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 昭和38年版 犯罪白書 第四編/第一章/一/1 

第四編 麻薬犯罪とその対策

第一章 麻薬犯罪の概況

一 麻薬犯罪の現況と問題点

1 麻薬犯罪の現況

 昭和三七年中に,麻薬犯罪によって警察に検挙された人員は二,八〇二人で,これは同年の刑法犯および特別法犯による検挙人員総数との比較においてみると,一万人に対し約五人の割合にすぎず,まことに微々たる数である。検察庁の受理人員でみても,昭和三七年に全国の検察庁で新たに受理した麻薬関係事犯者は三,八〇〇人にすぎず,また,矯正施設収容者についてみても,昭和三六年一二月末日現在で,全国の矯正施設に収容されている麻薬事犯受刑者は一,一六二人であって,これは同時点における全受刑者のようやく二%に達するにすぎない。
 右のような数字をことさらに取り上げた理由は,社会現象としての麻薬犯罪の現況を,検挙,検察,矯正の全体のわく組みの中で,正当に位置づけしてみようとしたためでもあるが,さらにまた,麻薬犯罪の質的特性からして,このように表面にあらわれた数の背後にこそ,より重要な問題が潜んでいるのだということを,とくに指摘したいがためにほかならないのである。