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平成22年版 犯罪白書 第7編/第2章/第3節/2

2 再犯状況の分析

この項では,重大事犯者の再犯リスクを探るため,本件犯行の内容や犯罪歴等の別に再犯状況を見る。なお,今回の特別調査に基づく分析では,多種の事情について再犯状況の違いの有無を探索したが,ここでは,特徴的な分析結果が得られたものを中心に紹介する。

(1)女子

調査対象者のうち,女子は60人であるが(7‐2‐1表参照),再犯者はいなかった。女子は,保護処分歴がない者,前科がない者,前に刑事施設に入所したことがない者(初入者)の比率がそれぞれ98.3%,85.0%,98.3%であり,犯罪傾向が進んでいない者が多く,また,仮釈放者の比率が95.0%で,帰住環境もおおむね整っていることなどから,再犯リスクは小さいと思われる。

(2)本件犯行の内容

ア 被害者との関係

親族に対する犯行の比率が高い殺人,傷害致死及び放火(7‐2‐1‐1‐1図参照)について,主たる被害者との関係別に再犯状況を見ると,7‐2‐3‐2‐1図のとおりである。殺人について見ると,親族に対する殺人を犯した者は,殺人全体と比べて再犯率は低く,重大事犯の再犯はなかった。傷害致死では,再犯率は,被害者との関係の別による差はほとんどなく,親族に対する傷害致死を犯した者も,殺人・傷害致死の再犯(同種重大再犯)はないが,再犯率は低くない。この点で,親族に対する殺人を犯した者と異なるが,これは,親族に対する殺人では介護・養育疲れによる犯行も多いのに対し,親族に対する傷害致死は憤まん・激情による犯行のほか虐待・折かんによる犯行が多い(7‐2‐1‐1‐2表参照)ことなどに原因がある。放火では,面識のない被害者に対する犯行を犯した者は,放火全体と比べ,再犯率が高く,放火の再犯率も18.9%と高い(放火の再犯があった者は10人であるが,そのうちの7人は,本件犯行が面識のない者に対する犯行であった者である。)。

7‐2‐3‐2‐1図  殺人・傷害致死・放火 主たる被害者との関係別再犯状況

イ 動機

殺人,傷害致死及び放火について,本件犯行の主たる動機(7‐2‐1‐1‐2表参照)別に再犯状況を見ると,7‐2‐3‐2‐2図のとおりである。

殺人では,暴力団の勢力争い等を動機とする者の再犯率が45.8%と最も高く,他方,介護・養育疲れを動機とする者等では,再犯はなかった。殺人・傷害致死の再犯(同種重大再犯)に及んだ者は2人であったが,本件犯行が憤まん・激情による者と報復・怨恨による者で1人ずつであった。傷害致死では,不満・憂さ晴らしを動機とする者6人のうち,4人に再犯があり,うち1人は殺人の再犯であった。放火では,受刑願望を動機とする者4人のうち,3人に再犯があり,うち2人が放火の再犯であり,不満・ストレス発散を動機とする者も,35人のうち5人に放火の再犯があった。

7‐2‐3‐2‐2図  殺人・傷害致死・放火 主たる動機別再犯状況

ウ 犯行における主導性

強盗及び強姦について,単独犯(調査対象者の単独犯行),主導的共犯(調査対象者が主導した共犯の犯行),対等的共犯(調査対象者が共犯者と対等な役割を果たしたと見られる共犯の犯行)及び非主導的共犯(共犯者に主導された共犯の犯行)の別に再犯状況を見ると,7‐2‐3‐2‐3図のとおりである。いずれの罪名でも,再犯率は,単独犯が高く,非主導的共犯は低く,強姦では,非主導的共犯の再犯率は顕著に低かった。また,強盗では,強盗の再犯に及んだ者は30人であるが,そのうち27人は,本件犯行が単独犯による者であった。強姦では,強姦の再犯に及んだ者は23人であるが,そのうち21人は,本件犯行が単独犯による者であり,強制わいせつの再犯に及んだ者(強姦の再犯にも及んだ者を除く。)15人は,すべて本件犯行が単独犯による者であった。

7‐2‐3‐2‐3図  強盗・強姦 共犯関係別再犯状況

エ 犯行態様等

(ア)強盗

強盗について,本件の罪名の細分別に再犯状況を見ると,7‐2‐3‐2‐4図のとおりである。強盗強姦では,26人中6人(23.1%)が強盗の再犯(4人は強盗強姦の再犯)に及び,2人(7.7%)が強姦の再犯に及んでいた。

