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 平成12年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/3 

3 新収容者の特質

(1) 入院時の年齢

 平成2年以降の新収容者の年齢層別構成比の推移を見たものが,III-41図である。年長少年が最も高い比率を占めていたが,近年は,中間少年の比率が上昇し,11年には,年長少年の比率をわずかながら上回った。

III-41図 少年院新収容者の年齢層別構成比の推移

 平成11年の新収容者について,入院時の年齢を男女別に見ると,男子は17歳(24.8%)が最も多く,次いで,18歳(22.9%),19歳(20.5%),16歳(18.3%)の順となっており,女子は16歳(23.0%)が最も多く,次いで,17歳(20.6%),18歳(17.6%),19歳(16.8%)の順となっている(巻末資料III-14参照)。

(2) 外国人少年

 平成11年の新収容者中,外国人で日本人と異なる処遇を必要とする者として生活訓練課程(G2)の対象となった少年(以下「外国人少年」という。)は23人(全員男子)であり,国籍別に見ると,ブラジル(19人)が最も多い。年齢別に見ると,最も多いのは19歳(6人)であり,次いで17歳及び18歳(各5人),15歳(4人)の順となっている。また,非行名別に見ると,最も多いのは窃盗(15人)であり,次いで強盗(6人),傷害及び覚せい剤取締法違反(各1人)となっている(矯正統計年報による。)。 外国人少年については,従来,男子は久里浜少年院,女子は榛名女子学園にそれぞれ収容していたが,平成11年12月からは,平易な日本語による指導の理解にも困難を来す者など,特別の配慮を要する者を除き,送致家庭裁判所の所在する矯正管区管内の少年院に収容することとなった(ただし,女子については,対象施設を全国で3庁指定し広域収容としている。)。これらの施設においては,外国人少年に対し,それぞれの必要に応じて日本語学習指導を行うほか,問題行動指導や,帰住問題を含めた進路指導等を行っている。

(3) 非行名

 平成元年,6年及び11年の新収容者の非行名別構成比を見ると,III-42図のとおりである。窃盗の比率は,いずれの年次においても最も高いものの,低下傾向にあり,傷害・暴行,強盗及び恐喝の比率が高くなっている。

III-42図 少年院新収容者の非行名別構成比

 平成11年の新収容者について,非行名を男女別に見ると,男子では,窃盗(33.7%)が最も高く,次いで,傷害・暴行(13.4%),道路交通法違反(11.1%)の順となっており,女子では,覚せい剤取締法違反(30.6%),窃盗(15.6%),虞犯(13.6%)の順である(巻末資料III-15参照)。
 III-43図は,最近10年間における,殺人,強盗及び傷害事犯の新収容者の人員及び年齢層別構成比の推移を見たものである。殺人事犯は,平成5年,6年及び10年を除き,20名台である。強盗事犯は,8年,9年と急増したが,10年,11年は減少している。年齢層別に見ると,5年を除き,中間少年がほぼ半数を占めている。傷害事犯は,7年以降増加傾向にあったが,11年はやや減少している。年齢層別に見ると,9年以降は,中間少年の比率が低下し,年少少年及び年長少年の比率が上昇する傾向にある。

III-43図 殺人・強盗・傷害事犯別少年院新収容者の人員及び年齢層別構成比の推移

(4) 保護処分歴

 平成元年,6年及び11年の新収容者の保護処分歴別構成比を見ると,III-44図のとおり,保護観察等の保護処分歴のない初入者の比率が上昇している。

III-44図 少年院新収容者の保護処分歴別構成比

 平成11年の新収容者のうち,初入者は85.5%(男子84.8%,女子92.8%),保護処分歴のない初入者は40.2%(同37.9%,63.0%)である(矯正統計年報による。)。

(5) 保護者

 平成元年,6年及び11年の新収容者の保護者別構成比を見ると,III-45図のとおりであり,保護者が実父母である者の比率は,50%前後を占めている。

III-45図 少年院新収容者の保護者別構成比

 平成11年の新収容者のうち,保護者が実父母である者の比率は51.8%(男子52.7%,女子43.1%)と半数以上であり,男子と比べて女子の比率は低い。
 また,非行時の居住状況について,家族と同居していた者の比率は,平成元年には62.9%(男子65.3%,女子44.4%)であったが,11年は77.0%(同78.5%,61.8%)と,男女共に上昇している(矯正統計年報による。)。

(6) 薬物等使用関係

 平成元年,6年及び11年の新収容者について,非行時に薬物等を使用していた者の構成比を見ると,III-46図のとおりであり,非行時に薬物を使用していなかった者の比率が上昇している。

III-46図 少年院新収容者の薬物等使用関係別構成比

 平成11年の新収容者のうち,非行時に薬物等を使用していた者の比率は,25.1%(男子22.5%,女子51.2%)である。さらに,その使用薬物の種類を男女別に見ると,男子では有機溶剤(15.5%),覚せい剤(5.7%)の順,女子では覚せい剤(33.2%),有機溶剤(17.2%)の順となっている(矯正統計年報による。)。

(7) 不良集団関係

 平成元年,6年及び11年の新収容者について,不良集団との関係を見ると,関係のある者の比率は,いずれの年次も約60%と,ほぼ横ばいで推移しており,所属不良集団のうちでは,暴走族の比率が上昇している。
 平成11年の新収容者のうち,不良集団に関係のある者の比率は57.9%(男子59.5%,女子42.2%)である。その所属不良集団を見ると,男子は暴走族(29.0%),地域不良集団(23.5%),不良生徒・学生集団(3.5%)の順,女子は地域不良集団(23.5%),暴走族(8.4%),暴力団(7.2%)の順となっている(矯正統計年報による。)。

(8) 共犯者

 平成元年,6年及び11年の新収容者の共犯者数別構成比を見ると,III-47図のとおりであり,単独の比率が低下し,共犯者4人以上の比率が上昇している。

III-47図 少年院新収容者の共犯者数別構成比

 平成11年の新収容者のうち,共犯者がいる者の比率は70.6%(男子71.7%,女子59.5%)である。これを非行名別に見ると,強盗(93.9%)が最も高く,次いで,暴力行為等処罰法違反(90.3%),公務執行妨害(85.4%),強姦(83.5%),道路交通法違反(82.7%)となっている。また,共犯者との関係については,遊び仲間の比率が最も高く,共犯者がいる者の56.0%(男子55.5%,女子61.5%)を占めている(矯正統計年報による。)。

(9) 教育程度

 平成元年,6年及び11年の新収容者の教育程度別構成比を見ると,III-48図のとおりである。中学卒業が最も比率が高いものの,低下傾向にあり,高校中退の比率が上昇している。

III-48図 少年院新収容者の教育程度別構成比

 平成11年の新収容者については,中学卒業が42.7%(男子42.9%,女子40.4%)と最も高く,次いで,高校中退が34.0%(同33.9%,35.6%),中学在学が9.3%(同8.8%,14.2%),高校在学が9.1%(同9.4%,6.2%)の順となっている(矯正統計年報による。)。

(10) 職業

 平成6年以降の新収容者の職業別構成比を見ると,無職の比率は,いずれの年次も約50%と,ほぼ横ばいで推移しており,学生は,上昇傾向にある。
 平成11年の新収容者については,無職者が49.9%(男子48.7%,女子61.2%),学生・生徒が18.5%(同18.2%,21.4%)であり,職業の中では,男子は建築関係の技能工等(16.5%),女子は接客関係のサービス業(10.4%)の比率が高い(矯正統計年報による。)。