前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成16年版 犯罪白書 第1編/第1章/第4節/3 

3 薬物犯罪者の処遇

(1) 検察庁における処理状況

 1-1-4-13図は,最近20年間における覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反及び大麻取締法違反の起訴率の推移を見たものである。覚せい剤取締法違反は,平成12年及び13年に90%を超えたほか,各年とも80%台後半で推移している。麻薬取締法違反は,5年に64.7%まで下降したが,その後はおおむね上昇傾向にあり,15年には74.0%となった。大麻取締法違反は,7年以降おおむね上昇傾向にあり,13年には71.4%と最近の20年間で最も高い起訴率となったが,15年は66.9%であった(巻末資料1-6参照)。

1-1-4-13図 覚せい剤取締法違反・麻薬取締法違反・大麻取締法違反の起訴率の推移

(2) 裁判所における処理状況

 1-1-4-14図は,覚せい剤取締法違反により通常第一審において懲役刑の言渡しを受けた者について,昭和48年以降における刑期別有罪人員の推移を見たものである。
 刑期1年未満の者は,55年に7,793人(構成比では55.5%)に達したが,その後急激に減少し,平成15年は36人(同0.3%)であった。これに対し,2年以上3年未満の者が増加して,昭和48年に208人(同7.1%)であったのが,平成15年には4,057人(同33.3%)となっており,量刑が次第に重くなっている(詳細については,第5編第3章第1節4参照。)。

1-1-4-14図 覚せい剤取締法違反の通常第一審における刑期別有罪人員の推移

(3) 矯正

 覚せい剤取締法違反は,矯正施設における被収容者の罪名で最も多いものの一つであり,覚せい剤取締法違反者を収容している多くの矯正施設では,特別の教育プログラムを作成して指導が行われている。指導に関する最近の特徴として,施設の職員だけではなく,外部の専門家の参加を得て実施していることが挙げられる。
 1-1-4-15図は,平成15年における覚せい剤取締法違反新受刑者の年齢層別構成比を見たものである。男女共に30歳代の比率が最も高いが,長期的に見ると50歳代や60歳以上の年齢層も次第に上昇傾向を示している(詳細については,第5編第3章第2節4参照。)。

1-1-4-15図 覚せい剤取締法違反の新受刑者の男女・年齢層別構成比

(4) 更生保護

 1-1-4-16図は,最近20年間における保護観察新規受理人員に占める薬物事犯者(麻薬取締法,覚せい剤取締法及び毒劇法の各違反の罪を犯した者をいう。)の比率の推移を見たものである。仮出獄者については平成10年をピークとして,保護観察付き執行猶予者については9年をピークとして,以後いずれも低下傾向を示している。
 保護観察所においては,類型別処遇の一環として,「覚せい剤事犯対象者」及び「シンナー等乱用対象者」の類型を設け,薬物犯罪者に対する保護観察の充実に努めている。また,保護観察対象者又はその保護者や引受人を集めて集団処遇を実施するなど,多様な処遇の実施を試みている(詳細については,第5編第5章第2節3参照。)。

1-1-4-16図 保護観察新規受理人員に占める薬物事犯者の比率の推移


●マネー・ローンダリング(P42)
 薬物犯罪等による不法な収益に関して,銀行口座を次から次へと移し変えるなどして隠匿し,又はあたかも正当な商取引によって得た収益であるかのように仮装することをいいます。

●コントロールド・デリバリー(P42)
 薬物の不正取引が行われる場合に,取締当局がその事情を知りながら,直ちに検挙することなくその監視の下に薬物の運搬を許容し,追跡して,その不正取引に関与する人物を特定するための捜査手法をいいます。
 なお,発見した規制薬物を取り除いて流通させることをクリーン・コントロールド・デリバリーといいます。