前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成17年版 犯罪白書 第4編/第2章/第1節/2 

2 属性による動向

(1) 年齢層別動向

ア 年齢層別人口比の推移

 少年一般刑法犯検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)の年齢層別人口比(各年齢層(触法少年は10歳以上14歳未満)の人口1,000人当たりの一般刑法犯検挙(補導)人員の比率をいう。以下,本項において同じ。)の推移(昭和41年以降)は,4-2-1-3図のとおりである(巻末資料4-2参照)。

4-2-1-3図 少年一般刑法犯検挙人員の年齢層別人口比の推移

(ア) 年少少年

 年少少年は,昭和44年の9.1から上昇を続け,58年には最高の29.5を記録しているが,この動きは少年非行の第三の波とほぼ軌を一にするものであり,非行の低年齢化として特徴付けられる。59年以降は検挙人員の減少に伴って低下傾向を示していたが,平成8年から上昇に転じ,9年以降おおむね20〜22の間で推移し,16年は20.9(検挙人員5万2,358人)となった。中間少年の人口比に近づいているものの,他の年齢層と比較し,依然として最も高い数値を示している。

(イ) 中間少年

 中間少年は,年少少年ほど大きな動きはないものの,昭和40年代後半以降徐々に上昇し,57年にピーク(18.9)に達した後はおおむね低下傾向にあったが,近年は再び上昇傾向を示して年少少年に迫り,平成14年には検挙人員で年少少年を上回り,16年は人口比が20.2(検挙人員5万3,841人)となった。

(ウ) 年長少年

 年長少年は,昭和41年の9.7から,年少少年及び中間少年の増加が顕著であった時期においても,全般的に見て横ばいないし低下傾向を示していたが,近年,やや上昇傾向にあり,平成16年は10.1(検挙人員2万8,661人)となった。

(エ) 触法少年

 触法少年は,昭和41年以降おおむね横ばいで推移し,50年代後半に56年の8.9をピークとする波が見られるものの,平成期にはおおむね4〜5の間で推移し,平成16年は4.2(補導人員2万191人)となった。

イ 非行少年率の推移

 非行少年率(ある年に生まれた少年が12歳から19歳までの各年齢において非行少年となる率(同年齢人口1,000人当たりの少年一般刑法犯検挙(補導)人員の比率)をいう。以下,本項において同じ。)が少年の成長につれてどのように変化していくかを,世代別に見ると,4-2-1-4図のとおりである。
 同図では,昭和48年から3年ごとの51年,54年,57年及び60年生まれの各世代について,年齢を横軸に,非行少年率を縦軸にとっている。 非行少年率が最も高くなる年齢を見ると,昭和48年,51年及び54年生まれの各世代は15歳時,57年及び60年生まれの各世代は16歳時となっており,どの世代についても,15歳から16歳の時に高率となり,以後年齢が高くなるにつれて低率となる傾向が見られる。

4-2-1-4図 非行少年率の推移

(2) 男女別動向

 少年一般刑法犯の男女別検挙人員及び女子比の推移(昭和41年以降)は,4-2-1-5図のとおりである。
 少年一般刑法犯の女子検挙人員は,昭和41年には1万人余であったが,40年代後半から急増し,63年にピーク(4万3,162人)に達した。その後,平成5年(2万5,346人)にかけて減少したが,6年以降再び増加に転じ,9年以降はおおむね3万人台で推移し,16年は3万3,231人(前年比4.6%減)となった。
 女子比は,長期的には上昇傾向にある。昭和46年に10%を超え,51年以降はおおむね20%前後で推移し,平成16年は24.5%(前年比0.5ポイント上昇)となった。

4-2-1-5図 少年一般刑法犯の男女別検挙人員・女子比の推移

(3) 外国人の犯罪少年の動向

 外国人の犯罪少年の検察庁における家庭裁判所送致人員(交通関係業過及び道交違反を除く。以下,本項において同じ。)の推移(平成5年以降)は,4-2-1-6図のとおりである。

4-2-1-6図 外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員の推移

 外国人の犯罪少年の検察庁における家庭裁判所送致人員は,全般的には増加傾向にある。このうち,来日外国人少年は,平成5年には457人で外国人少年に占める比率が22.2%であったが,16年には1,236人で同比率が50.6%となるなど増加傾向にあり,来日外国人全体の検察庁終局処理人員(巻末資料2-15参照)の増加と軌を一にしている。
 平成16年の来日外国人の犯罪少年の検察庁における家庭裁判所送致人員を国籍等別に見ると,ブラジルが36.6%と最も多く,次いで,中国(21.3%),韓国・朝鮮(10.8%),フィリピン(7.3%),ペルー(5.6%),ベトナム(3.6%)の順であった(検察統計年報による。)。

