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 昭和38年版 犯罪白書 第四編/第三章/二/7 

7 その他の生活歴

 麻薬受刑者の就職歴をみると,未就職者はきわめて少なく三・五%で,あとはすべて就職経験をもっているのであるが,三回以上の転職経験を持つ者が四五%あり,この中には五回以上の転職者一三%が含まれている。
 次に結婚歴を見ると,未婚者は約一五%で,他はいずれも既婚者または結婚の経験をもつ者であるが,その中で結婚回数三回以上(同せいを含む)の者が総数では約一一%みられ,使用密売者では一六%を占めている。
 生育歴では,少年時代に問題行動のあったものが,使用密売者では約四二%で,密売者より一〇%強上回っている。また少年院の経験を有する者も使用密売者に最も高く一八・五%で,全受刑者(昭和三六年新受刑者)での比率一三・三%からみるとかなり高率であるといえよう。
 麻薬受刑者のうちで覚せい剤使用の経験を有する者は,やはり使用密売者が最も多く,六六・四%を示し,使用者も五三・九%でこれに次いでいる。これに対して,密売者は二九・二%にすぎない。睡眠剤常用経験者も使用密売者と使用者がそれぞれ一四%台であるのに対し,密売者は五・五%である。覚せい剤中毒から麻薬し癖に転向する話は,よく耳にするところであるが,この結果からもある程度裏付けられると思われる。睡眠剤は麻薬の禁断時におこる不眠症のために常用しはじめた場合が多く,むしろ麻薬し癖の副産物とみる方が妥当であろう。
 入墨は麻薬受刑者の四〇%が入れており,女子の場合も,その二〇%強が入れている。各群を比較すると,わずかの差ではあるが,やはり使用密売者が最高率を示している。