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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第3章/第2節/2 

2 検察庁における交通犯罪の処理状況

 IV-8表は,最近10年間における交通関係業過と道交違反の検察庁終局処理人員を見たものである。

IV-8表 交通犯罪の検察庁終局処理人員

(1) 交通関係業過

 交通関係業過の起訴率は,昭和60年の73.0%のピークとなるまで上昇していたが,以降は,年々低下し,平成12年には11.5%となっている。一方,起訴猶予率は,それまでおおむね低下傾向にあったが,平成に入ると上昇に転じ,同年における起訴猶予率は88.3%に達している。しかし,その中で,公判請求人員は,9年の4,700人を底に再び上昇に転じ,12年は6,537人となり,略式命令請求人員は,10年の7万8,146人を底に再び上昇し,12年は8万6,643人となった。その結果,公判請求率(起訴人員に占める公判請求人員の割合)は,9年の5.3%から12年の7.0%へと1.7ポイント上昇した。

(2) 道交違反

 道交違反の起訴率は,昭和40年代前半の93%前後から上昇し,50年代は97%前後で推移した後に低下に転じ,62年から平成5年までは94%ないし95%で推移し,6年以降も,90%台の高い水準を維持しつつ緩やかな低下傾向にある。その中で公判請求人員は,昭和53年の14万人台のピークとなるまで増加した後,以降は年々減少したが,平成6年を底として再び増加に転じ,12年は1万2,586人となっている。その反対に,略式命令請求が,漸減ないし横ばいとなっていることから,起訴猶予率は,緩やかな変動を繰り返しながら,おおむね上昇傾向を示し,12年には8.8%となっている。

(3) 全体の動向

 これらの変化の背景には,昭和60年代に,傷害の程度が軽微で,かつ過失の態様が悪質でない事案については,[1]「国民皆免許時代」,「くるま社会」において,軽微な事件により国民の多数が刑事罰の対象となるような事態となることは,刑罰の在り方として適当ではないこと,[2]保険制度が普及し,治療費や修繕費に対する保険による補償が充実してきたこと,[3]交通事故の防止は,刑罰のみに頼るべきものではなく,行政上の規制・制裁をはじめ,各種の総合的な対策を講ずることによって達成されるべきものであること,及び[4]交通関係業過は,従来から,その多くが略式手続によって処理され,少額の罰金が科されていたが,このような事態は,罰金の刑罰としての感銘力を低下させ,刑事司法全体を軽視する風潮を招来するおそれがあることなどを理由に,検察庁において自動車等による業務上過失傷害事件の処理の在り方等について見直しがなされたことなどがあるものと考えられる。
 しかし,ここ数年は,交通関係業過における公判請求人員・略式命令請求人員及び道交違反における公判請求人員は,いずれも増加傾向に転じている(次項参照)。