,職権で審理を行なわせることができることにたっている)。主査委員は,個々の審理の対象者について,施設内の成績,行状はもちろん,性格,経歴,犯罪内容,さらに,社会感情,帰住先の受入状況などを,つぶさに調査するとともに,みずから対象者に面接して,仮釈放の適否について,的確な心証を得ることに努めるなど,慎重な審理を行なう。主査委員の審理が終ると,事案は,委員三人で構成する合議体の審議にかけられ,その評決によって,仮釈放の許否が決定される。
 なお,地方委員会には,それぞれ事務局がおかれていて,そこには八八名の保護観察官が配置され,委員の補助者として,おもに,前記審理関係事務に従事している。
 地方委員会における,最近五年間の仮釈放種類別新受人員は,II-78表のとおりで,全体のほぼ八〇%以上を占める仮出獄が累年減少しているため,その他の新受人員には若干の増減があるが,総人員においては,累年漸減し,五年間に二三・二%,一〇,〇二〇人の減少をきたしている。これは,主として,施設収容人員の減少によるものと思われる。

II-78表 仮釈放種類別新受人員(昭和34〜38年)