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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第4章/第2節/3 

3 まとめ

 本節では,高齢対象者が抱える生活上の様々な問題を概観し,それに対し,保護観察処遇やその前段階の生活環境の調整において,調整等の充実を図っていく必要性があることを見た。ここで,さらに,視点を我が国の一般高齢者に転ずると,高齢者(65歳以上)の半数は,健康上何らかの自覚症状を訴えるようになっている。しかしその一方で,7-1-6図で見たように65歳以上の雇用者数は増えており,65歳以上(65〜69歳)になっても就業している者が男性で約半数,女性でも約3割おり,高齢者(65歳以上)が就業を希望する理由として,「健康を維持したい」を挙げる者が3割以上おり,「収入を得る必要が生じた」を挙げる者の比率を上回っている(平成20年版高齢社会白書による。)。そこには社会参加を通じ自己の活力を維持したいという姿が浮かび上がってくる。こうした観点を高齢対象者の処遇について考慮すると,単に経済的な自立を図れば良いとか,福祉による支援だけを調整すればよいという二者択一的な単純な発想ではなく,高齢対象者の心情・生き甲斐を尊重する視点が必要であり,その上で,本節で述べたように高齢対象者のニーズを的確に把握し,その結果に応じ,就労支援と福祉等による支援の調整の両者を見極めながら,高齢対象者に必要な支援をいかに計画的に行っていくかがポイントとなろう。