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1 調査の概要 前章で分析したとおり,窃盗及び覚せい剤取締法違反については,同一罪名の犯罪を繰り返す者の比率が他の罪名と比べて高く(7-2-1-3図,7-2-3-5図参照),これらの犯罪の再犯者は,同種の犯罪を繰り返す傾向が強いことがうかがわれる。また,犯罪全体と比べ,執行猶予の取消率も高く(7-2-2-5図参照),入所度数が高い受刑者が占める比率も高い(7-2-3-4図参照)。窃盗及び覚せい剤取締法違反は,これらの点で再犯性が高く,一般的な犯罪性向とは異なる再犯リスクがあるものと考えられる。ところで,窃盗の前科のみを有する者及び覚せい剤取締法違反の前科のみを有する者について,裁判の量刑を見ると,いずれも,初回の裁判においては,大半の者が執行猶予判決を受けており,2回目の裁判では,それぞれ約6割及び約8割が実刑判決を受けている(7-2-2-3図参照)が,犯罪者は,一般的に,犯罪を繰り返すほど改善更生が困難になることを踏まえると,これらの犯罪については,初期の段階で有効な再犯防止策を講じることが,刑事政策上重要であるし,大きな意義もあるといえる。 こうしたことを考慮し,今回,初めて執行猶予判決を受けた後一定期間に再犯に及んだ者とそうでない者との相違点を比較・検討することで,再犯性を高めるリスク要因等を分析することを目的として,刑事確定記録を用いた特別調査を行った。 この特別調査の対象者は,窃盗又は覚せい剤取締法違反(使用又は単純所持事案に限る。)のいずれかのみの罪名で執行猶予判決を受けた者であって,同一罪名での前科がない者であるが,具体的には,窃盗事犯については東京区検察庁,横浜地方検察庁(本庁)及び横浜区検察庁,覚せい剤事犯については東京地方検察庁(本庁)及び横浜地方検察庁(本庁)において処理され,平成16年中に第一審で確定したもの(刑事確定記録の保存期間の関係から,それ以前にさかのぼっての調査はできない。)を対象とした。 また,その調査対象者について,再犯の有無の追跡調査を行ったが,ここでは,調査対象事件の第一審判決言渡日より後に犯した犯罪により,その日から4年以内に有罪判決を受けて確定したことを「再犯」とした。 調査対象者の内訳は,以下のとおりであった。 窃 盗 691人(男子628人,女子63人) 再犯なし 486人(男子444人,女子42人) 再犯あり 205人(男子184人,女子21人) うち窃盗による再犯 162人(男子142人,女子20人) 覚せい剤取締法違反 519人 (男子388人,女子131人) 再犯なし 365人(男子262人,女子103人) 再犯あり 154人(男子126人,女子28人) うち覚せい剤取締法違反による再犯 128人(男子101人,女子27人) |