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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/2 

2 交通事故増加の背景

(1) 交通関係指標から見た交通事故の増加

 日本の総人口は,昭和55年の約1億1,710万人から,平成2年には約1億2,360万人,12年には約1億2,690万人に増加した。人口10万人当たりの負傷者数は,昭和50年代後半以降,増加傾向にあり,平成2年には639.3人,12年には910.6人に増加したが,重傷者数には大きな変動はなく,2年は人口10万人当たり64.0人,12年は63.1人である。一方,人口10万人当たりの死亡者数は,2年の9.1人から,5年には8.8人,12年には7.1人に減少した。また人口10万人当たりの30日以内死亡者数は5年10.6人から,12年には8.2人に減少しており,同時期の24時間以内の死亡者よりも減少率は高くなっている(巻末資料IV-17参照)。
 IV-30図は,人口当たりの負傷者数,重傷者数,死亡者数の推移を,平成2年を100とした指数で見たものである。2年と比べ,12年には負傷者の指数は42.4上昇したが,重傷者の指数は1.4,死亡者の指数は21.4それぞれ低下した。

IV-30図 人口当たりの死傷者数(指数)の推移

 自動車等(自動車,自動二輪車及び原動機付自転車をいう。以下,本節において同じ。)の車両保有台数は昭和55年には5,225万508台であったが,平成2年には7,811万3,378台,12年には8,924万5,093台に増加した。車両1万台当たりの負傷者数は,昭和55年の114.6人から,平成2年には101.2人に減少したが,その後は増加傾向にあり,12年には,129.5人となった。一方,車両1万台当たりの死亡者数は,昭和55年の1.7人から,平成2年には1.4人に減少,5年には1.3人,12年には1.0人となった。また,車両1万台当たりの30日以内死亡者数は5年の1.6人から,12年には1.2人になった(巻末資料IV-17参照)。
 IV-31図は,平成2年を100とした指数で,車両保有台数当たりの負傷者数,死亡者数(指数)の推移を見たものである。2年と比べ,12年には車両保有台数当たりの負傷者の指数は28.0上昇,死亡者の指数は29.3低下した。

IV-31図 車両保有台数当たりの死傷者数(指数)の推移

 IV-29図IV-30図及びIV-31図を見ると,負傷者数,重傷者数及び死亡者数は,昭和50年代,60年代には,おおむね比例的に推移していたのに対し,近年それぞれが異なる変化を示している。なお,死亡事故比率(事故発生件数に占める死亡事故件数の比率をいう。以下,本節において同じ。)は,平成2年には1.7%であったのに対し,12年には0.9%と,2分の1近くに低下している。

(2) 事故類型別の事故発生状況

 IV-5表は,交通事故の類型別発生状況を見たものである。

IV-5表 事故類型別の事故件数

 平成12年における事故類型を見ると,車両相互の事故は79万2,846件(交通事故全体の85.1%)であり,人対車両の事故は8万6,094件(同9.2%),車両単独の事故は5万2,866件(同5.7%)である。12年の車両相互の事故は2年に比べ26万5,747件(50.4%)増加した。人対車両の事故は5年から10年にかけて減少傾向にあったが,11年,12年には大幅に増加し,12年は2年に比べ6,460件(8.1%)増加している。車両単独の事故は,2年に比べ1万6,760件(46.4%)増加した。
 一方,いずれの類型においても死亡事故はおおむね減少傾向にある。平成12年には車両相互の死亡事故が4,093件で死亡事故全体の47.0%を占め,人対車両の事故が2,468件(構成比28.3%),車両単独の事故が2,092件(同24.0%)である。これを死亡事故比率で見ると,車両相互の事故は0.5%であるのに対し,人対車両,車両単独の事故はそれぞれ2.9%,4.0%であり,車両相互の事故よりも死亡事故につながるケースが多いことがわかる。
 IV-32図は車両相互の事故の内訳について,平成2年以降の変化を示している。車両相互の事故のうち,追突事故は平成2年の15万4,253件から,12年には27万6,911件に大幅に増加し,車両相互の事故の34.9%を占める。出会い頭衝突は2年の17万7,536件から,12年には24万7,066件(車両相互の事故の31.2%)に,同じく右折時衝突は5万8,984件から8万8,734件(同11.2%)に,左折時衝突は2万6,625件から4万5,267件(同5.7%)にそれぞれ増加した。これらに対し,正面衝突は3万6,159件から3万3,854件(同4.3%)に減少した。

