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平成22年版 犯罪白書 第7編/第2章

第2章 重大事犯の実態と再犯

前章においては,統計資料等に基づいて重大事犯の実態等を概観したが,この章では,重大事犯者に対する効果的な処遇のあり方の検討に役立てるため,重大事犯で受刑した者について,特別調査を実施し,属性,具体的な犯行の状況,矯正・保護観察における処遇の状況等を調査した上で,再犯の状況を調査することにより,再犯リスクを高める要因や改善更生の促進・阻害(抑止)要因等の分析を行った。

特別調査の概要は,以下のとおりである。

対象者は,重大事犯(殺人,傷害致死,強盗,強姦及び放火の5罪名)で有罪判決を受けて受刑し,平成12年上半期(1月から6月まで)に全国の刑事施設を出所した者である。その総数は,1,021人である。なお,複数の重大事犯の罪名(殺人と強姦など)で受刑していた調査対象者は,罪名ごとに特徴を見る際には,それぞれの罪名で重複的に該当者として分析対象とした。

調査・分析の方法は,次のとおりである。まず,調査対象者が犯した重大事犯(受刑の理由となった犯行)について,判決書に基づき,犯行の態様・動機等の犯行状況,前科の有無・内容,犯行時の就労・居住状況,科刑状況等を調査した。次いで,刑事施設の記録を用いて,調査対象者の刑事施設における処遇状況,出所状況等を調査するとともに,調査対象者のうち,仮釈放を許された者(750人)について,保護観察所の記録を用いて,保護観察期間や特別遵守事項の設定状況,引受人の状況,就労状況等の保護観察による処遇状況を調査した。その上で,調査対象者が平成21年末まで(出所からおおむね10年を経過するまで)に出所後の犯行(自動車運転過失致死傷・業過及び交通法令違反のみの犯行を除く。)により禁錮以上の刑の言渡しを受けて確定したことを「再犯」とし,検察庁の記録を用いて,再犯者(322人)の再犯状況や再犯までの期間等を調査し,再犯に及んだ者とそうでない者との比較等により,再犯要因の分析を試みた。

調査対象者が犯した重大事犯(以下この編において「本件」又は「本件犯行」ということがある。)の罪名ごとに,その人員及び再犯者人員を見ると,7‐2‐1表のとおりであり,本件犯行に係る科刑区分別の人員を見ると,7‐2‐2表のとおりである。なお,この表の科刑状況は,平成12年の上半期まで受刑していた調査対象者についてのものであり,最近の重大事犯に対する科刑状況(第1章第2節参照)とは様相が相当に異なり,全般的に軽く,強姦ではその傾向が顕著である。

7‐2‐1表  調査対象者の分布(罪名別)

7‐2‐2表  調査対象者の刑期(罪名別)