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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/1 

第3章 犯歴・統計から見た再犯者の実態と対策

第1節 序説

1 今回の研究の概要

 本章においては,検察庁における電子計算機により把握している裁判(以下「電算犯歴」という。)の資料及び矯正・更生保護関係の統計資料により,再犯者の実態についての分析を行った。
 「再犯者」という用語は,第1章及び第2章で見たとおり,それを用いる場面によって意味が異なるが,本章においては,有罪の確定裁判を2回以上受けた者という意味で用いる。これに対し,有罪の確定裁判を1回だけ受けた者を「初犯者」と呼ぶことにする。また,本章において「犯歴」とは,前科,すなわち有罪の確定裁判に関する記録のことをいう。
 電算犯歴には,我が国に本籍を有する自然人(明治以前の出生者を除く。)に対し,昭和23年(1948年)以降現在までの間に,我が国の裁判所が有罪の言渡しをして確定した裁判が登録されている。法務総合研究所においては,23年(1948年)から平成18年(2006年)9月30日(以下,本章において「基準日」という。)までの間に確定したものであって,刑法上の過失犯及び危険運転致死傷罪並びに特別法上の道路交通に係る犯罪の犯歴を除いたものから,初犯者・再犯者の区別をしない犯歴100万人(犯歴の件数は,168万495件。以下,本章において「100万人初犯者・再犯者混合犯歴」という。)及び再犯者に限定した犯歴50万人(犯歴の件数は,167万8,238件。以下,本章において「50万人再犯者犯歴」という。)を無作為に抽出し,これらを対象として,再犯の全体像や経年による再犯の傾向の変化等を見ることとした。
 なお,犯歴の件数については,一つの確定裁判ごとに一犯歴として数えることとし,一人の者が犯した犯歴の件数の合計を「総犯歴数」と呼ぶこととした。
 また,一犯歴において,複数の罪名で確定裁判を受けていること(例えば住居侵入と窃盗)があるが,その場合には,原則として,それぞれの罪名の法定刑の軽重を基準に,最も重い法定刑を有する罪名(前記の例では窃盗)を計上することとした。ただし,[1]複数の罪名が,刑法犯と特別法犯にまたがっているときには刑法犯を優先し,[2]複数の罪名の法定刑が同一であるとき(例えば窃盗と詐欺)は,刑法犯においては,刑法典上の条文の順序に従うなどして,罪名を選択することとした。
 次に,本章において「再犯期間」とは,犯罪者が身柄を釈放されるなどして再犯を行う可能性が生じた時点から,次の犯罪(再犯)に対する裁判が言い渡された日までの期間をいう。具体的には,[1]懲役又は禁錮の執行を猶予された者及び罰金又は科料に処せられた者については,前の犯罪に対する裁判が言い渡された日から次の犯罪(再犯)に対する裁判が言い渡された日までの期間,[2]懲役又は禁錮の実刑及び拘留に処せられた者については,身柄釈放の日,すなわち,仮釈放の日(拘留を除く)又は刑の執行終了の日(満期釈放の日)から次の犯罪(再犯)に対する裁判が言い渡された日までの期間を,それぞれ再犯期間として計算した。
 100万人初犯者・再犯者混合犯歴の罪名別件数の構成比は,7-3-1-1図のとおりである。
 傷害及び暴行の粗暴犯,窃盗並びに覚せい剤取締法違反の占める比率が高い。

7-3-1-1図 犯歴の罪名別件数の構成比

 次に,本研究においては,再犯者の実態を罪名別,年齢層別等個別に見るに当たり,「100万人初犯者・再犯者混合犯歴」及び「50万人再犯者犯歴」のうち,[1]生年月日が昭和5年(1930年)1月1日以降であること,[2]裁判時に20歳以上であること,[3]基準日において死亡が確認された者でないこと,という条件をすべて満たす者の犯歴(初犯者・再犯者混合犯歴は71万2,898人,121万8,843件,再犯者犯歴は35万6,539人,123万799件である。以下,本章において,それぞれ,「70万人初犯者・再犯者混合犯歴」及び「35万人再犯者犯歴」という。)をも対象とすることとした。これは,本研究においては,前記のとおり,明治生まれの者が対象に含まれていないので,一定の時期までは,年齢分布に偏りがあることの影響を回避するとともに,死亡が確認された者を除外することによって,再犯率の算出等をより厳密に行うことを目的としたものである。
 また,本章においては,少年の犯歴も対象に加えているが,これについては,戦後の混乱期の影響がほぼ消失する昭和40年(1965年)以降基準日までに裁判を受けた16歳〜19歳の者(裁判時少年)3,561人としている。