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4 少年凶悪犯の学職別の特徴 少年が犯行時に有職か無職か,また,中学,高校,大学等いずれの段階にあるかを考慮することは,犯行の原因・背景を知る有力な手掛かりになる。
5―3―2―10,5―3―2―11,5―3―2―12,5―3―2―13図は,少年の殺人事犯と強盗事犯について学職別に検挙人員と構成比を見たものである。 殺人については,1年ごとでは数が少なく変動も大きいので,5年ごとに合計した人員でその推移を見たが,30年前である昭和48年から5年間には,有職少年が実数も多く比率も高かったがその後減少気味であり,無職少年は昭和58年から5年間がピークでその後減少気味であるのに対して,30年前から平成4年までの20年間は実数も比率もほぼ横ばいであった高校生がその後実数も増加傾向,比率も上昇傾向に転じているのが注目される。高校生の殺人事犯での検挙人員は平成10年から14年までの5年間で,昭和63年から平成4年までの5年間の2.1倍に達している。全般的に有職・無職,高校生の学職間格差が縮まってきている感がある。 強盗について見ると,無職少年は,30年前から平成7年ころまでは横ばいであったが,その後急速に増加するに至っており,比率で見ると,7年以前は増減を繰り返し,8年以降は上昇傾向にある。平成14年の検挙人員は7年の2.5倍となっている。また,有職少年は,昭和48年から57年にかけては無職少年より多く,その後はこれを下回り減少傾向となったが,平成元年以降に増加に転じ,8年以降には増加傾向を強めているものの比率としては横ばいである。これに対して,高校生は平成2年ころまで横ばいであったが,それ以降増加に転じ,6年以降は増加傾向を一層強め,増加している有職少年の数をも追い越して無職少年に肉薄している。平成14年は5年の2.8倍に達しており比率も上昇している。中学生は数が少ないが横ばいないし微増傾向である。 また,中学・高校在学者全体の数は,5―3―2―14図で見るとおり,中学生は昭和61年の約610万6千人を,また,高校生は平成元年の約564万4千人をそれぞれピークとしてその後は減少の一途をたどり,平成15年5月(速報値)には中学生が約374万8千人(38.6%減)に,高校生が約381万人(32.5%減)にと大幅な減少を示していることを考えると,在学生の単位人口当たりの犯罪発生率は,中学生・高校生とも前記の図で見た以上の増加傾向を示していることが明らかである。 少年の強盗事犯でも,やはり,有職・無職,高校生の学職間格差が縮まってきていることがうかがえる。但し,学校に在籍していても不登校や学校に適応していない者,在職していても職場に適応していない者など,学校や職場からほとんど離脱し無職少年に近い生活をしている者が相当数含まれている可能性があるのでその点に留意する必要があろう(詳しくは第4章第2節参照)。 5―3―2―10図 少年殺人事犯学職別検挙人員の推移 5―3―2―11図 少年殺人事犯学職別検挙人員構成比の推移 5―3―2―12図 少年強盗事犯学職別検挙人員の推移 5―3―2―13図 少年強盗事犯学職別検挙人員構成比の推移 5―3―2―14図 中学校・高等学校在学者数の推移 |