前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
3 公判審理 現行刑事訴訟法は,公判中心主義,弁論主義をとっており,書面の証拠能力を制限し,直接に証人の証言を聞く等,直接証拠主義の原則に立っているため,公判審理は,旧法当時に比し,丁重をきわめることとなり,いきおい,その審理期間も長くなり,ひいては「裁判の遅延」の一因ともなりかねない。その対策の一つとして,裁判官,検察官,弁護士の三者からなる,第一審強化対策協議会が各地方裁判所ごとに組織され,主として公判審理の充実と訴訟促進の方策が研究され,逐次これを実行に移しつつある。
まず起訴の日から第一審判決までの審理期間をながめてみよう。II-33表・34表は起訴から第一審の終局判決までの期間を,年度ごとに百分率にして,地方裁判所と簡易裁判所とを合計したものと,地方裁判所のみのものとに分けて示したものであるが,各年とも,総数の八〇%以上が,起訴後六か月以内に判決が言い渡されている。地方裁判所と簡易裁判所との合計と,地方裁判所のみのものとを比較すると,前者は一か月以内,二か月以内の率が比較的高いのに対し,後者は,三か月以内,六か月以内の率が高くなっている。地方裁判所が簡易裁判所に比し,事件の内容が複雑で,審理に時間を要することからくる当然の結果である。そして,このことはさらに,地方裁判所合議部の審理期間についてみればいっそう顕著となる。すなわち,II-35表によると,一か月以内というのは一ないし二%と低く,六か月以内が約三〇%を占め,六か月以上を要したものが,各年とも三三%以上を占めている。特に,三年を越えるものが,昭和三三年に六・六%,昭和三四年に五・六%,昭和三五年に六・六%,昭和三六年に五・三%となっており,あまり少なくないのが注目される。 II-33表 第一審(地方・簡易裁判所)終局人員の審理期間別百分率(昭和32〜36年) II-34表 地方裁判所における審理期間別百分率(昭和32〜36年) II-35表 地方裁判所合議部の終局人員の審理期間別百分率(昭和33〜36年) 次に,第一審(地方裁判所および簡易裁判所)における,公判開廷回数をみると,II-36表のとおりである。II-36表 第一審公判開廷回数別百分率(昭和32〜36年) 本表は公判期日外における証人調べ期日も含み,公判は開廷したが,実体的審理にはいることなくして延期された場合は含まれていないが,総件数の六六・五%ないし六八・五%が,三回以内の開廷で終っている。一〇回以上の開廷事件が,毎年五%内外あって減少しないが,この種の難事件については,いわゆる継続審理が適用されねばならぬものであろう。 |