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 平成12年版 犯罪白書 第5編/第1章/第1節/2 

2 調査結果

(1) 対象罪種の分類

 本調査では,犯罪被害を「世帯犯罪被害」及び「個人犯罪被害」に分けて調査している。
「世帯犯罪被害」は,世帯単位での犯罪被害の有無を調査するもので,本調査では,「あなた又はあなたの世帯で…の犯罪被害に遭いましたか」という聞き方をしており,調査対象罪種は,自動車盗,車上盗,自動車損壊,バイク盗,自転車盗,不法侵入及び不法侵入未遂である。
 他方,「個人犯罪被害」は,個人単位での犯罪被害の有無を調査するもので,本調査では,「あなた自身が…の犯罪に遭いましたか」という聞き方をしており,調査対象罪種は,強盗,窃盗,性的暴行及び暴行・脅迫である。

(2) 「世帯犯罪被害」の実情

ア 自動車盗

 自動車盗は,過去5年間に自家用の乗用車,バン,トラック(以下,本節において「自家用車」という。)を保有していた世帯を調査の対象としている。過去5年間に自家用車を保有していた世帯は1,907世帯であり,そのうち,過去5年間に自動車盗の被害に遭ったことがあるのは0.7%(13世帯),1999年に被害に遭ったのは0.2%(3世帯)である。
 次に,過去5年間に自動車盗の被害に遭ったことがある世帯に対して,直近の被害について質問した結果,被害に遭った場所は,自宅又は自宅付近が53.8%であり,申告率(警察へ事件を届け出た者の比率をいう。以下,本節において同じ。)は61.5%であった。

イ 車上盗

 本調査では,自家用車の中に置いておいてあった物又は自家用車の部品を盗まれる被害を車上盗の被害とし,過去5年間に自家用車を保有していた世帯を調査の対象としている。過去5年間に車上盗の被害に遭ったことがあるのは5.7%(108世帯),1999年に被害に遭ったのは1.6%(31世帯)であり,そのうち1999年に2回以上被害に遭ったのは6.5%(2世帯)であった。
 次に,過去5年間に車上盗の被害に遭ったことがある世帯に対し,直近の被害について質問した結果,被害に遭った場所は,自宅又は自宅付近が55.6%であった。また,申告率は41.7%であり,警察に届け出なかった理由(複数選択による。以下同じ。)の中で最も多かったのは「それほど重大ではない/損失がない」の58.6%であった。

ウ 自動車損壊

 本調査では,自家用車に対する破損を受けたこと(交通事故によるものを除く。)を自動車損壊の被害とし,過去5年間に自家用車を保有していた世帯を調査の対象としている。過去5年間に自動車損壊の被害に遭ったことがあるのは16.8%(321世帯),1999年に被害に遭ったのは4.8%(92世帯)であり,そのうち1999年に2回以上被害に遭ったのは23.9%(22世帯)であった。
 次に,過去5年間に自動車損壊の被害に遭ったことがある世帯に対して,直近の被害について質問した結果,被害に遭った場所は,自宅又は自宅付近が51.7%であった。また,申告率は20.9%であった。

エ バイク盗

 バイク盗は,過去5年間に原付自転車,スクーター,オートバイ(以下,本節において「バイク」という。)を保有していた世帯を調査の対象としている。過去5年間にバイクを保有していた世帯は712世帯であり,そのうち過去5年間にバイク盗の被害に遭ったことがあるのは12.4%(88世帯),そのうち1999年に被害に遭ったのは2.8%(20世帯)であった。
 次に,過去5年間にバイク盗の被害に遭ったことがある世帯に対して,直近の被害について質問した結果,被害に遭った場所は,自宅又は自宅付近が59.1%であった。また,申告率は72.7%であった。

