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 平成12年版 犯罪白書 第6編/第5章/第5節/1 

第5節 韓国

1 経済犯罪に対する科刑状況等

(1) 賄賂罪・税法違反・証券取引法違反・知的所有権関係法令違反

 韓国では,賄賂罪については刑法に罰則があり,その法定刑は,収賄については,5年以下の懲役刑又は10年以下の資格停止(公務員となる資格,選挙権,被選挙権等の資格を停止することをいう。),賄賂供与については,5年以下の懲役刑又は2,000万ウォン以下の罰金刑とされている。
 関税を除く国税のほ脱に関しては,租税犯処罰法に罰則があり,所得税等のほ脱については,3年以下の懲役刑又はほ脱税額の3倍以下に相当する額の罰金刑に,特別消費税及び酒税等のほ脱については3年以下の懲役刑又はほ脱税額の5倍以下に相当する額の罰金刑に,それぞれ処することとされている。
 関税については,関税法に罰則があり,密輸出入罪のうち,禁制品の密輸出入については,10年以下の懲役刑又は2,000万ウォン以下の罰金刑に,その他の物品の密輸入については,5年以下の懲役刑又は関税額の10倍と物品原価とのうち高額である方の金額以下に相当する額の罰金刑に,密輸出については,3年以下の懲役刑又は物品原価以下に相当する額の罰金刑に,詐欺その他不正な方法による関税のほ脱については,3年以下の懲役刑又はほ脱税額の5倍以下に相当する額の罰金刑に,それぞれ処することとされている。
 証券取引法は,インサイダー取引や相場操縦等の不公正取引を禁止しており,これに違反した場合は,10年以下の懲役刑又は2,000万ウォン以下の罰金刑に処することとされている。このうち,罰金刑については,違反行為によって得た利益又は回避した損失の額の3倍に相当する金額が2,000万ウォンを超えるときは,その利益又は回避した損失の額の3倍に相当する金額以下の罰金刑に処することとされている。
 一方,知的所有権に関して,商標法,特許法及び著作権法は,商標権,特許権又は著作権等を侵害した者を,5年以下の懲役刑又は5,000万ウォン以下の罰金刑に処することとしており,不正競争防止法は,不正競争行為をした者を,3年以下の懲役刑又は3,000万ウォン以下の罰金刑に処することとしている。
 1994年以降における,賄賂罪,租税犯処罰法違反,関税法違反,証券取引法違反,商標法違反,特許法違反,著作権法違反及び不正競争防止法違反について,罪名別の検挙人員を示したものがVI-46表である。これらの罪名のうち,後記の「特定犯罪加重処罰等に関する法律」による加重処罰の対象となり得る賄賂罪,租税犯処罰法違反,関税法違反を除いたものについて,第一審における科刑状況を示したものがVI-47表である。

VI-46表 賄賂罪租税犯処罰法違反関税法違反証券取引法違反商標法違反特許法違反著作権法違反及び不正競争防止法違反の検挙人員

VI-47表 証券取引法違反商標法違反特許法違反著作権法違反及び不正競争防止法違反の第一審科刑状況

(2) 独占禁止法

 韓国において,我が国の独占禁止法に相当する法律は「独占規制及び公正去来に関する法律」であり,1980年に制定されて以降,競争政策の展開に合わせて繰り返し改正されており,直近の改正は1999年12月に行われている。
 同法の執行機関は,国務総理の下に置かれた独立機関である公正去来委員会である。公正去来委員会は,同法に違反する行為があるときは,是正措置を命じ,あるいは課徴金を賦課することができる。なお,不当な共同行為をした事業者がその事実を公正去来委員会に申告した場合には,是正措置及び課徴金について,減軽又は免除することができると同法に規定されている。
 また,公正去来委員会は,違反の程度が客観的に明白かつ重大で競争秩序を著しく阻害すると認めるときは,検察総長(我が国の検事総長に当たる。)に告発しなければならないとされている。
 同法に違反する行為についての法定刑は,不当な共同行為,市場支配的地位の濫用行為,企業結合の制限規定に違反する企業結合行為及び持株会社設立禁止規定に違反する持株会社設立・持株会社への転換行為等については,3年以下の懲役刑若しくは2億ウォン以下の罰金刑又はその併科,不公正取引行為規制に違反する行為及び不当な再販売価格維持行為等については,2年以下の懲役刑又は1億5,000万ウォン以下の罰金刑,企業結合,株式所有現況又は債務保証現況に関する不申告・虚偽申告行為,資料要請に対する拒絶・虚偽資料の提出行為等については,1億ウォン以下の罰金刑とされている。
 1992年以降の,同法に違反する行為に対する措置の類型別件数は,VI-48表のとおりである。是正命令,是正勧告等の行政的な措置が多く執られており,1992年以降1998年までに刑事告発されたものは149件となっている。VI-49表は,1992年以降における,告発事件の告発後の処理状況を示したものである。

VI-48表 「独占規制及び公正去来に関する法律」の違反行為に対する措置の類型別件数

VI-49表 告発事件処理状況