IV-32図 車両相互の事故の推移

 IV-33図は,平成12年の死亡事故を類型別に示したものである。死亡事故の内訳を見ると,車両相互の事故では出会い頭衝突が最多の1,350件(車両相互の死亡事故全体の33.0%),次いで正面衝突が1,203件(同29.4%),追突が525件(同12.8%),右折時衝突が432件(同10.6%),左折時衝突が71件(同1.7%)となっている。死亡事故比率で見ると,正面衝突が3.6%と高く,次いで追越時衝突が0.8%,出会い頭衝突,すれ違い時衝突及び右折時衝突がそれぞれ0.5%,追突及び左折時衝突がそれぞれ0.2%である。人対車両の事故では横断中が1,817件(人対車両の死亡事故全体の73.6%)と最も多く,うち703件(同28.5%)が横断歩道横断中の事故である。道路を通行中の歩行者の死亡事故は288件(同11.7%)である。車両単独の事故では,電柱,分離帯,防護柵,家屋・塀等の工作物衝突が1,467件(車両単独の死亡事故全体の70.1%)と最も多く,次いで路外逸脱が333件(同15.9%)などとなっている。

IV-33図 死亡事故の類型別構成比

(3) 車種別の事故発生状況

 平成12年の交通事故を第1当事者(当該交通事故に関係した者のうち,過失が最も重い者をいい,過失の程度が同程度の場合は,被害が最も軽い者をいう。以下,本節において同じ。)別に見ると,自動車等の運転者が第1当事者であるもの,すなわち自動車等による事故は88万8,124件で全交通事故の95.3%を占める。自転車によるものが2万6,680件(構成比2.9%),歩行者によるものが6,335件(同0.7%),その他が54件,第1当事者不明が1万741件である。全死亡事故8,707件のうち,自動車等によるものが8,024件(同92.2%),自転車によるものが308件(同3.5%),歩行者によるもの319件(同3.7%),その他が1件,第1当事者不明が55件である。
 IV-6表は,自動車等の運転者が第1当事者である事故について,その車種別の交通事故件数・死亡事故件数を見たものである。交通事故件数では,乗用車による事故が最も多く,自動車等による事故の70.6%を占める。各車種1万台当たりの交通事故件数で見ると,自家用乗用車は114.3件であるのに対し,タクシー等の事業用普通乗用車は998.6件,バス等の事業用大型乗用車は353.0件,また事業用貨物車は298.8件である。

IV-6表 第1当事者車種別の交通事故件数・死亡事故件数

 平成12年の各車種1万台当たりの交通事故件数を2年と比較すると,事業用普通乗用車は56.4%,事業用大型乗用車は43.9%と,他の車種と比較して大幅に増加している。自動二輪車(以下「自二」という。)は1万台当たり44.8件,原動機付自転車(以下「原付」という。)は1万台当たり47.3件と,いずれも平均の99.5件を下回るが,2年と比較すると,原付の1万台当たりの事故件数は67.1%と大幅に増加している。
 死亡事故件数では,自動車等による事故のうち乗用車による事故が54.7%,貨物車による事故が31.3%を占める。1万台当たりの死亡事故件数は,全車両平均では0.9件であるが,自家用に比べ事業用が高く,なかでも軽貨物車を除く事業用貨物車は1万台当たり6.6件と平均を大幅に上回っている。また事業用貨物車による事故件数は,事故全体の4.2%であるが,高速道路における事故件数について見ると,事業用貨物車によるものが19.3%に達する。平成12年の1万台当たりの死亡事故件数を2年と比較すると,平均では26.3%減少しているが,乗用車に比べ,貨物車や原付の減少幅は小さい。
 死亡事故比率を見ると,全車種平均では0.9%であるが,乗用車に比べ,貨物車及び二輪車(自二・原付)が高く,乗用車平均の死亡事故比率が0.7%であるのに対し,貨物車平均では1.3%,二輪車平均では1.7%であり,なかでも事業用大型貨物車は3.1%,自二は2.8%である。

