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 昭和38年版 犯罪白書 第四編/第三章/二/8 

8 麻薬受刑者の入所前の状況

 次に麻薬受刑者の入所前の生活状況をみると,まず居住条件では,間借り,アパート住まいのものが最も多く(四五・五%),次に自家居住(二一・四%),借家住まい(一四・二%)の順であるが,各群別に見ると,自家居住者では使用者が最も多く(二六・九%),間借り,アパート居住者は使用密売者に多く(四九・〇%),借家住まいではわずかではあるが密売者の比率(一七・一%)が最も高い。さらにこれと関連して,その同居家族の状況をみると,父母その他の近親者と同居している者は使用者が最も多い(四二・四%)のに対し,他の二群はいずれも三〇%以下であるが,配偶者(内縁,同せいを含む)との同居者では,逆に使用者が最も低い率を示し,また単独居住者の場合も同様である。以上述べた二つの状況を合わせて考えると,使用者群には自家で父母達とともに生活している比較的余裕のある生活状況の者が多いとみることもできそうである。しかしまた逆に考えると,独立生活ができないため,いつまでも親や家族に依存している者が多いともいえよう。
 次に入所前の就職状況では,なんらかの定職についていた者が,使用者では約五〇%,密売者では約四〇%,使用密売者では約三〇%と,それぞれ約一〇%の差で使用密売者が最も低率を示している。密売関係者には,密売という収入源があるので定職のない者が多くても不思議ではないが,問題なのは,使用だけの者に,なお半数の定職につかない者が見いだせることであろう。この中には,かなりの資産を有する者も含まれているであろうが,大部分の者はなんらかの不正手段で麻薬代をかせいでいるとみるほあはないであろう。