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1 処理状況 昭和三三年から三七年までの五年間における麻薬関係事犯の処理状況は,IV-12表のとおりである。
IV-12表 麻薬関係法令違反の処理別人員等(昭和33〜37年) これによると,昭和三四年を例外として,逐年起訴数が増加しているが,全処理人員に対する起訴率は,昭和三五年の七九・一%を最高として,昭和三七年は若干低下し,七六・〇%となっている。この起訴率は,あへん法違反,大麻取締法違反等比較的に起訴率の低いものを含めた平均値であって,麻薬取締法違反のみについてみると,IV-13表のとおりである。IV-13表 麻薬取締法違反の処理別人員等(昭和33〜37年) すなわち,昭和三三年の起訴率は七九・五%であるが,昭和三四年に七四・六%に低下したのを別として,昭和三五年以降は,逐年八二・二%,八三・三%,八三・四%と上昇しており,しかも,起訴のうち公判請求の占める割合は例年九五・一%から九七・三%にまで達している。これは,他の罪種には見られないきわめてしゆん厳な処理であって,道交違反を除く全事件の起訴率が最近五か年間四六・一%ないし五六・九%,刑法犯が四七・九%ないし五七・九%,凶悪犯とみられる殺人においてさえ六九・二%ないし七二・五%,強盗が六三・九%ないし七三%となっているのに対比すれば,容易に理解できるであろう。もっとも,麻薬犯罪者は常習牲が顕著であり,したがって,受理人員中麻薬関係事犯の前科,前歴を有するものが少なくないこと,すなわち再犯者が多いことも起訴率を高めることの一因と思われる。法務省刑事局の調査によると,東京,横浜,大阪,神戸,福岡の五検察庁において,昭和三六年と三七年の二か年間に受理したヘロインに関する事犯の受理人員は四,三六二名であり,そのうち,麻薬関係事犯の検挙歴のあるものが一,〇六二人(うち,受理当時中毒症状にあったもの七四五人),麻薬関係事犯の前科があるものが一,三三四人(うち受理当時中毒症状にあったもの一,〇九三人)に上っている。したがって,この種事犯においては五四・九%までが,いわゆる前科・前歴を有する者によって占められていることが知られるのである。 次に,昭和三五年中および昭和三六年中に既済となった麻薬取締法違反被疑者の身柄の拘束関係についてみると,IV-14表のとおりである。 IV-14表 既済となった麻薬取締取法違反被疑者の逮捕,勾留の人員(昭和35,36年) すなわち,処理総数の六五・五%ないし七五・八%は警察等から身柄送致となった事件であり,また六三・一%ないし七三・五%は勾留されている。そして,この勾留されたもののうち八三・八%ないし八五・六%が勾留のまま公判請求されているのである。なお,警察等からの身柄送致人員と,勾留人員との間に多少の開きがみられるが,昭和三六年についてみると,検察官が勾留請求をなさずに釈放したもの二六人,勾留請求をなすまでもなく証拠十分として,逮捕中に公判請求したもの三六人,同じく逮捕中に家庭裁判所に送致したもの七人となっており,この種事犯において,検察官が釈放する率は,他の一般刑法犯に比してきわめて低いことがうかがわれる。 |