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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第2章/第4節/1 

第4節 矯正

1 新受刑者

(1)高齢新受刑者の男女別・年齢層別人員の推移
 昭和63年以降の男女別・年齢層別65歳以上の新受刑者数とその高齢者比は,7-2-4-1図のとおりである。
 昭和63年以降,男女ともに,高齢受刑者比はほぼ一貫して上昇している。65〜69歳の高齢新受刑者と70歳以上の高齢新受刑者を比較すると,人員においては,70歳以上の高齢新受刑者の方が少ないものの,昭和63年の人員と平成19年の人員の増加率を比較すると,男子の高齢新受刑者で,65〜69歳が約5.1倍,70歳以上が約7.9倍,女子では,65〜69歳が約4.4倍,70歳以上が約26.3倍となっている。

7-2-4-1図 高齢新受刑者の男女別・年齢層別人員の推移

(2)新受刑者の男女別・年齢層別構成比の推移
 昭和63年以降の新受刑者の男女別・年齢層別構成比の推移は,7-2-4-2図のとおりである。
 男女とも,新受刑者の高齢者比はほぼ一貫して上昇してきており,新受刑者の高齢化が徐々に進んでいることが分かる。
 昭和63年と平成19年の新受刑者数を見てみると,男子では,総数約1.0倍(1,223人増),50歳未満約0.9倍(3,037人減),50〜64歳約1.7倍(2,834人増),65歳以上約6.0倍(1,426人増)であり,女子では,総数約1.8倍(985人増),50歳未満約1.7倍(611人増),50〜64歳約2.0倍(226人増),65歳以上約7.2倍(148人増)であった。男女ともに,高齢新受刑者の増加が著しいことが分かる。

7-2-4-2図 新受刑者の男女別・年齢層別構成比の推移

(3)高齢新受刑者の男女別・初入・再入別人員の推移
 昭和63年以降の高齢新受刑者の男女別・初入・再入別人員の推移は,7-2-4-3図のとおりである。
 男子は,初入者よりも再入者の方が一貫して多い。昭和63年以降,初入者,再入者ともに,おおむね増加傾向にあり,平成19年の初入者,再入者はそれぞれ,昭和63年の約11.7倍,約5.1倍になっている。
 女子は,男子と異なり,平成15年以降初入者が再入者を上回っている。昭和63年以降,初入者,再入者とも一貫しておおむね増加しており,平成19年の初入者,再入者はそれぞれ,昭和63年の約15.5倍,約4.4倍になっている。

7-2-4-3図 高齢新受刑者の男女別・初入・再入別人員の推移

(4)新受刑者の入所度数別構成比の推移
 最近10年間の新受刑者の入所度数別構成比の推移は,7-2-4-4図のとおりである。
 高齢者においては,65歳未満と比べ,再入者の比率が高いが,「10度以上」の比率はおおむね低下してきており,入所度数が少ない者の比率が上昇している。

7-2-4-4図 新受刑者の入所度数別構成比の推移

(5)新受刑者の主要罪名
 平成19年における新受刑者の男女別・年齢層別・初入・再入別の主要罪名は,7-2-4-5表のとおりである。
ア 男子
 いずれの区分も窃盗が第1位である。高齢新受刑者では,65歳未満の新受刑者と比べ,覚せい剤取締法違反の比率が低く,詐欺の比率が高い。また,高齢初入者では,殺人の比率が他の区分より高い。高齢再入者では,窃盗が半数以上を占め,覚せい剤取締法違反の比率が高齢初入者より高い。さらに,高齢新受刑者のうち,傷害は,初入者14人,再入者34人,殺人による再入者は12人である。
イ 女子
65歳未満の新受刑者では,覚せい剤取締法違反の比率が高いが,高齢新受刑者では,窃盗及び詐欺の比率が高く,大半が窃盗である。高齢新受刑者において,初入者と再入者を比較すると,初入者では,詐欺に次いで殺人の比率が高い。65歳以上の再入者では,窃盗がほとんどであり,次いで,覚せい剤取締法違反,詐欺の順となっている。なお,傷害の高齢新受刑者はいなかった。