オ 自転車盗

 自転車盗は,過去5年間に自転車を保有していた世帯を調査の対象としている。過去5年間に自転車を保有していた世帯は1,788世帯であり,そのうち過去5年間に自転車盗の被害に遭ったことがあるのは27.3%(488世帯),1999年に被害に遭ったのは7.9%(141世帯)である。そのうち1999年に2回以上被害に遭ったのは19.1%(27世帯)であった。
 次に,過去5年間に自転車盗の被害に遭ったことがある世帯に対して,直近の被害について質問した結果,被害に遭った場所は,自宅又は自宅付近が49.8%であった。また,申告率は36.1%であった。

カ 不法侵入

 本調査では,「誰かがあなたの家又はアパートに許可なく入り込み,何かを盗んだ,又は盗もうとしたことがありましたか。」と質問し,これを不法侵入の被害としている。過去5年間に不法侵入の被害に遭ったことがあるのは4.1%(90世帯),1999年に被害に遭ったのは1.2%(27世帯)であり,そのうち1999年に2回以上被害に遭ったのは29.6%(8世帯)であった。
 次に,過去5年間に不法侵入の被害に遭ったことがある世帯に対して,直近の被害について質問した結果,実際に何かを盗まれたのは68.9%,盗まれたものの平均価格は約13万円,また,ものを盗まれた以外に,家財を壊されるなど,財産上の被害があったのは16.7%であった。申告率は61.1%であったが,警察に届け出た理由としては,「犯人を捕まえてほしい/処罰してほしいから」が最も多く72.7%,次いで「再発を防ぐため」65.5%,「犯罪は届け出るべきである/重大な事件である」58.2%と続いている。他方,警察に届け出なかった理由の中で最も多かったのは「それほど重大な事件ではない/損失がない」の51.6%であった。

キ 不法侵入未遂

 本調査では,前記の不法侵入とは別に,「誰かがあなたの家又はアパートの中に侵入しようとした形跡がありましたか。例えば,鍵やドア,窓が壊されていたり,鍵の周りに傷跡などがありましたか。」と質問し,これを不法侵入未遂の被害としている。過去5年間に不法侵入未遂の被害に遭ったことがあるのは2.6%(58世帯),1999年に被害に遭ったのは0.8%(17世帯)であり,そのうち1999年に2回以上被害に遭ったのは41.2%(7世帯)であった。
 過去5年間に不法侵入未遂の被害に遭ったことがある世帯における,直近の被害についての申告率は,36.2%であった。

(3) 「個人犯罪被害」の実情

ア 強盗

 本調査では,「暴力又は脅迫により何かを盗まれたことがありますか。また,誰かに暴力や脅迫によって何かを奪われそうになったことがありますか。」と質問し,これに該当する体験を強盗の被害として扱っている。過去5年間に強盗の被害に遭ったことがあるのは0.6%(13人),1999年に被害に遭ったのは0.0%(1人)であった。
 次に,過去5年間に強盗の被害に遭ったことがある者に対して,直近の被害について質問した結果,この事件で,実際に何かを取られたものは53.8%であった。「犯人」の人数は3人以上だったとするものが最も多く,38.5%となっている。「犯人」との関係については,「犯人」は顔も名前も知らない相手だったとするものが最も多く,38.5%であった。さらに,申告率は30.8%であったが,警察に届け出た理由としては,「財産を取り戻すため」,「犯人を捕まえてほしい/処罰してほしいから」,「再発を防ぐため」,「犯罪は届け出るべきである/重大な事件である」が,それぞれ50.0%であった。他方,警察に届け出なかった理由の中で最も多かったのは,「それほど重大ではない/損失がない」の83.3%であった。

イ 窃盗

 本調査では,「窃盗は,暴力を伴う強盗とは異なり,スリ,又は財布,衣類,宝石,スポーツ用具を盗むことなど様々です。これらは職場,学校,飲食店,公共の交通機関,海岸,町中などで起こり得ます。すでにお聞きした家での被害を除いて,過去5年間にあなた自身がこれらの盗難の被害者となったことがありますか。」と質問し,これに該当する体験を窃盗の被害として扱っており,自動車盗等,前記で世帯犯罪被害として取り上げたものを除く,不法侵入を伴わないものを窃盗の被害として定義している。過去5年間に窃盗の被害に遭ったことがあるのは2.7%(60人),1999年に被害に遭ったのは0.5%(10人)であった。
 過去5年間に窃盗の被害に遭ったことがある者における,直近の被害についての申告率は,43.3%であった。

