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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第6章/第2節/4 

4 殺人(福祉を中心とした多様な高齢者対策による犯罪危険要因の排除)

 高齢の新受刑者の初入者の罪名には殺人が上位に入っているところであるが(7-2-4-5表),特別調査で見ると,親族殺の高齢事犯者の多くは,前科・前歴のない者が「介護疲れ」から,あるいは「将来を悲観」して,配偶者や子供などを殺害する高齢初犯者である(7-3-2-41図7-3-2-46図7-3-2-49図)。
 親族殺について裁判内容を見ると,親族以外殺と異なり,男女とも無期懲役はおらず,男子では,刑期10年以下5年超の者が半数を占め,女子は刑期10年超はおらず,4割強が執行猶予であって(7-3-2-51図),量刑上の配慮が見られる。しかしながら,高齢になって,介護に疲れ,いわば突発的に殺人に至る行為に対しては,刑事司法機関が早期に介入して事前に防止することは容易ではなく,これは専ら福祉の領域であることから,社会福祉制度一般の充実を待つ外はないものと思われる。
 これに対し,高齢の親族以外殺事犯は,傷害・暴行と比べ,被害者と「面識なし」の者の比率が低い一方,「報復・怨恨」が動機に含まれていた者の比率が高く,以前から被害者に対し不満や怒りを抱いていた者が多い。
 平成19年版犯罪白書は,特集した「殺人再犯者」につき,傷害・暴行等の粗暴犯の犯歴を持つ者が多く,これらの者に対し,感情をコントロールする能力を身に付けることを目的とした処遇を実施する必要性が高いと指摘している。親族以外殺では,高齢事犯者・非高齢事犯者ともに前科のある者が多く(7-3-2-41図),傷害・暴行同様,若年時ないし壮年時の前科の処遇において,感情をコントロールするための能力を身に付けることを目的とした処遇などを徹底することが役立つと思われる。