7‐2‐3‐2‐4図  強盗 罪名別再犯状況

強盗の犯行態様(7‐2‐1‐1‐7図参照)別に再犯率を見ると,金融機関強盗で28.2%と低いほかは,40%前後から50%弱であり,強盗の再犯に及んだ者の比率は,住宅強盗をした者で17.9%と最も高く(強盗全体で強盗の再犯に及んだ者の比率は8.3%),強盗の再犯に及んだ者30人のうち,10人は,本件犯行が住宅強盗である者であった。

事後強盗に該当する者は,36人(当初の窃盗の手口は,事務所荒らし9人,住宅侵入盗6人,万引き6人等)であったが,その再犯状況は,7‐2‐3‐2‐5図のとおりである。再犯率は高い(その大部分は窃盗の再犯である。)ものの,強盗の再犯に及んだ者(1人)の比率は,強盗全体と比べて低い。

7‐2‐3‐2‐5図  強盗 事後強盗該当の有無別再犯状況

(イ)強姦

強姦について,犯行態様別に再犯状況を見ると,面識のない被害者宅に侵入して犯行に及んだ者(43人)は,強姦の再犯に及んだ者の比率が23.3%(10人),強制わいせつの再犯に及んだ者も含めると30.2%(13人)と,強姦全体(強姦の再犯に及んだ者は23人,9.4%。強制わいせつの再犯に及んだ者も含めると38人,15.6%)と比べて,相当高かった。

(3)犯罪歴等

ア 前科

7‐2‐3‐2‐6図は,本件の罪名ごとに,前科数別の再犯状況を見たものである。いずれの罪名でも,全般的に,前科数が多い者は,再犯率が高い傾向にある。

7‐2‐3‐2‐6図  前科数別再犯状況(罪名別)

7‐2‐3‐2‐7図は,本件犯行が強盗である者のうち,強盗前科,財産犯前科又は粗暴犯前科を有する者について,再犯状況を見たものである。強盗前科を有する者(強盗を繰り返した者)では,更に強盗の再犯に及んだ者の比率は25.0%(7人)と高く,3犯以上の財産犯前科を有する者も,強盗の再犯率は21.2%(11人)と高かった。

7‐2‐3‐2‐7図  強盗 前科数別再犯状況

7‐2‐3‐2‐8図は,本件犯行が強姦である者のうち,強姦前科又は強制わいせつ前科を有する者について,再犯状況を見たものである。強姦前科を有する者(強姦を繰り返した者)では29.6%(8人)が,強制わいせつ前科を有する者では44.4%(4人)が,更に強姦の再犯に及んでいた。

7‐2‐3‐2‐8図  強姦 前科の種類別再犯状況

前記のとおり,前科数が多い者は再犯率が高い傾向にある(7‐2‐3‐2‐6図参照)が,どのような者が前科を重ねて重大事犯に及ぶのかを探るために,まず,調査対象者のうち,前科を有する者について,本件の罪名ごとに最初の前科時の年齢(以下この項において「初犯年齢」という。)を見ると,7‐2‐3‐2‐9図のとおりであり,いずれの罪名においても,20歳代前半にピークがある。

7‐2‐3‐2‐9図  有前科者の最初の前科時年齢と本件犯行時年齢(罪名別)

次に,本件犯行が強盗である調査対象者で,前科を有する者について,初犯年齢の区分ごとに前科数別構成比を見ると,7‐2‐3‐2‐10図<1>のとおりである。初犯年齢が24歳以下の者では,前科数が6犯以上の者の構成比が34.1%と顕著に高く,重大事犯に係る前科を有する者も多い(33.3%。重大事犯に係る前科を2犯以上有する者は9.8%)。さらに,初犯年齢の区分ごとに本件犯行後の再犯状況を見ると,同図<2>のとおりであり,初犯年齢が24歳以下の者では,本件犯行後に重大事犯の再犯に及んだ者の比率が19.5%と高く(前科を有する者全体では15.1%),初犯年齢が24歳以下の者で6犯以上の前科を有していた者(42人)では,そのうちの11人(26.2%)に本件犯行後に重大再犯があった。

