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 昭和38年版 犯罪白書 第三編/第三章/二/2 

2 職業補導

 矯正統計年報によれば,昭和三六年少年院新収容者の職業別人員はIII-47表のとおりで,収容少年の半数以上は無職者であって,職業に関する知識や理解に乏しく,また職業の経験を有する少年の多くは単純労働で,なんらかの職業的技能を有するものはきわめて少ない。

III-47表 少年院新収容者の職業別人員(昭和36年)

 ここに,かれらが出院した時に,職業生活に適応できず,再び非行におちいる危険性がある。したがって,かれらに対しては,単なる技能訓練では不十分であって,まず労働を重んずる態度と習慣を養うことを主眼とし,職業生活に必要な知識と技能を授けることによって,出院後の職業選択の能力を伸長し,さらに進んで,独立自活の生活ができるように指導している。すなわち,各施設ともその実情に応じ,一ないし数種の,重点的に整備された訓練課程を用意して,熟練技能的な職業補導を行なうとともに,若干の種目を指導課程として用意し,一般的な職業適応性の増大をはかるようつとめている。
 昭和三七年の職業補導種目別の実施施設数と補導人員はIII-48表のとおりであって,男子少年院では,木工,金工,洋裁,竹工,農耕,ラジオ,印刷,自動車等を,女子少年院では,洋裁,和裁,手芸,編物,孔版,農耕,サービス業などを主として実施している。

III-48表 少年院職業補導種目と補導人員等(昭和37年)

 収容少年が,在院中になんらかの職業に関する資格や免許を取得することは,出院後の就職を容易にし,また少年に自己の知識や技能に自信をもたせる意味で,その更生上きわめて意義のあることは,明らかであるう。III-49表は資格,免許取得の人員等を示したものであるが,昭和三六年には受験者三,四九二名であって,前年に比し著しく増加し,種目別には珠算が大半であるが,自動車,ボイラー,簿記等もしだいに活発化しつつあることが認められる。

III-49表 資格・免許取得の人員等(昭和35,36年)

 在院中に修得した職業補導の種目と出院後従事する職種との関連については,III-50表のとおりであって,木工,金工,自動車,理容等専門の知識,技能を修得したものは,出院後も関連した職種につきやすいようである。なおこの表で注目されることは,出院時においていまだ就職先のきまっていないものが二八・九%もあることである。少年を更生させ再非行におちいらせないためには,出院して直ちに適当な職につかせることが望ましいが,この意味から,少年院で従来実施してきた補導職種の再検討なり,職業指導のなおいっそうの充実が期待される。

III-50表 在院中の職業補導種目と出院後の職種との関連状況(昭和36年)

 教科教育および職業補導に関連して,公費による通信教育制度がある。昭和三六年度におけるその実施状況はIII-51表のとおりで,同年度内受講者の総数は,一,七二八名,このうち,年度内に修了したものは,退院,仮退院等により中止したものを除き,一,〇四二名である。種目別にみると,自動車,孔版,洋裁,ラジオ,高校コース等が多く,この制度を活発に利用する努力がなされていることが看取される。

III-51表 公費通信教育実施人員等(昭和36.4.1〜37.3.31)