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第6章 おわりに

最近の我が国の犯罪情勢は,刑法犯の認知件数が平成14年をピークに減少傾向にあるなど,一定の改善を見せているが,戦後を通じて見るとなお高い水準にあり,国民の治安に対する不安感も解消されたとはいい難い。その中で,平成19年版の犯罪白書では,再犯者の実態の詳細な分析を踏まえて,再犯防止対策の意義を強調した。そして,再犯防止対策は現在国の重要な政策課題とされ,平成22年12月には政府の再犯防止対策関係省庁連絡会議において「再犯防止施策の今後の展開」が取りまとめられ,関係省庁が連携しつつ政府全体として再犯防止対策に取り組んでいるところである。

一方,近年の犯罪白書においては,様々な角度から再犯の要因やその効果的な防止策について調査・分析を行ってきたが,その中で,再犯防止のためには,取り分け少年・若年犯罪者に対する処遇が重要であることが明らかとなった。

そこで,今回の犯罪白書では,少年・若年犯罪者の実態と再犯防止を特集テーマとして取り上げ,第7編第1章において,我が国の青少年層を取り巻く現状のうちいくつかの要素を統計的に明らかにし,第2章では,統計資料等に基づいて少年非行・若年犯罪の動向を概観し,第3章・第4章では,法務総合研究所が実施した特別調査及び意識調査等に基づき,少年院出院者の犯罪や非行少年・若年犯罪者の意識について様々な角度から分析を行い,第5章では,具体的な更生事例を通じて再犯防止に役立つと思われる各種処遇を紹介した。

本特集を締めくくる第6章では,これまでの分析に基づき,この世代の再非行・再犯を防止し,彼らの社会復帰を促進するために必要な対策の在り方について,留意すべきと思われる若干の点と共に提示したい。