前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成17年版 犯罪白書 第4編/第4章/第2節/2 

2 少年審判

(1) 少年保護事件の受理処理人員

 少年保護事件の家庭裁判所新規受理人員の推移(昭和24年以降)は,4-4-2-5図のとおりである。
 一般保護事件の新規受理人員は,昭和41年及び58年のピークを経て,しばらく減少傾向にあったが,近年は20万人前後で横ばいとなっており,平成16年は20万2,292人(前年比2.9%減)であった。
 これに対し,道路交通保護事件(道交違反に係る少年保護事件をいう。以下,本節において同じ。)の新規受理人員は,昭和45年の少年に対する交通反則通告制度の適用,62年の同制度の適用範囲の拡大により,急減した後,近年も減少傾向にあり,平成16年は5万5,748人(前年比11.0%減)であった。

4-4-2-5図 少年保護事件の家庭裁判所新規受理人員の推移

 少年保護事件の家庭裁判所終局処理人員の推移(昭和27年以降)を,総数,一般保護事件(業過等(業過及び危険運転致死傷をいう。以下,本節において同じ。)を除く。),業過等事件(業過等に係る一般保護事件をいう。以下,本節において同じ。)及び道路交通保護事件の別に見ると,4-4-2-6図のとおりである。
 平成16年は,一般保護事件(業過等を除く。以下,本節において同じ。)が14万3,940人(前年比0.6%減),業過等事件が3万8,841人(同3.5%減),道路交通保護事件が5万155人(同10.4%減)であり,終局処理人員総数に占める比率は,一般保護事件61.8%,業過等事件16.7%,道路交通保護事件21.5%であった。

4-4-2-6図 少年保護事件の家庭裁判所終局処理人員の推移

(2) 少年保護事件の審理状況

ア 身柄事件

 一般保護事件の終局処理人員(簡易送致に係るものを除く。)のうち受理時身柄付き人員(家庭裁判所に犯罪少年の事件が送致される際,少年が逮捕,勾留又は勾留に代わる観護措置により,身柄を拘束されたまま送致されるものをいう。以下,本項において同じ。)及び身柄率(受理時身柄付き人員の同終局処理人員に占める比率をいう。以下,本項において同じ。)の推移(昭和53年以降)は,4-4-2-7図のとおりである。
 受理時身柄付き人員は,昭和59年をピーク(1万5,182人)として減少し,平成8年以降増加が続いていたが,16年は1万6,293人(前年比6.5%減)であった。身柄率は,2年まではおおむね8〜9%台で推移していたが,3年以降上昇し,12年以降は20〜22%の間で推移し,16年は20.6%(同0.7ポイント低下)であった。
 非行名別に身柄率の高いものを見ると,平成16年は,覚せい剤取締法違反が92.6%と最も高く,次いで,強姦(87.5%),殺人(87.2%),強盗(84.4%),麻薬取締法違反(83.6%),売春防止法違反(83.3%),入管法違反(81.4%)の順であった。他方,窃盗の身柄率は,17.2%にすぎないものの,人員の上では最も多数であり,受理時身柄付き人員総数の44.7%を占めている(司法統計年報による。)。

4-4-2-7図 一般保護事件の受理時身柄付人員・身柄率の推移

イ 付添人選任

 一般保護事件の終局処理人員(簡易送致に係るものを除く。)のうち付添人が選任された人員及び付添人選任率(付添人選任人員の同終局処理人員に占める比率をいう。以下,本項において同じ。)の推移(平成7年以降)は,4-4-2-8図のとおりである。
 付添人選任率は,過去10年間で約2倍に上昇し,平成12年以降おおむね5%台で推移し,16年は5.7%(前年比0.4ポイント低下)であった。
 各年とも,付添人のうち90%以上が弁護士であり,平成16年は92.5%が弁護士であった。
 平成16年の付添人選任率を非行名別に見ると,殺人(72.3%),強姦(55.4%),強盗(37.7%)で高くなっている(司法統計年報による。)。

