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 平成19年版 犯罪白書 第2編/第4章/第4節/2 

2 過剰収容対策

(1)過剰収容の現状

 本章第1節1ないし3のとおり,全国の刑事施設は過剰収容下にある。刑事施設全体の一日平均収容人員を見ると,平成9年に5万91人(うち女子2,539人)であったものが,18年には8万335人(うち女子5,003人)となり,最近10年間で3万244人(うち女子2,464人),60.4%増(うち女子97.0%増)となっている。これに対し,収容定員は,9年に6万4,404人(収容率は77.8%)であったものが,18年には7万9,375人(収容率は101.2%)と,1万4,971人(23.2%)増加しているものの,収容人員の伸びには追い付いていない(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
 過剰収容は,刑事施設における職員の業務負担を増加させている。我が国の刑事施設の職員1人当たりの被収容者負担率(各年における刑事施設全体の一日平均収容人員を当該年度の職員定員で割った数値)の比率は,平成9年度の2.93から18年度は4.48に大きく上昇している(法務省矯正局の資料による。)。

(2)PFIの手法を活用した刑事施設の開設

 PFI(Private Finance Initiative)とは,公共施設等の建設,維持管理,運営等を民間の資金,ノウハウを活用して行う新たな手法をいう。英国,米国等では,既に刑事施設の整備・運営に民間資金等が活用されている。我が国においても,効率的かつ効果的に社会資本を整備することを目的に制定された民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)に基づき,過剰収容を緩和し,新しい刑事施設の運営の在り方を模索するなどの観点から,PFI手法を活用した刑事施設の整備・運営の必要性が検討された。その結果,第1号事業として,山口県美祢市に「美祢社会復帰促進センター」が建設され,平成19年4月,我が国最初の民間資金を活用した刑務所として運営が開始された。
 同センターは,「官民協働の運営」を行うとともに,「地域との共生」を図ることにより,「国民に理解され,支えられる刑務所」を整備するとの方針の下,「構造改革特別区域制度」を活用し,施設の設計・建設だけでなく,施設運営面においても民間事業者のノウハウを活用した上,犯罪傾向の進んでいない受刑者1,000人(男子,女子各500人)を収容対象としている。
 また,第2号事業として,島根県浜田市に犯罪傾向の進んでいない男子受刑者2,000人を収容する「島根あさひ社会復帰促進センター(仮称)」の建設を進めており,平成20年10月に運営開始を予定している。
 さらに,国費で建設した「喜連川社会復帰促進センター」(栃木県さくら市)及び「播磨社会復帰促進センター」(兵庫県加古川市)についても,PFI手法を活用して運営を行うこととし,近隣の既存の刑務所の業務の一部も含め,第3号及び第4号事業として,それぞれ平成19年10月に運営を開始した(法務省矯正局の資料による。)。
 これらの新たな形態の刑事施設の登場によって,地域社会との連携に基づく矯正処遇の一層の発展が期待される。

美祢社会復帰促進センターでの女子受刑者に対する職業訓練