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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第6章/第1節/2 

2 高齢犯罪者が増加した原因・背景

第1章第1節でみたように,現在の我が国では,高齢者の平均寿命が延び(7-1-5図),また,高齢者人口も急激に増加していて(7-1-3図),社会の高齢化が急速に進んでいる。
 そして,現在の高齢犯罪者を取り巻く環境に目を向けてみると(第3章第2節1参照),高齢犯罪者の犯罪性が進むにつれ,住居が不安定になるとともに,配偶者がなく,単身生活の者が増えている(7-3-2-10〜12図)。これらの者は,親族との関係も希薄である(7-3-2-13図)。このように,犯罪性の進んだ高齢犯罪者は,孤独な生活状況に陥っており,周囲から隔絶されている状況がうかがわれる。犯罪性が進んだ高齢犯罪者には,犯罪に結び付きやすい物質依存関連疾患にり患した経歴を有する者の比率が高いが(7-3-2-18図),このような問題について福祉的なサポートを受けないままでいる者が少なくないこともうかがわれる。
 就労状況,収入源等の経済状況についても,犯罪性が進むにつれ,就労の安定しない者,低収入の者の比率が上昇しており,また,生活保護などの福祉的支援を受けないまま無収入でいる者の比率も大幅に上昇している(7-3-2-14〜17図)。経済的に不安定な状態に置かれて,生活に困窮していることから,更に犯罪の危険性が高まっているといえる。
 このように,犯罪性が進んだ高齢犯罪者ほど,社会的な孤立や経済的不安といった深刻な問題を抱えており,このことが高齢犯罪者全般の主な増加原因であると言えよう。