7-2-4-5表 新受刑者の男女別・年齢層別・初入・再入別の主要罪名

(6)高齢新受刑者の男女別・初入・再入別・窃盗犯及びその他の犯罪人員の推移
 平成8年以降における高齢新受刑者の男女別・初入・再入別・窃盗犯及びその他の犯罪人員の推移は,7-2-4-6図のとおりである。

7-2-4-6図 高齢新受刑者の男女別・初入・再入別・窃盗犯及びその他の犯罪人員の推移

 平成8年以降,男子では窃盗による再入者が一貫して増加しており,同再入者は,前年より72人増加した。女子では,同年以降,窃盗による初入者の増加が特に目立っていたが,19年の同初入者は,前年より13人減少した。一方,女子の窃盗による再入者は,前年よりも,2人増加した。
 また,平成19年の高齢新受刑者1,884人中,窃盗の者は924人で,このうち,初入者は193人(20.9%),再入者が731人(79.1%)で,再入者のうち,入所度数「2〜5度」276人(29.9%),「6〜9度」173人(18.7%),「10度以上」が282人(30.5%)であった。なお,19年の窃盗の高齢新受刑者は,10年と比べると,総数で約2.9倍,再入者が約2.4倍,入所度数「2〜5度」約5.5倍,「6〜9度」約2.5倍,「10度以上」約1.5倍であるのに対し,初入者は約12.1倍に増加している。
(7)高齢再入新受刑者の男女別・入所度数別再犯期間
 平成19年における高齢再入新受刑者の男女別・入所度数別・再犯期間別構成比は,7-2-4-7図のとおりである(「再犯期間」とは,前回の刑の執行を受けて出所した日から,再入に係る罪を犯した日までの期間をいう。以下,本節において同じ。)。
 男子は,入所度数が増すにつれて,再犯期間が短い者の比率が高くなっている。女子は,入所度数「2〜5度」の者で再犯期間の短い者の比率が高く,約4割が再犯期間1年未満である。入所度数「6〜9度」の者と「10度以上」の者とを比較すると,男女ともに「10度以上」の者の方が再犯期間が短い。

7-2-4-7図 高齢再入新受刑者の男女別・入所度数別・再犯期間別構成比

(8)高齢新受刑者の配偶関係
 平成19年における高齢新受刑者及び17年の一般高齢者の男女別・配偶関係別構成比は,7-2-4-8図のとおりである。男女ともに,高齢新受刑者においては,一般高齢者に比較し,有配偶者の比率が低く,未婚や離別の比率が高い。

7-2-4-8図 高齢新受刑者及び一般高齢者の男女別・配偶関係別構成比

(9)新受刑者の職業の有無
 平成19年における新受刑者の男女別・年齢層別有職者率は,7-2-4-9図のとおりである。
 高齢新受刑者では,男女とも,有職者率が20%を割っており,65歳未満の新受刑者と比べ,無職者の比率が相当高い。なお,同年の一般高齢者就業率は,65歳以上男子では29.1%,女子では12.8%(総務省「平成19年労働力調査年報」による。)であり,男女とも,高齢新受刑者の有職者率の方が低い。

7-2-4-9図 新受刑者の男女別・年齢層別の有職者率

(10)新受刑者の年次別・入所時年齢層別人員の推移
 新受刑者の年次別・入所時年齢層別人員の推移は,7-2-4-10図のとおりである。
 いずれの年次においても,年齢が上がるに従い,入所人員が低下しているが,60歳以上の新受刑者は年々増加している。

7-2-4-10図 新受刑者の年次別・入所時年齢層別人員の推移

(11)新受刑者の生年別・入所年別・初入・再入別人員の推移
 新受刑者の生年別・入所年別・初入・再入別人員は,7-2-4-11図のとおりである。
1940年(昭和15年)生まれ及び1942年(昭和17年)生まれのいずれの新受刑者も,加齢とともに人員はおおむね漸減しているが,大きくは減少していない。

7-2-4-11図 新受刑者の生年別・入所年別・初入・再入別人員の推移