前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成13年版 犯罪白書 第4編/第2章/第3節/4 

4 暴力的事案の検察庁及び裁判所における処理状況

(1) 検察庁における処理状況

 IV-22図は,暴力的事案である強盗,傷害,強制わいせつ及び器物損壊等の4罪種について,最近5年間における起訴率と起訴猶予率の推移を示したものである(巻末資料IV-12参照)。

IV-22図 主要罪名別起訴率・起訴猶予率の推移

 起訴率が最も高いのは強盗であり,平成12年には85.6%となっている。傷害の起訴率は,昭和50年及び60年には,強盗を上回ったが,最近5年間は,これら両年より低い70%台前半で推移している。もっとも,この期間も含めて,傷害の公判請求率(起訴人員に占める公判請求人員の比率)は著しく上昇しており,30年では公判請求されるのが起訴人員7人に1人程度であったものが,平成12年では起訴人員のうち3人に1人は公判請求されている。
 強盗及び傷害の起訴猶予率を見ると,強盗については,全体を通じて低下傾向にある。傷害については,昭和60年まで著しく低下した後,最近5年間は,20%台の水準で緩やかな低下を示したが,平成12年で反転上昇した。
 全体を通じて起訴率の伸びが最も顕著なのは強制わいせつであり,昭和30年に24.0%であったものが,平成12年には60.5%となっている。反面,強制わいせつの起訴猶予率は,全体を通じて大きく低下している。
 器物損壊等は,起訴率が傷害よりかなり低いものの,推移としては,起訴率,起訴猶予率ともに,傷害と同様の推移を示している。公判請求率を見ても,最近5年間の上昇傾向や平成12年に反転低下した点は傷害と類似しているものの,12年の起訴率は40.9%で,そのうち48.9%が公判請求になっており,傷害の公判請求率(35.4%)よりも高率である。

(2) 裁判所における処理状況

 IV-23図は,強盗,傷害,強制わいせつ及び器物損壊等の4罪種について,最近5年間における実刑率(死刑を含めて実刑を言い渡された者を有罪判決を受けた者の総数で除した比率をいう。以下,本節において同じ。)の推移を示したものである。

IV-23図 通常第一審における主要罪名別実刑率の推移

 また,IV-24図は,昭和50年,55年,60年及び最近5年間の期間において,これら4罪種で有罪判決の言渡しを受けた者の刑期別構成比の推移を示したものであり,実刑のみの科刑状況と実刑と執行猶予を合算した科刑状況との別に示してある(巻末資料IV-13参照)。

IV-24図 通常第一審における主要罪名別科刑状況の推移

 全体を通じて強盗の実刑率は上昇傾向にあるが,その他の3罪種では,特に最近5年間を見ると,実刑率は横ばいもしくは低下傾向にある。その要因として,「2年以上3年以下」あるいは「1年以上2年未満」の層で執行猶予が付されるものの比率が高くなっていることが指摘できる。なお,傷害と器物損壊等については,平成10年以降,こうした動向からの反転傾向も見られる。
 実刑になった者における刑期別構成比を見ると,強盗においては,全体を通じて,「10年以下」及び「5年以下」の層の構成比合計が70%台で推移しているが,その中では徐々に「10年以下」の層の比重が高まっている。一方,「2年以上3年以下」以下の各層の構成比は徐々に低下しており,実刑が言い渡される場合の刑期が長期化していることがうかがえる。
 傷害,強制わいせつ及び器物損壊等においては,窃盗と同様に(本章第2節3参照),「1年未満」や「6月未満」の比較的刑期の短い層の構成比がいずれも低下している。傷害では,平成8年以降,「1年以上2年未満」の層の構成比が最も高くなっているが,構成比の伸び率は,むしろ「2年以上3年以下」や「5年以下」の刑期の長い層が顕著であり,これを合わせた構成比は,「1年以上2年未満」の層の構成比に近づいている。