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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第3章/第2節/1 

第2節 交通犯罪の動向と処理状況

1 交通犯罪の動向

(1) 交通関係業過

 IV-7表は,最近10年間における交通関係業過の検挙人員を罪名別に見たものである。

IV-7表 交通関係業過の検挙人員

 前節で述べた交通事故の発生件数の急激な増加に伴い,交通関係業過の検挙人員は,ここ2年間で急激な増加傾向を示した。
 平成12年は,その総数が,前年比8万5,741人(11.2%)増となって戦後初の80万人の大台を突破し,その検挙人員の98%以上を占める業務上過失傷害も,前年比8万4,910人(11.2%)増となって同様に80万人台を突破した。運転の業務性が認められない運転者による重過失傷害についても,同様に増加傾向には顕著なものがある。
 IV-37図は,いわゆるひき逃げ事件(交通関係業過を伴う事故不申告等)の発生件数,検挙件数及び検挙率の推移を見たものである。ひき逃げ事件も,ここ2年間で急激な増加傾向にあり,平成12年における発生件数は1万4,050件であり,8年の7,036件から,ほぼ倍増している。

IV-37図 ひき逃げの発生件数・検挙件数・検挙率の推移

 交通事故では,法令に基づき,運転者等から警察に対して事故発生申告がなされるので,交通関係業過の発生件数と検挙件数はほぼ同じとなるが,ひき逃げは,犯人が逃走することから,その検挙率・検挙件数が問題となる。ひき逃げの検挙率は,これまでほぼ横ばいであったが,ここ4年間で急激に低下し,平成12年の検挙率は,38.9%に低下した。
 一方,検挙件数は,平成10年を底として増加傾向に転じている。これは,捜査機関が検挙件数の向上に努めても,その能力を上回るひき逃げ事件が発生していることに他ならず,一般刑法犯の検挙率の動向と同様に,今後の推移に注意を要する(本編第2章第2節1参照)。

(2) 道交違反

 平成12年における道交違反の取締件数は,総数が792万2,308件であり,昭和59年の総数1,384万6,532件のピークから,ほぼ連続して減少傾向を示している。
 そのうち,交通反則通告制度に基づき,反則事件として告知された道路交通法違反は,694万4,821件(取締件数中の88.0%)であり,取締件数の総数と同様に,昭和59年の1,165万2,278件のピークから,ほぼ連続して減少傾向を示している。これを違反態様別に見ると,平成12年は,速度超過が217万2,629件(告知件数中の31.3%)と最も多く,以下,駐停車違反189万6,587件(同27.3%),一時停止違反70万148件(同10.1%)と続いている(巻末資料IV-18参照)。
 道路交通法違反の送致件数(非反則行為として検察庁に送致された件数)は,昭和62年に交通反則通告制度の適用範囲が拡大されたことに伴い,同年以降減少し,平成7年以降は,100万件前後で推移したが,12年には94万6,467人と減少した。また,交通反則通告制度の適用を受けない保管場所法違反の検察庁新規受理人員については,昭和60年に9万6,256人のピークに達した後,減少傾向が続き,平成12年には2万9,738人となっている。
 違反態様別に道交違反の送致件数を見ると,速度超過が41万9,516件(42.9%)と最も多く,以下,酒気帯びが25万2,752件(25.9%),無免許が8万1,908件(8.4%)及び信号無視が1万4,376件(1.5%)となっている。これに酒酔いの2,534件(0.3%)を加えると,いわゆる交通三悪に数えられる飲酒運転(酒気帯び・酒酔い)・無免許運転・速度超過が送致件数に占める割合は,合計77.4%となり,交通三悪が高い割合を占めている。
 IV-38図は,送致件数について,平成3年を100とした指数で見たものである。一時停止及び信号無視については,一貫して上昇傾向を示していたが,12年には低下に転じた。速度超過は,低下傾向にあったものが,7年を底に上昇に転じていたが,やや上げ止まりの感がある。酒気帯び運転は,100前後の指数で停滞していたのが大きくポイントが低下したほか,総じて12年は,前年と比べて全体として低下傾向を示している。

IV-38図 道路交通法違反取締件数指数の推移