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4 上訴 第一審判決に対する控訴率は,昭和三三年頃までは逐年減少の傾向にあったが,昭和三四年から再び増加の傾向をみせている。II-37表によると,控訴率は簡裁事件が地裁事件よりも著しく低い。上告率はきわめて高く,三四・七%ないし四二・七%を占めている。控訴判決に対し,その約四割が最高裁判所に持ち込まれる現状であってみれば,最高裁判所の負担が大となることは当然であろう。
II-37表 上訴率の推移(昭和30〜35年) 次に,控訴申立人別にその比率をみると,II-38表のとおりである。この表によると,総数の九〇・五%ないし九一・九%までが被告人側からの控訴であり,検察官の控訴は五・九%ないし七・二%で,双方からの控訴を合計しても一〇%に満たない。さらに上告になると,この比率の差は顕著となり,最高裁判所の新受事件人員は,昭和三二年が四,二四八人,同年以降毎年三千数百人を算しているが,検察官上告数は,昭和三二年は一八人,以下昭和三三年が一四人,三四年は三八人,三五年は一人,三六年は四〇人といった程度で,九九%以上が被告人側の上告によるものである。II-38表 控訴申立人別の数と百分率(昭和32〜35年) 次に,昭和三五年における控訴の理由を,申立人別に示すとII-39表のとおりである。これによると量刑不当が圧倒的に多く,事実誤認がこれにつぎ,法令適用の誤りとつづいている。これは,わが国の法定刑は幅が広く,裁判官の裁量による範囲が大であるため,量刑を争う余地が多いことによる結果であろう。II-39表 申立人別の控訴理由別人員(昭和35年) 最後に,上訴の結果であるが,昭和三二年以降の状況はII-40表・41表のとおりである。II-40表 控訴審終局被告人の終局区分別人員と率(昭和32〜35年) II-41表 上告審終局被告人の終局区分別人員と率(昭和32〜35年) すなわち,昭和三五年の控訴棄却率は五八・四%である。これに控訴取下げの一六・一%を加えた七四・五%は,控訴の主張が認められなかったものといえる。これは全控訴申立事件についての裁判結果であるが,検察官控訴の同年の控訴棄却率は三二・一%であり,被告人側の控訴が棄却される率より非常に低くなっている。また,上告棄却は八四・五%,上告取下げが一三・九%,その合計は九八・四%にも達し,破棄率は,わずかに一・六%にすぎない。このことと,上告申立ての九九%以上が被告人側の上告であることとを考えあわせると,被告人側が行なう上訴申立,特に上告申立には,理由のないものが多く,これが裁判所の負担を加重せしめ,ひいては,全般の訴訟遅延の原因の一つともなっているのではないかと思われる。 |