前章においては,統計資料等に基づいて少年・若年犯罪者の実態等を概観し,若年入所受刑者の再入者において,保護処分歴を有する者の比率が高いことなどを明らかにし,保護処分を受けた非行少年を,刑事処分を受ける若年犯罪者に移行させないための方策の重要性等を確認した。この章では,少年院を出院した者について,その後の刑事処分の状況等に関する特別調査を実施し,保護処分を受けても改善更生を果たせず刑事処分を受けるに至った要因や改善更生の促進要因等の分析を行った。
特別調査の調査対象者は,平成16年1月から3月の間に全国の少年院を出院(以下この章において「本件出院」という。)した出院時年齢が18歳又は19歳の者であり,その総数は,644人(18歳:342人,19歳:302人)である(全員が少年院を仮退院した。)。
調査・分析の方法は,まず,法務省大臣官房司法法制部の資料により,調査対象者の属性,当該少年院送致決定に係る非行(以下この章において「本件非行」という。)の概要,本件非行時の生活状況,少年院における処遇状況等について調査し,次いで,法務省保護局の資料により,保護観察期間,保護観察終了事由,保護観察時の状況等について調査した。その上で,調査対象者が行った本件出院後の犯行により,25歳に至るまでに言渡しを受けて確定した罰金以上の刑(道交違反の罪のみに係る裁判により,罰金に処せられたものを除く。)を「刑事処分」とし,その刑事処分に係る犯行を調査対象として,検察庁の保管する刑事確定記録を用いて,刑事処分の有無及び刑事処分を受けた者(248人)の本件出院後の生活状況並びに犯行状況等を調査し,犯行の背景や要因の分析を試みた。