ウ 性的暴行

 本調査では,「人は,しばしば性的な目的のために他人を掴んだり,触ったり,暴行を加えたりすることがあり,それが実に許し難い場合があります。これは家又はその他の場所,飲食店,町中,学校,公共の交通機関,映画館,海岸,職場などで起こり得ます。過去5年間に,あなたはこれらの行為による被害を受けたことがありますか。ゆっくり考えてください。家庭内の性的暴行を含めてお考えください。」と質問しており,いわゆる痴漢やセクハラを含む,性的な暴力を受けた体験を,性的暴行の被害として扱っている。なお,本項目では,質問対象を女性のみとしている。過去5年間に性的暴行の被害に遭ったことがあるのは,女性回答者の2.7%(31人),1999年に被害に遭ったのは1.0%(11人)であり,そのうち1999年に2回以上被害に遭ったのは54.5%(6人)であった。
 次に,過去5年間に性的暴行の被害に遭ったことがある者に対し,直近の被害について質問した結果,被害に遭った場所は,居住する市町村内が最も多く(29.0%),次いで自宅付近(22.6%),国内(22.6%),職場(19.4%)となっている。この事件で,「犯人」が複数であったものは,16.1%である。「犯人」との関係については,「犯人」が,顔又は名前を知っている相手であったものは22.6%であるが,そのうち42.9%が職場関係者であった。また,この事件の犯行態様について,「事件は,レイプ(強制的なセックス),レイプ未遂,強制わいせつ,又はあなたにとって許し難い行為(痴漢,セクハラなど)のどれに当てはまりますか。」と質問したところ,「レイプ未遂」としたものが3.2%,「強制わいせつ」が6.5%,「許し難い行為(痴漢,セクハラなど)」としたものが83.9%であり,「あなたは事件を犯罪であると考えますか。」と質問したところ,「はい」と回答したものが71.0%であった。
 この事件の申告率は9.7%であったが,警察に届け出た理由としては,「犯人を捕まえてほしい/処罰してほしいから」が最も多く,100.0%であった。他方,警察に届け出なかった理由の中で最も多かったのは,「それほど重大ではない/損失がない」の37.0%で,次いで「警察は何もできない/証拠がない」の22.2%,「(復讐の恐れから)あえてしない」の14.8%であった。

エ 暴行・脅迫

 本調査では,「家又は飲食店,町中,学校,公共の交通機関,海岸,あなたの職場などで,本当に恐怖を感じるような暴行や脅迫を受けたことがありますか。家庭内暴力を含めてください」と質問しており,男性に対する性的暴力の被害も含め,これに該当する体験を暴行・脅迫の被害として扱っている。過去5年間に暴行・脅迫の被害に遭ったことがあるのは2.1%(47人),1999年に被害に遭ったのは0.4%(9人)であり,そのうち1999年に2回以上被害に遭ったのは22.2%(2人)であった。
 次に,過去5年間に暴行・脅迫の被害に遭ったことがある者に対し,直近の被害について質問した結果,被害に遭った場所は自宅としたものが最も多く(27.7%),次いで自宅付近(19.1%),職場(14.9%)と続いている。この事件で,「犯人」が複数であったものは25.5%である。「犯人」との関係については,「犯人」が,顔を知っている相手であったものは10.6%,名前を知っている相手であったものが25.5%であった。名前を知っている相手のうち,33.3%は,配偶者を含む家族であった。また,「あなたは事件を犯罪であると考えますか。」と質問したところ,「はい」と回答したものが46.8%であった。
 この事件における犯行態様について,「実際に何が起こったのか教えていただけますか。脅迫されましたか,暴力をふるわれましたか。」と質問したところ,「脅迫されただけ」としたものが55.3%,「暴力をふるわれた」が21.3%であった。「脅迫されただけ」及び「暴力をふるわれた」と回答したもののうち,犯人が凶器を持っていたものは8.3%であった。「暴力をふるわれた」と回答したもののうち,回答者がけがをしたのは50.0%であった。
 この事件の申告率は21.3%であったが,警察に届け出た理由は,「再発を防ぐため」,「助けを求めるため」が最も多く,50.0%であった。他方,警察に届け出なかった理由の中で最も多かったのは「それほど重大ではない/損失がない」の32.1%で,次いで「警察は何もできない/証拠がない」の25.0%であった。