4-4-2-8図 一般保護事件の付添人選任人員・付添人選任率の推移

(3) 少年保護事件の処理状況

ア 終局処理の概要

 平成16年における少年保護事件を,[1]一般保護事件(虞犯を除く。),[2]業過等事件,[3]道路交通保護事件に分けて,各終局処理人員の処理区分別構成比を見ると,4-4-2-9図のとおりである。
 一般保護事件(虞犯を除く。)では,審判不開始の比率が74.2%と最も高く,次いで,保護観察(11.9%),不処分(9.7%),少年院送致(3.3%),年齢超過による検察官送致(0.4%),刑事処分相当の検察官送致(0.3%)の順であった(巻末資料4-10参照)。
 業過等事件では,不処分の比率が44.8%と最も高く,次いで,審判不開始,保護観察,検察官送致の順であった。
 道路交通保護事件では,保護観察の比率が34.7%と最も高く,次いで,不処分,審判不開始,検察官送致の順であった。

4-4-2-9図 少年保護事件種類別終局処理人員の処理区分別構成比

 少年保護事件を,[1]一般保護事件,[2]業過等事件,[3]道路交通保護事件に分けて,各終局処理人員の主な処理区分別構成比の推移(昭和32年以降)を見ると,4-4-2-10図のとおりである。
 一般保護事件においては,審判不開始が大半を占め,近年はおおむね70%台前半で推移し,不処分が10%前後で推移している。これに対し,保護観察,少年院送致及び検察官送致(刑事処分相当)は,平成期の初めまでいずれもおおむね低下傾向を示していたが,近年,保護観察は上昇して12〜13%台で,少年院送致もやや上昇して3%台で推移し,検察官送致は0.3%前後で横ばいである。
 業過等事件においては,不処分が最も高い比率を占めており,昭和50年代半ば以降はおおむね50%前後である。保護観察は,交通短期保護観察制度が導入された昭和52年以降,急激に上昇し,54年以降は20%台で推移していたが,平成2年以降低下傾向にあり,12年以降20%を下回っている。検察官送致は,低下傾向にあり,近年はおおむね2%弱で横ばいである。少年院送致は,近年はおおむね0.2%前後で横ばいである。
 道路交通保護事件においては,交通反則通告制度が少年にも適用されることとなった昭和45年を境に審判不開始が低下して不処分が上昇し,近年は,不処分がおおむね30%台で,審判不開始がおおむね20%前後で推移している。保護観察は,52年以降上昇傾向を示し,近年は30%台前半で推移している。

4-4-2-10図 少年保護事件種類別終局処理人員の主な処理区分別構成比の推移

イ 年齢層別の処理状況

 平成16年における一般保護事件の年齢層(行為時年齢による。)別の終局処理人員(簡易送致に係るものを除く。)の処理区分別構成比は,4-4-2-11図のとおりである。
 いずれの年齢層においても,審判不開始の比率が最も高くなっているが,年齢層が高くなるにつれて,この比率は低くなり,保護処分(少年院送致及び保護観察)の比率が高くなっている。

4-4-2-11図 一般保護事件年齢層別終局処理人員の処理区分別構成比

ウ 男女別の処理状況

 平成16年における一般保護事件の男女別の終局処理人員(簡易送致に係るものを除く。)の処理区分別構成比は,4-4-2-12図のとおりである。
 女子は,男子と比較して,審判不開始の比率が高く,不処分,少年院送致及び保護観察の比率が低くなっている。

