前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成19年版 犯罪白書 第7編/第1章/3 

3 本編の構成

 再犯防止対策は,前記のように,刑事政策上極めて重要なテーマである上,近年,刑務所出所者や保護観察中の者による重大再犯事件が社会の注目を浴びていることを考慮すれば,再犯防止のための諸対策をいかに講じていくかは,まさに喫緊の課題であるといえる。
 また,法務総合研究所においては,前記のとおり,53年版白書及び63年版白書において,再犯の問題を特集として取り上げて様々な分析を行ったが,その後約20年が経過し,社会や犯罪の情勢も大きく変化しており,ここで改めて再犯の問題を取り上げ,その実態を客観的に分析し,対策について考察することには,刑事政策上大きな意義があるものと考える。
 本特集においては,このような考え方に基づき,まず,第2章において,最近の再犯者の実態を警察,検察,裁判,矯正及び更生保護の各統計資料に基づいて見た上,第3章において,犯歴や統計資料の分析により,再犯者対策の重要性や近時の再犯の傾向を示すとともに,再犯者について,罪名,年齢,量刑,属性等の様々な視点から,その実態を概観する。罪名別では,犯歴の件数の非常に多い犯罪である窃盗,傷害・暴行,覚せい剤取締法違反に特に着目するとともに,近時国民の関心の高い性犯罪の再犯についても分析する。また,年齢別では,年齢層別に再犯の動向等を概観し,特に,問題の多い20歳代の若年者や65歳以上の高齢者に絞った分析を加える。さらに,仮釈放者に対する処遇は,再犯防止対策として重要であることにかんがみ,仮釈放の現状や仮釈放者のその後の成り行きについても見る。次に,第4章においては,重大犯罪の代表として,量的には少ないものの最も重大な被害をもたらす殺人の再犯事犯について特別調査を行い,これにより,その動機・原因,被害者との関係,犯行の手段等を分析してその実態を明らかにするとともに,当該殺人再犯者の様々な属性を見ることにより,その特徴について考察する。続いて,第5章では,検察・裁判,矯正及び更生保護の各分野において,さらには,諸機関の連携によるものとして,どのような再犯防止対策が現在採られているのかについて紹介するとともに,フランス,ドイツ,英国,カナダ及び米国の諸外国における再犯防止対策についても簡単に紹介する。そして,最後に第6章においては,第2章から第5章までの記述を踏まえて,再犯者の実態と対策について総括することとしたい。
 このように,本白書の特集は,再犯者の実態を詳細に分析し,これを国民に伝えるとともに,再犯防止対策の視点となるものを示すことによって,今後の我が国の再犯防止に向けた具体的施策を検討する際の基礎資料を提供することを目的とするものである。