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平成22年版 犯罪白書 第7編/第2章/第1節/1

1 犯行内容

7‐2‐1‐1‐1図は,本件の罪名ごとに,主たる被害者(犯行による被害の程度が最も大きい被害者をいう。なお,放火においては放火対象物の所有者又は現実の使用者を被害者としている。)との関係別構成比を見たものである。殺人及び傷害致死では,親族その他の面識のある者に対する犯行の比率が高く,強盗及び強姦では面識のない者に対する犯行の比率が高いが,近年,殺人及び傷害致死で親族に対する犯行の比率は更に高くなり,強姦で面識のない者に対する犯行の比率は低くなっている(7‐1‐1‐4図参照)。

7‐2‐1‐1‐1図  主たる被害者との関係別構成比(罪名別)

7‐2‐1‐1‐2表は,殺人及び傷害致死について,主たる被害者との関係別に主たる犯行動機を見たものである。殺人では,主たる被害者との関係を問わず,憤まん・激情によるものが最も多いが,親族に対する犯行では介護・養育疲れによるものも多かった。傷害致死においても,憤まん・激情によるものが最も多いが,親族に対する犯行は虐待・折かんによるものも多かった。

7‐2‐1‐1‐2表  殺人・傷害致死 主たる動機・被害者との関係別人員

7‐2‐1‐1‐3表は,放火について,主たる動機の別及び主たる放火目的物(犯人が放火の対象物として最も強く意識していた物)の別に人員を見たものである。主たる放火目的物としては,他人の住宅が最も多く,次いで本人宅が多かった。また,主たる動機としては,憤まん・怨恨によるものが最も多いが,次いで,不満・ストレス発散のためのいわゆる愉快犯も多かった。愉快犯的な動機による場合には,放火目的物に偏りが少なく,これは目的物を選定するのに特段の理由がないことが少なくないことによるものと推測される。

7‐2‐1‐1‐3表  放火 主たる動機・放火目的物別人員

7‐2‐1‐1‐4図は,本件の罪名ごとに,計画性(事前の計画)の有無別構成比を見たものであり,7‐2‐1‐1‐5図は,放火を除き,罪名ごとに,凶器使用の有無別構成比を見たものである。殺人では,計画的な犯行が約4割である。傷害致死では,計画的犯行・凶器使用の者の比率が低く,突発的に犯行に及んだ者が多い。これとは対照的に,強盗では,これらの者の比率が高く,計画的に凶器も準備して犯行に及んだ者が多い。他方,約2割は,計画性がない犯行である。強姦も,計画的犯行の者の比率が高いが,計画性のない犯行も少なくない。

7‐2‐1‐1‐4図  計画性の有無別構成比(罪名別)

7‐2‐1‐1‐5図  凶器の使用の有無別構成比(罪名別)

7‐2‐1‐1‐6図は,本件の罪名ごとに,犯行時の飲酒の有無別構成比を見たものである。計画性の有無と逆相関的な関係があり,傷害致死は,犯行時に飲酒していた者の比率が高く,飲酒が犯行の原因の一つとなっていることがうかがわれる。放火についても,同様である。

7‐2‐1‐1‐6図  犯行時の飲酒の有無別構成比(罪名別)

7‐2‐1‐1‐7図は,強盗について,犯行態様ごとに共犯者の有無別の人員を見たものである。侵入強盗は,風俗店強盗を除き,単独犯の比率が高く,他方,路上強盗は,共犯との犯行の比率が顕著に高い。

7‐2‐1‐1‐7図  強盗 犯行態様別人員(共犯の有無別)