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7 今後の生活や立ち直りに必要なことの認識

最後に,今後の生活のために大切と考える事項を3つまで選択させた質問(選択肢は,生活習慣改善,金銭管理,健全な趣味・遊び,就学・就労の継続,資格・技術の習得,教養を高めること,親の指導に従うこと,家族との良好な関係,不良交友の解消,被害者へのお詫び,地元に役立つ行動,保護観察官・保護司への相談,要領よいふるまい,その他の14項目)への回答状況を見る。非行少年では,「規則正しい生活をおくる」(60.8%),「学校や仕事を休まず続ける」(51.8%),「悪い友達や先輩とつきあわない」(38.9%),「親の言うことをきく」(28.4%)の順で選択率が高く,若年犯罪者では,「規則正しい生活をおくる」(55.6%),「学校や仕事を休まず続ける」(40.6%),「お金のむだ使いをしない」(29.8%),「資格や技術を身につける」(28.5%),「家族と仲良くやっていく」(26.3%)などが高い選択率を示した。生活習慣の改善,就学・就労の継続,家族との良好な関係が双方において重要度の高い事項とみなされている。非行少年の場合は,これに加え,不良交友の解消が重視されているが,若年犯罪者では,金銭管理,資格・技術の習得,家族との良好な関係を重視する者が若干多く,不良交友の解消が重要と考える者は4人に1人程度(24.2%)にとどまる。

この回答を保護処分歴別に見ると,非行少年・若年犯罪者とも,選択率が高い項目は共通性が高いが,非行少年において非行が進んだ者ほど「家族と仲良くやっていく」ことを選択する比率が高く(保護処分歴なしの者19.7%,保護観察歴のある者21.1%,少年院送致歴のある者27.8%),「親の言うことをきく」については,逆の傾向が見られる(同30.9%,27.8%,13.9%)。また,少年院送致歴のある者では,保護観察官や保護司とよく相談することを重視する者の割合が高い(同9.1%,23.3%,30.6%)。

一方,若年犯罪者を見ると,少年時から非行が進んでいた者ほど,不良交友の解消が必要と考える者の割合が高い(保護処分歴なしの者18.9%,保護観察歴のある者25.6%,少年院送致歴のある者30.7%)。また,資格・技術の習得を選択する者は,保護処分歴なしの者(30.5%),保護観察歴のある者(33.3%)で3割程度であるのに対し,少年院送致歴のある者(21.9%)では2割程度となっているのは,少年院入院者は少年院の指導により各種の資格や免許を取得している者が多いことも影響していると考えられる。

自由記述方式により,今後の立ち直りに必要な指導や支援を尋ねた質問に対する回答では,本節で分析してきた事項の多くが今後の立ち直りに必要なこととして挙げられていた。すなわち,非行や犯罪に至った原因を,何よりも自分自身の問題として捉え,被害者への謝罪を始めとしてやり直しを図らねばならないこと(例,「自分のするべきことを一心不乱に頑張ることが大事。被害者に対してどれだけの迷惑をかけたか,しっかりと考え,その気持ちを忘れないこと」),就学・就労の維持・継続(例,「やっぱり非行や犯罪をしないための第一条件として仕事をすることが大切です。だから外に出て生かせる資格を取りたいですし,自分でも何かしら勉強をやろうと思います。」),家族の一員としての役割を果たすことや家族との絆の強化(例,「私のことを心配して,大事に思ってくれている人が私の周りにはたくさんいる,子どもや親を大切にすること,絆を大切にすることに今気づいた。」),金銭管理を始めとする生活態度の是正,不良交友の解消(例,「悪い友達などとは関わらないように関係を断ち,親や身内の人の力も借りて,いろんなことに挑戦して,社会の役に立てるような事をして立ち直りたいです。」)などが立ち直りに重要だという意見が多く,また,くじけそうになったときや困ったときの相談相手など心の支えを求める意見(例,「悪友との関係を断つとひとりぼっち,どうして生活していこうという不安定要素の除去に役立つ支え,ポジティブになれる指導があると良い。」)も多く見られた。