(4) 就学・就労状況と非行

ア 就学・就労状況の推移

 少年一般刑法犯検挙人員(道路上の交通事故に係る危険運転致死傷を除く。以下,本項において同じ。)の就学・就労別構成比の推移(最近30年間)は,4-2-1-7図のとおりである。

4-2-1-7図 少年一般刑法犯検挙人員の就学・就労別構成比の推移

 昭和58年に最高を記録した中学生の比率(42.2%)が徐々に低下し,63年には高校生の比率を下回った。これ以降,高校生が最も高い比率を占め続けており,平成16年は,高校生が43.5%(前年比0.2ポイント上昇),中学生が26.5%(同0.1ポイント上昇)であった。
 有職少年の比率は,平成4年をピーク(13.3%)としておおむね低下傾向にあり,16年は8.9%(前年比0.2ポイント低下)であった。他方,無職少年の比率は,9年以降おおむね上昇傾向にあったが,16年は13.2%(同0.6ポイント低下)であった。

イ 中学生・高校生の非行

 高校進学率は,昭和49年度以降は90%を超え,平成16年度は97.5%であった(文部科学省の「学校基本調査報告書」による。)。高校は,中学校と同じく,少年非行を見る上で,重要な生活環境となっている。
 少年一般刑法犯の中学生・高校生別検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)及び各在学生1,000人当たりの検挙(補導)人員の比率の推移(昭和53年以降)は,4-2-1-8図のとおりである。
 中学校在学生1,000人当たりの検挙(補導)人員の比率は,昭和58年に最高値23.1を示した後,次第に低下し,近年は13〜15の間で推移しており,平成16年は13.9(前年比0.7ポイント低下)であった。他方,高校在学生1,000人当たりの検挙人員の比率は,5年以降上昇傾向にあり,7年以降は中学校在学生のそれを上回った。その後,おおむね14〜17の間で推移し,16年は16.3(同0.7ポイント低下)であった。

4-2-1-8図 少年一般刑法犯の中学生・高校生別検挙人員・在学生に対する比率の推移

(5) 非行歴がある少年の非行

 少年一般刑法犯検挙人員中の再非行少年(一般刑法犯により検挙された少年であって,前に非行(道路交通法違反を除く。)により検挙(補導)されたことがあるものをいう。以下,本項において同じ。)の人員及び再非行少年率(再非行少年の人員の少年一般刑法犯検挙人員に占める比率をいう。以下,本項において同じ。)の推移(最近30年間)は,4-2-1-9図のとおりである。
 再非行少年の人員は,昭和60年のピーク(6万368人)を経て減少したが,平成9年以降は増加傾向にあり,16年は3万7,866人(前年比6.2%減)であった。他方,再非行少年率は,昭和59年をピーク(31.3%)として低下したが,平成10年以降上昇傾向にあり,16年は28.1%(同0.1ポイント上昇)となった。
 近年,少年一般刑法犯検挙人員は,おおむね14万人前後で推移しているが,その中にあって,再非行少年率が上昇傾向にあることは,一部の非行少年の非行の程度が更に深まっていることをうかがわせる。

4-2-1-9図 少年一般刑法犯検挙人員中の再非行少年の人員・再非行少年率の推移

 平成16年の少年一般刑法犯検挙人員について,再非行少年の人員,再非行少年率及び前回処分内容を,主要非行名別に見ると,4-2-1-10表のとおりである。
 再非行少年率は,総数では28.1%であった。再非行少年率を非行名別に見ると,強盗が62.1%と最も高く,次いで,強姦(60.9%),恐喝(55.3%),傷害(52.7%)の順であった。殺人,暴行,器物損壊でも,再非行少年率が40%を超えており,凶悪犯罪及び暴力的犯罪の再非行少年率が高い。
 再非行少年の前回処分を見ると,家庭裁判所で審判不開始とされた者が検挙人員総数の11.3%と最も多く,次いで,保護観察(4.9%),不処分(3.4%)の順であった。これは,家庭裁判所での少年の処分において,審判不開始が最も多く,次いで,保護観察,不処分の順に多いことを反映していると思われる(本編第4章第2節2(3)ア参照)。

4-2-1-10表 少年一般刑法犯検挙人員の主要非行名別・前回処分別人員