(4) 年齢層別の事故発生状況

 免許保有者総数は平成2年の約6,090万人から,12年には約7,470万人に増加している。年齢層別に見ると,65歳以上の者が占める割合が上昇傾向にあり,免許保有者全体に占める割合は,2年の4.6%(281万2,121人)から,12年には9.6%(720万504人)に増加した。これは65歳以上の高齢者人口の増加と高齢者の免許保有率の上昇によるものである。65歳以上の人口は2年の約1,500万人から,12年には約2,200万人に増加し,65歳以上の免許保有率も2年の19%から,12年には32%以上になっている。
 IV-34図は,自動車等運転者が第1当事者の交通事故について,運転者の年齢層別の交通事故発生率及び死亡事故発生率(それぞれ各年齢層の,自動車・自二・原付いずれかの免許保有者1万人当たりの比率をいう。以下,本節において同じ。)を見たものである。交通事故発生率は,全年齢層平均では免許保有者1万人当たり118.9件であるのに対し,30歳未満,なかでも「16〜19歳」が最も高く,298.3件である。

IV-34図 第1当事者年齢層別交通事故・死亡事故発生率

 死亡事故発生率を見ると,全年齢層平均では免許保有者1万人当たり1.1件であるのに対し,「16〜19歳」では,3.5件と最も高く,次いで「75歳以上」の2.4件であり,30歳未満と70歳以上の年齢層ではいずれも平均を上回っている。またこれらの年齢層では,自二や原付による事故も,他の年齢層と比べて際立って高くなっており,「16〜19歳」では,自二及び原付による死亡事故発生率は合計で1万人当たり1.3件,「75歳以上」では0.9件である。
 なお,免許を保有していない15歳以下の自動車等による事故は532件,死亡事故は20件(自動車2件,自二4件,原付14件)である。また,16歳以上の無免許及び免許保有に関して不明のものによる事故は5,193件,死亡事故は177件(自動車113件,自二39件,原付25件)である。

(5) 年齢層別の事故被害状況

 IV-35図は,平成12年の年齢層別人口10万人当たりの交通事故による負傷者数と死亡者数(以下,本節ではそれぞれ「負傷率」,「死亡率」という。)を,歩行中,運転中などの状態別に示したものである。負傷率を見ると,全年齢層平均では,910.6であるのに対し,「16〜19歳」が1,712.0,「20〜24歳」が1,979.4と最も高く,20歳代後半以降では,年齢が高い層ほど負傷率は低くなっている。また状態別では,自動車運転中の負傷者数は51万141人と負傷者全体の44.1%を占める。自動車運転中の負傷率も「20〜24歳」が最も高く,928.6と全年齢層平均の401.9の2倍以上であり,20歳代後半以降,年齢が高い層ほど低くなっている。自二乗車中の負傷者は6万2,929人である。自二乗車中の負傷率は若年層ほど高く,16歳から29歳が負傷者の61.6%(3万8,785人)を占める。原付乗車中の負傷者は12万1,207人である。原付乗車中の負傷率は「16〜19歳」が最も高く,482.2と全年齢層平均の95.5の5倍に達する。自転車乗用中の負傷者は17万5,179人であり,うち3万6,100人が「15歳以下」,2万6,662人が「16〜19歳」である。歩行中の負傷者は8万6,856人であり,うち「15歳以下」が2万2,475人,65歳以上が2万719人であり,両者で全体のほぼ半数を占める。歩行中の負傷率も,全年齢層平均は68.4であるのに対し,「15歳以下」では112.9,65歳以上では93.0である。

IV-35図 交通事故の状態別・年齢層別の負傷率及び死亡率

 年齢層別死亡者数は,負傷者と同様に若年層も多いが,65歳以上は3,166人(うち75歳以上は1,698人)であり,交通事故による死亡者の34.9%が65歳以上の高齢者である。死亡率で見ても,全年齢層平均で7.1であるのに対し,65歳以上では14.2(うち「75歳以上」は18.7)である。
 死亡者を状態別でみると,交通事故による全死亡者9,066人中,自動車運転中の死亡者が3,058人,自動車同乗中が895人,自二乗車中が795人,原付乗車中が780人,自転車乗用中が984人,歩行中が2,540人,その他が14人となっている。歩行中の死亡者のうち,38.2%(970人)を「75歳以上」が占め,65歳以上では61.2%(1,555人)を占める。歩行中の死亡率も,全年齢層平均で2.0であるのに対し,「75歳以上」では10.7,65歳以上では7.0である。また,自転車乗用中の死亡率は30歳代以降,年齢が高い層ほど高くなっている。

(6) 違反別の事故発生状況

 IV-36図は,自動車等運転者が第1当事者の死亡事故を違反別に見たものである。

IV-36図 違反別死亡事故件数

 違反別交通事故の死亡事故比率を見ると,酒酔い運転31.3%,最高速度違反16.0%と,全事故平均の0.9%と比較して著しく高くなっており,これらの違反は死亡事故につながりやすいといえる。