そのほかの罪名でも,初犯年齢が24歳以下の有前科者のうち,6犯以上の前科を有する者の比率は,殺人25.0%,傷害致死29.2%,強姦21.5%,放火27.5%であった。また,強姦では,初犯年齢が24歳以下の有前科者は,本件犯行後に重大再犯に及んだ者の比率が32.3%と,有前科者全体(26.0%)と比べて高かった。殺人では,有前科者で本件犯行後に重大再犯に及んだ者5人のうち,4人は,初犯年齢が24歳以下の者であり,傷害致死では,3人中2人であった。放火では,有前科者で本件犯行後に重大再犯に及んだ者は13人であるが,初犯年齢が24歳以下の者は8人であった(初犯年齢が40歳代の者6人のうち,3人にも本件犯行後に重大再犯があった。)。

7‐2‐3‐2‐10図  強盗 有前科者の前科数別・再犯状況別構成比(年齢層別)

イ 刑事施設入所度数

7‐2‐3‐2‐11図は,本件の罪名ごとに,初入・再入別の再犯状況を見たものである。いずれの罪名でも,本件犯行による刑事施設への入所が2度目以降の者(再入者)は,初入者と比べ,再犯率が高く,強盗,強姦及び放火では,同種重大再犯の再犯率も同様であった。

7‐2‐3‐2‐11図  初入・再入別再犯状況(罪名別)

ウ 保護処分歴

7‐2‐3‐2‐12図は,本件の罪名ごとに,保護処分歴の有無別の再犯状況を見たものである。いずれの罪名でも,保護処分歴を有する者は,そうでない者と比べ,再犯率が顕著に高く,強盗,強姦及び放火では,同種重大再犯の再犯率も同様であった。

7‐2‐3‐2‐12図  保護処分歴の有無別再犯状況(罪名別)

7‐2‐3‐2‐13図は,本件の罪名ごとに,初入者・再入者の別に保護処分歴別構成比を見たものである。入所受刑者全体で見ても,再入者は,初入者と比べ,保護処分歴を有する者の比率が高い(4‐4‐7図参照)のであるが,この傾向は,重大事犯の受刑者にも見られる。この傾向は,保護処分歴を有する者は,成人後も犯罪を重ねている者が少なくないことを示しているが,そうした者が,保護処分歴を有する重大事犯者の再犯率が高い要因の一つとなっているとうかがわれる。

7‐2‐3‐2‐13図  初入・再入別 保護処分歴(罪名別)

(4)本件犯行時の生活状況

ア 居住状況

本件犯行時の居住状況別に再犯状況を見ると,いずれの罪名でも,住居不定であった者の再犯率は,定まった住居を有していた者に比べて高く,殺人では37.9%(定まった住居を有していた者では14.4%),傷害致死では62.5%(同29.4%),強盗では42.7%(同37.4%),強姦では66.7%(同36.3%),放火では55.6%(同18.7%)であった。

イ 就労状況

本件犯行時の就労状況別に再犯状況(就労状況が不詳の者及び家事従事者等を除く。)を見ると,傷害致死を除き,無職であった者の再犯率は,有職であった者に比べて高く,殺人では25.7%(有職であった者は12.0%),強盗では41.9%(同35.0%),強姦では50.0%(同33.7%),放火では28.8%(同25.0%)であった(傷害致死では,就労状況による明確な違いはなかった。)。

なお,仮釈放者について,仮釈放期間中の就労状況(その期間が6月を超える者については保護観察終了前6か月間の就労状況)別に再犯状況を見ると,次頁の7‐2‐3‐2‐14図のとおりである。全般的に,就労状況が安定した者ほど再犯率は低いが,強姦では,同種重大再犯の再犯率に就労状況による違いは見られない。

7‐2‐3‐2‐14図  仮釈放期間中の就労状況別再犯状況(罪名別)

ウ 生活上の問題

7‐2‐3‐2‐15図は,殺人,強盗及び放火について,本件の判決から本件犯行時に抱えていたとうかがわれる生活上の問題別に再犯状況を見たものである(基本的には,再犯率が高かった問題について示した。)。強盗では,本件犯行時にギャンブル耽溺の問題を有していた者の強盗の再犯率が高かった。放火では,本件犯行時に生活困窮(19人),孤立(9人)の問題を有していた者のうち,それぞれ,3人(15.8%),3人(33.3%)に放火の再犯があった。

