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 昭和38年版 犯罪白書 第三編/第五章/三/2 

2 保護観察所の予防活動

 地域社会の犯罪予防活動に協力する公私の機関は多いが,保護観察所はそのうちでも,有力な国家機関の一つである。
 保護観察所は,犯罪者予防更生法に基づいて,保護観察を実施し,犯罪や非行におちいった少年の改善更生を図り,再犯防止の役割を果たすほか,「犯罪の予防を図るため,世論を啓発指導し,社会環境の改善に努め,及び犯罪の予防を目的とする地方の住民の活動を助長する」(犯罪者予防更生法第一八条第二項)事務をつかさどっている。
 すなわち,保護観察所は,犯罪予防のため地域社会に呼びかけ,地域社会の浄化に努め,地域社会の組織化を試みているが,それは,具体的には保護観察を行なうのと同じように,保護観察官と保護司とによって行なわれている。
 保護司は,もともと地域社会の中で生活している民間人であるから,地域社会の諸事情に通じており,またその社会的信望のゆえに,地域の防犯協会,PTA,婦人会,青年団体等の諸団体に関係をもち,あるいはみずからその有力メンバーとなって,保護観察所の予防活動を浸透させ,地域浄化活動を活発にしている。また,保護司が保護区ごとに自主的に結成している保護司会は,予防活動のため外部機関,諸団体等と協議研究の機会をもっているが,その回数,活動範囲はともに逐年増加拡大していることがうかがわれる。
 保護観察所が行なっている犯罪予防活動の一例として,大阪保護観察所が昭和三八年二月一日大阪市立愛隣会館内に設置した大阪第二青少年更生保護相談室について述べよう。
 この相談室は,「関係機関,団体と協力し,大阪市西成地区釜が崎地域の少年非行防止と,犯罪前歴者の改善更生を図るため,更生保護相談員を常駐させ,適切な指導と必要な援護措置を積極的に行ない,もって同地域の社会浄化と犯罪予防に寄与する」ことを目的としたもので,相談室には専任の相談員一名(常駐),補佐員二名(保護司の輪番駐在),保護観察官一名(必要に応じて出張)が置かれ(イ)非行青少年ならびに犯罪前歴者の身上相談(不良交友の調整,生活指導,その他犯罪防止の措置)(ロ)問題家庭の調整(ハ)在院在監者の家族の生活相談(ニ)心身鑑別のあっ旋(ホ)その他非行防止に必要な保護相談等に応ずることになっている。
 これは,昭和三五年六月大阪市社会福祉会館内に設けられた大阪青少年更生保護相談室の成果にかんがみ設置されたもので,その活動には大きな期待が寄せられている。