4-4-2-12図 一般保護事件男女別終局処理人員の処理区分別構成比

エ 主要非行名別の処理状況

 一般保護事件のうち,[1]殺人,[2]強盗,[3]傷害致死,[4]覚せい剤取締法違反,[5]虞犯について,終局処理人員(年齢超過による検察官送致を除く。)の処理区分別構成比の推移(最近30年間)を見ると,4-4-2-13図のとおりである。
 殺人の処理区分は,少年院送致の比率が最も高く,昭和60年以降はおおむね40〜60%台となっている。検察官送致(刑事処分相当に限る。以下,本項(3)エにおいて同じ。)の比率も少なくなく,おおむね20〜30%台で推移し,検察官送致と少年院送致を併せると,70〜80%台となっている。平成16年は,少年院送致55.3%,検察官送致27.7%,保護観察6.4%であった。なお,ここでいう殺人には,未遂を含むので,いわゆる原則逆送事件(本節4(1)イ参照)に含まれないものも相当数含まれているが,15年,16年と検察官送致の比率が約30%となっている。
 強盗の処理区分は,保護観察の比率が最も高い年が多く,おおむね30〜40%台で推移していたが,少年院送致の比率が上昇傾向にあり,終局処理人員が1,000人を超えた平成9年以降おおむね40%台で推移し,14年以降保護観察を上回っている。検察官送致の比率は,おおむね2〜5%台で推移し,検察官送致と少年院送致を併せると,約半数を占めている。16年は,少年院送致43.2%,保護観察39.5%,検察官送致6.0%であった。
 傷害致死の処理区分は,以前は,検察官送致の比率がおおむね10%未満から10%台で推移し,ほとんどの年において少年院送致の比率よりも低くなっていたが,平成13年以降検察官送致の比率が上昇し,おおむね30〜50%台で推移している。これに対し,少年院送致の比率は,かつてはおおむね60〜70%台で推移していたが,13年以降おおむね30〜50%の間で推移している。16年は,検察官送致35.4%,少年院送致33.3%,保護観察25.0%であった。
 覚せい剤取締法違反の処理区分は,かつては保護観察の比率が最も高かったが,少年院送致の比率が平成11年以降保護観察の比率よりも高くなり,16年は50%を超えている。検察官送致の比率は,昭和50年代半ば以降おおむね低下傾向を示し,近年は1〜3%台で推移している。平成16年は,少年院送致52.2%,保護観察40.1%,検察官送致1.4%であった。
 虞犯の処理区分は,昭和57年以降は保護観察の比率が最も高く,おおむね30%台で推移し,少年院送致の比率は,おおむね10%台で推移しており,近年,保護観察と少年院送致を併せた比率が50%を超えている。平成16年は,保護観察37.8%,少年院送致16.6%であった。

4-4-2-13図 主要非行名別終局処理人員の処理区分別構成比の推移

オ 前処分の有無別の処理状況

 平成16年における一般保護事件の終局処理人員(簡易送致に係るものを除く。)の処理区分別構成比を,前処分の有無別に見ると,4-4-2-14図のとおりである。
 前処分のある少年は,前処分のない少年と比較して,保護観察の比率が約1.6倍,検察官送致(刑事処分相当)と少年院送致の比率がいずれも約5倍となっている。

4-4-2-14図 一般保護事件の前処分の有無別終局処理人員の処理区分別構成比

 平成16年に少年鑑別所に入所した少年について,退所事由となった家庭裁判所の審判決定等(観護措置の取消し及び試験観察の決定を含む。)区分別構成比を,保護処分歴別に見ると,4-4-2-15図のとおりである。
 前処分の回数別に見ると,同図[1]のとおり,前処分の回数が多くなるほど,検察官送致と少年院送致の比率が高くなり,保護観察の比率が低くなっている。
 前処分の有無及び種類別に見ると,同図[2]のとおり,保護処分歴のない者よりも保護観察又は児童自立支援施設・児童養護施設送致を受けたことがある者の方が,さらに,後者よりも少年院送致を受けたことがある者の方が,検察官送致又は少年院送致の比率が高く,保護観察の比率が低くなっている。

4-4-2-15図 少年鑑別所入所少年の保護処分歴別の審判決定等区分別構成比

カ 不処分・審判不開始

 平成16年における一般保護事件の終局処理人員(簡易送致に係るものを除く。)の不処分・審判不開始の理由別構成比は,4-4-2-16図のとおりである。
 不処分及び審判不開始の80%強は,調査・審判の過程において「保護的措置」がとられたことが理由となっている。また,不処分・審判不開始の約10%を占める「別件保護中」は,他の事件により既に保護処分が行われていることから,その措置を継続すれば,新たに別個の処分をするまでもないことを理由とするものである。
 少年事件は,犯罪の嫌疑が認められる限り,すべて家庭裁判所に送致されるので,成人事件であれば微罪処分又は起訴猶予になるようなものが相当数含まれており,少年の性格,環境上の問題点等を検討した上,非行性が極めて軽微であり,改めて特段の措置をとらなくても,再び非行を犯すおそれがないと認められる事件については,特別の保護的措置を行うことなく,「事案軽微」を理由として審判不開始にする場合がある。一般保護事件のうち事案及び少年の非行性が極めて軽微なものについては,一定の基準に基づいて,いわゆる簡易送致事件として処理され,これについては,通常,「事案軽微」を理由として審判不開始にされている。
 「非行なし」を理由とするものは,不処分では89人,審判不開始では43人であり,併せて終局処理人員(簡易送致に係るものを除く。)の0.2%であった。

4-4-2-16図 一般保護事件終局処理人員の不処分・審判不開始理由別構成比