7‐2‐3‐2‐15図  殺人・強盗・放火 本件犯行時の生活上の問題別再犯状況

(5)監督者の存在

本件犯行の裁判時に監督誓約者(裁判において,証人出廷又は書面提出の上,釈放後の被告人に対する監督を誓約した者(親族等)をいう。以下この項において同じ。)がいた者の比率は,殺人19.7%,傷害致死32.9%,強盗28.1%,強姦48.0%,放火32.1%であった。

再犯率は,監督誓約者の有無によって,明確な差はなかったが,本件犯行時に住居不定であった者(193人)のうち,監督誓約がなかった者(161人)では,重大再犯の再犯率は16.1%であったのに対し,監督誓約があった者(殺人2人,傷害致死1人,強盗20人,強姦3人,放火6人の合計32人)では,重大再犯に及んだ者は本件犯行が強姦1人(3.1%)であった。

(6)刑事施設における懲罰

7‐2‐3‐2‐16図は,本件の罪名ごとに,受刑在所期間が2年を超える者について,出所前1年間の懲罰の有無(第2節1項(4)参照)別に再犯状況を見たものである。全般的に,懲罰があった者は再犯率が高いが,放火では,懲罰がなかった者でも再犯率は低くなかった。

7‐2‐3‐2‐16図  釈放前1年間の懲罰の有無別再犯状況(罪名別)

(7)出所事由

7‐2‐3‐2‐17図は,本件の罪名ごとに,出所事由別(仮釈放又は満期釈放の別)の再犯状況を見たものである。平成12年の出所受刑者の10年内累積再入率(7‐1‐3‐3図参照)について見たのと同様に,いずれの罪名でも,満期釈放者は,仮釈放者と比べ,再犯率が顕著に高く,特に,殺人及び傷害致死ではその差が大きいが,傷害致死及び放火では,同種重大再犯に限った再犯率は,出所事由の別による差はなかった。

7‐2‐3‐2‐17図  出所事由別再犯状況(罪名別)

7‐2‐3‐2‐18図は,仮釈放者人員が多い強盗について,仮釈放者の仮釈放期間別の再犯状況を見たものである。仮釈放期間が短いほど,再犯率は高く,仮釈放期間が3月以内の者の再犯率は顕著に高い。仮釈放期間が短いほど,再入者の占める比率が高いこと(仮釈放期間3月以内では51.9%,3月超6月以内では41.9%,6月超1年以内では11.3%,1年超では7.0%)などに原因がある。

7‐2‐3‐2‐18図  強盗 仮釈放期間別再犯状況

(8)再犯期間

7‐2‐3‐2‐19図は,再犯に及んだ調査対象者について,本件の罪名ごとに,再犯期間(出所から最初の再犯に及ぶまでの期間。以下この項において同じ。)別構成比を見たものである。強盗,強姦及び放火では,再犯期間が1年未満の者が4割以上である。

7‐2‐3‐2‐19図  再犯期間別構成比(罪名別)

再犯に及んだ調査対象者について,出所事由別(仮釈放又は満期釈放の別)及び再犯の種別に再犯期間(横軸の月数までに最初の再犯に及んだ者の累積人員の比率)を見ると,7‐2‐3‐2‐20図のとおりである。満期釈放者で重大再犯に及んだ者は,それ以外の者と比べ,再犯期間が短い。

7‐2‐3‐2‐20図  再犯期間(出所事由・再犯状況別)

再犯に及んだ調査対象者のうち,出所後1年未満で再犯に及んだ者の占める比率を,本件犯行時の居住状況別に見ると,住居が不定であった者は,56.7%と,定まった住居を有していた者(31.0%)と比べて高く,強盗及び放火では,住居が不定であった者の6割以上が1年未満で再犯に及んでいる。

7‐2‐3‐2‐21図は,強盗について,出所後1年未満で再犯に及んだ者の再犯期間を見たものである。18人が,出所後1月未満で再犯に及んでおり,そのうち,満期釈放者は,15人であり,再犯に及んだ満期釈放者の33.3%(満期釈放者全体の18.5%)を占める。この15人の入所度数を見ると,8人が5入以上であったが,4人は初入者である。再犯の罪名を見ると,強盗3人,放火1人のほか,財産犯6人,粗暴犯3人であった。

7‐2‐3‐2‐21図  強盗 1年未満再犯者の再犯期間別人員(出所事由別・入所度数別)