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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第4章/第2節/1 

第2節 最近の強盗事犯少年の実態

1 共犯・事件のエスカレート化に関する分析

 少年による強盗事犯の場合,圧倒的に非侵入強盗が多く,それも路上強盗が大半を占めること,単独犯事件が極めて少なく,さらに,近年,共犯の人数について集団化傾向が認められることを第3章第2節で紹介したが,同様の結果が本調査においても得られた。それに加えて,本調査では,共犯関係と犯行態様との間に興味深い関係があることが明らかになった。
 まず,手口別に共犯者数を見ると,5―4―2―1図が示すように,侵入強盗では単独犯が4割,4人以上である場合が2割強であるのに対して,非侵入強盗では単独犯が1割に満たず,4人以上である場合が過半数となっており,屋外の犯行の方が共犯率,特に多数に係る共犯率が非常に高いことが認められる。

5―4―2―1図 手口別に見た共犯者数

5―4―2―2図 共犯者数別に見た犯行開始時間帯

 5―4―2―2図は,共犯者数別に犯行開始の時間帯を見たものである。夜間時間帯(18時台から5時台)が79.5%,深夜時間帯(22時台から1時台)が35.1%と夜間ないし深夜に犯行がより集中しており,さらに,共犯者数が増えるにつれ,その傾向が顕著になっている。
 また,5―4―2―3図は共犯者数別に被害者の負傷程度を示したものである。強盗事犯少年が被害者を負傷させる事件にかかわる比率については,軽傷率64.0%,重傷・死亡率14.6%であり,強盗事犯少年は被害者を負傷させる事件にかかわる比率が高く,特に共犯者数が増えるにつれ,被害者を負傷させる程度が進んでいく傾向にあることがうかがえる。

5―4―2―3図 共犯者数別に見た被害者の負傷程度

 加えて,犯行内容が予想以上にエスカレートしたとの認識を有する者の割合について,5―4―2―4図[1]は被害者の負傷程度別に,5―4―2―4図[2]は犯行主導者別に示したものである。強盗事犯少年の半数以上が,予想以上にエスカレートしたとの認識を有していること,さらに,被害者の負傷程度が進むにつれ,その認識を有する者の割合が増すといった実態がうかがえる。共犯との関係で見ると,本人が主導者である場合,主導者がいない場合,共犯者が主導者である場合の順で,その認識が増すという傾向が見られるが,本人が主導者の場合であっても4割強がエスカレートしたと認識していること,加えて,単独犯の場合は6割近くがエスカレートしたと認識している実態が浮かび上がる。共犯事件の場合,犯行に主導的にかかわっていない者ほど予想していなかった事態に発展したと受け止めがちであり,また,単独犯や主導者の場合であっても,犯行場面で歯止めが掛からなくなり,被害者を負傷させてしまうなど,当初自らが思ってもいなかったような事態に発展してしまったと振り返る少年が少なくない。

5―4―2―4図 犯行がエスカレートしたとの認識を有する者の割合

 共犯の種類については,5―4―2―5図が示すように,遊び仲間の割合が69.8%と最も高く,不良集団の割合は16.6%にとどまっている。また,当該少年を含め少年院歴や受刑歴を有する者が事件にかかわっているとする割合も21.5%と高くはない。共犯の種類別に被害者の負傷程度を見ると,共犯が「不良集団」の場合の「負傷なし」「軽傷」「重傷・死亡」の割合は14.5%,61.1%,24.4%であるのに対して,共犯が「遊び仲間」の場合は18.7%,66.3%,15.0%となっている。「不良集団」に比べて「遊び仲間」の方が,被害者の負傷程度がやや軽い傾向にはあるものの,反社会集団とは位置付けられない遊び仲間同士で被害者に重傷を負わせてしまうこともあるとの結果である。同様に,犯行時に,少年院歴あるいは受刑歴を有する者を含んだ場合とそうでない場合を比較してみると,前者の場合の「負傷なし」「軽傷」「重傷・死亡」の割合は15.1%,67.6%,17.3%であるのに対して,後者の場合の割合は23.2%,63.2%,13.6%である。少年院歴あるいは受刑歴を有する者を含むよりは含まない方が「負傷なし」の割合が高く「重傷・死亡」の割合が低いが,その場合であっても重傷を負わせてしまうことがあることが明らかになった。

5―4―2―5図 共犯の種類の分布