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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第1章/2 

2 過去の研究(昭和53年版犯罪白書及び63年版犯罪白書)の概要

 法務総合研究所では,既に昭和53年版犯罪白書及び63年版犯罪白書(以下「53年版白書」及び「63年版白書」という。)において,再犯の問題を特集として取り上げている。
 53年版白書では,当時の我が国の再犯現象について,刑法犯有罪人員総数中に占める再犯者の比率が減少傾向にあるなど,全体としては好ましい経過をたどっているが,その一方で,社会,経済の一般的繁栄にもかかわらず,これに背を向けるか取り残されるままに大小の犯罪を繰り返す一群の人々がいることを指摘した上で,適切な再犯対策を実施し,再犯者の改善更生・社会復帰を強力に推進することにより,再犯から社会を保護する必要性を強調した。
 また,63年版白書では,53年版白書が取り上げた再犯一般の問題を踏まえて,その後の10年間における我が国の再犯現象を全般的に概観し,刑法犯有罪人員総数中に占める再犯者の比率は横ばい状態であるが,受刑者については,多数回の前科・受刑歴を有する者や中高年層の者が増加していることなどを指摘した上で,再犯者の中でも,特に多数回にわたる前科を有する者(以下,本章において「多数回前科者」という。)又は多数回にわたる受刑歴を有する者に焦点を当て,罪種別の属性,科刑状況及びその処遇の実態等を明らかにし,処分や処遇上の問題点を考察した。その結果,多数回前科者の特徴として,同一犯罪のみを繰り返す者は少なく,むしろ,機会に応じて多種類ないし異種類の犯罪を行っている者が多いことや,犯罪の初発年齢が25歳未満である者が多いことなどを挙げた。また,再犯対策として,科刑や処遇の在り方等に触れ,初期対策の重要性及び効果的な社会復帰支援策の必要性等を指摘した。