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3 民間協力の確保 (1) 保護司 我が国の保護観察処遇は,約1,000人の保護観察官と約5万人の保護司との官民協働態勢によって実施されている点に特色がある。少年を含め,年間7万人余りに及ぶ保護観察新規受理人員を処遇し得るのも,保護司の力によるところが大きい。例えば,保護司制度を持たない英国(イングランド及びウェールズに限る。)では,総人口が我が国の半分以下であるにもかかわらず,2002年12月末日現在の保護観察官は,約8,000人である(Probation Statistics England and Wales2002による。)。
また,我が国の保護司制度は,しばしば「世界に誇り得る制度」であるといわれる。それは,本章第3節1において見たように,多数の保護司が,無報酬で様々な苦労を重ねながら,人間的な触れ合いや信頼関係の形成を通じ,犯罪者の改善更生のために善意と情熱を傾けており,そして,それが実際に成果を挙げているからであると考えられる。我が国には,犯罪者を更生させて社会に再統合していくための処遇の担い手として,保護司という重要な社会的資源があるといえる。 保護司制度を将来にわたって有効に機能させていくためには,行動力や柔軟な処遇能力を備えた適任者を幅広い層から確保していくことが必要であるが,近年,世帯の小規模化や少子化という家族構成の変化や,地域共同体の変化による連帯意識の希薄化を背景に,保護司の適任者を確保することが困難になりつつあるといわれる。この点については,保護司特別調査の結果にも現れている。すなわち,他の者に保護司になってくれるように頼んだことがあるかを質問した結果,回答者2,260人のうち910人(40.3%)が依頼したことがあり,そのうちの685人(75.3%)が断られたことがあると回答しており,保護司自身も新任保護司の確保に難しさを感じていることがうかがわれる。 このような状況の下,法務省においては,保護司活動紹介用のパンフレットを作成し,地方公共団体等の関係機関に配布して理解と協力を求めているほか,保護観察所及び保護司会が一体となって幅広い層からの保護司適任者の開拓を進めるなどしており,その結果,平成16年4月1日現在,保護司の人数は4万9,238人,定数に対する充足率は93.8%となっている。しかし,保護司の高齢化が進行する中(5-5-3-3図,4図参照),いわゆる定年制が完全実施されたことにより,今後1年間で保護司の約1割が退任時期を迎えるという状況にあり,後継者の確保はこれまで以上に緊急性を帯びてくるものと予想される。保護司特別調査においては,「金銭的に持ち出しが多い現状では,新しい人に保護司を頼みにくい。」といった意見もあり,今後は,保護司の待遇の見直しも含めた新任保護司の確保策の検討が重要な課題になってくると思われる。 (2) 協力雇用主 協力雇用主は,保護観察対象者であることを認識した上で,その雇用に積極的に協力する民間雇用主である。犯罪者の改善更生・社会復帰を図るに当たり,就労を確保して生活の基盤を安定させることは極めて重要であり,特に,雇用情勢が厳しい現状においては,協力雇用主の存在は非常に大きな意味を持っている。
保護観察所や保護司会においては,より多くの事業主に協力してもらえるよう広報活動等に努めており,その結果,5-5-4-2図のとおり,協力雇用主の数は着実に増加している。しかし,他方,協力雇用主による保護観察対象者の雇用は,必ずしも高い水準にあるとはいえないことから,今後とも新規協力雇用主の確保に努めるとともに,既存の協力雇用主に対しても,対象者の雇用促進について,一層の協力を求めていく必要があると考えられる。 5-5-4-2図 協力雇用主数の推移 |