(4) 罪種別被害率

 V-1図は,「世帯犯罪被害」及び「個人犯罪被害」のそれぞれについて,罪種別に,過去5年間及び1999年1年間に,それぞれ1回以上犯罪被害に遭ったことの有無(被害率)を示したものである。

V-1図 罪種別過去5年間及び1999年の被害率

 「世帯犯罪被害」の中では,過去5年間の数値でも,1999年1年間の数値でも,自転車盗の被害率が最も高く,自動車損壊,バイク盗が続いている。過去5年間に,自転車盗については,自転車を保有している世帯の4世帯に1世帯,バイク盗については,バイク保有世帯の8世帯に1世帯,不法侵入については,25世帯に1世帯が,それぞれ被害に遭っていることになる。
 一方,「個人犯罪被害」の中では,窃盗や暴行・脅迫に比べると,性的暴行の被害率が高い傾向がうかがえるものの,全般的に被害率は低い。1999年1年間の数値を見ると,全罪種において,1999年1年間で被害に遭ったのは100人に1人以下であったことになる。過去5年間の数値で,最も被害率が高いのは窃盗と性的暴行であるが,これらについても,過去5年間でそれぞれの被害に遭ったのは,およそ37人に1人であったことになる。

(5) 罪種別申告率

 V-2図は,「世帯犯罪被害」,「個人犯罪被害」のそれぞれについて,罪種ごとに過去5年間にこれらの犯罪被害に遭った世帯及び個人につき,直近の被害に関する申告率を見たものである。

V-2図 罪種別申告率

 「世帯犯罪被害」は,全体的に,「個人犯罪被害」よりも申告率が高く,自動車盗,バイク盗及び不法侵入においては60%を超えている。自動車損壊以外の「世帯犯罪被害」に遭った世帯では,少なくとも3世帯に1世帯以上は,警察に被害を届け出ていたことになる。
 「個人犯罪被害」では,最も数値の高い窃盗においても,申告率は50%を下回っており,性的暴行では10%未満である。窃盗以外の「個人犯罪被害」に遭った者のうち,警察に被害を届け出たのは3人に1人を下回っていたことになる。

(6) 犯罪に対する不安と防犯

 本調査では,犯罪に対する不安と警察の防犯活動に関する認識を,以下の項目で調査している。

ア 夜間の一人歩きに対する不安

 住んでいる地域を暗くなってから,一人で歩くことの安全性に関する認識について,「暗くなった後,あなたの住んでおられる地域を一人で歩いているとき,どの程度安全であると感じますか。」と質問したところ,「とても安全」としたものは12.4%,「まあまあ安全」としたものは65.2%であり,「やや危ない」としたものは19.9%,「とても危ない」としたものは2.5%であった。

イ 自宅に夜間一人でいることの不安

 暗くなってから一人で自宅にいることの安全性に関する認識について,「暗くなってから家に一人でいるとき,どの程度安全であると感じますか。」と質問したところ,「とても安全」としたものは23.9%,「まあまあ安全」としたものは67.3%であり,「やや危ない」としたものは8.1%,「とても危ない」としたものは0.7%であった。

ウ 不法侵入の被害に遭う不安

 自宅において不法侵入の被害に遭う不安について,「今後12か月の内に,誰かがあなたの家に侵入しようとすることについて考えてみてください。それは非常にあり得ますか,あり得ますか,それともあり得ませんか。」と質問したところ,「非常にあり得る」としたものは1.9%,「あり得る」としたものは32.0%であり,「あり得ない」としたものは52.8%であった。