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 平成12年版 犯罪白書 第7編/第5章/第6節 

第6節 まとめ

 今回の調査結果をまとめると,次のとおりである。
[1] 服役の原因となった事件を起こした契機を尋ねると,組等の所属組織のために起こしたと答えた者の比率が,暴力団関係受刑者では約11%と,それ以外の受刑者(約1%)と比べて高くなっている。
[2] 服役の原因となった事件の罪種を見てみると,暴力団関係受刑者の場合は,それ以外の受刑者と比べて,恐喝,傷害,銃刀法違反及び暴力行為等処罰法違反を犯した者の比率が高く,逆に,窃盗を犯した者の比率が低くなっている。非行又は犯罪の初発年齢は,暴力団関係受刑者においては,14歳未満の者が約24%,14・15歳が約28%と,それ以外の受刑者をそれぞれ約7ポイント上回っており,当該非行又は犯罪の内容についても,「暴力にかかわるもの」と答えた者の比率が,暴力団関係受刑者では約30%であり,それ以外の受刑者と比較すると,約14ポイント上回っている。また,少年時の不良集団への加入歴を見ると,暴力団関係受刑者は,約70%が不良集団への加入歴ありと回答しているのに対して,それ以外の受刑者は,約43%である。
[3] 行刑施設内での面会及び信書の発受回数については,暴力団関係受刑者は,それ以外の受刑者に比べて多い。
[4] 暴力団に加入することによって得られる魅力・メリット等に関する意識については,暴力団関係受刑者全体で見ると,「組の名前で仕事がしやすい」(約35%),「仲間が増える」(約26%)及び「刺激にあふれている」(約26%)を選んだ者が多く,反対に,暴力団に加入することによって受ける不利益・デメリット等については,暴力団関係受刑者全体で見ると,「家族に迷惑をかける」(約68%),「警察ににらまれる」(約63%),「両親に迷惑をかける」(約56%)を選んだ者が多くなっている。
[5] 暴力団から離脱しなかった理由としては,「組に義理があったから」とする者(約43%)が最も多く,以下,「親分兄弟分との関係が切れなかったから」(約42%),「組員としての生活に満足していたから」(約33%),「他の手段で生活できなかったから」(約30%)と続く。
[6] 行刑施設で行われる暴力団離脱指導に参加した者は,暴力団関係受刑者全体の約17%である。参加者のうち,暴力団に加入して「良かったとは思わない」とする者が約47%,「良かったかどうかは分からない」とする者は37%,暴力団に加入して「良かったと思う」とする者は約17%である。離脱指導中,出所後何らかの役に立つとされたもので,最も多いのが「施設職員の話」(約50%)であり,以下,「面接指導」(約28%),「警察職員・職業訓練所等外部講師の話」(約16%),「ビデオなどの視聴覚教材」(約16%)の順となっている。
[7] 離脱指導を受けたと回答した者のうち,出所後の暴力団との関係について,「組にもどるつもりはない」とする者は約60%であり,次いで,「組にもどるつもりである」(約27%),「組とは関係を断ち切りたいが,組にもどると思う」(約6%)の順となっている。
[8] 暴力団を離脱するために必要だと考えられている条件・方法については,「暴力団(組)事務所との接触を断つこと」であるとする者(約65%)が最も多く,次いで,「よその土地で暮らすこと」(55%),「一般社会での就業や生活の基盤が確保されること」(約44%),「相談に乗ってくれる人がいること」(約40%),「仕事に関する訓練や資格があること」(約25%),「自分と家族の身の安全を確保すること」(約22%)の順となっている。