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2 起訴後の勾留と保釈 裁判所は,被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,被告人が定まった住居をもたないとき,罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき,あるいは逃亡し,または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときは,これを勾留することができる(刑訴第六〇条)。
勾留期間は,公訴提起の日から二か月間であるが,特に継続して勾留する必要がある場合は,一か月ごとに更新される。しかし特定の場合以外は,この更新は一回に限られている。 最近五年間の各年末現在における勾留中の被告人の数と,その勾留期間を百分率で示すと,II-29表のとおりである。 II-29表 年末現在勾留中の者の勾留期間別百分率(昭和32〜36年) これによると,年末現在勾留人員は,昭和三六年が最近五年間で最も少なく,勾留期間二か月以内のものが六三・五%を占め,これに三か月以内のものを加えると七四・七%となる。この率がもっとも低いのは,昭和三五年であるが,その他の年では,いずれも七割以上が,刑訴法の定めた三か月という原則に従っており,残りの二割余が,例外的に三か月以上の勾留をうけたことになる。しかし,そのうち一年を越えるような特に長い勾留は,きわめて少なく,昭和三六年では三・二%,最も率の高い昭和三五年でも,五・三%にとどまっている。次に保釈についてながめてみよう。勾留されている被告人は,保釈によって,一定の条件のもとに釈放される。この保釈には,保釈の請求があったとき,必ず保釈を許可しなければならないもの(必要的保釈または権利保釈という。刑訴第八九条)と,必要的保釈には該当しないが,裁判所が適当と認めた場合に保釈を許すところの裁量保釈,および保釈の請求はないが,裁判所が職権により保釈を許すところの職権保釈,さらに,不当に長い勾留の場合に,請求をまってなされる刑訴法第九一条による保釈がある。 昭和三三年から昭和三五年までの三年間に,通常第一審の判決のあった被告人のうち,起訴時に勾留中であったもの,および第一審判決までに保釈によって釈放されたもの等の状況をみると,II-30表のとおりである。 II-30表 通常第一審終局被告人の保釈状況(昭和33〜35年) すなわち,昭和三五年は第一審の判決があった一〇六,一八〇人のうち,起訴のとき勾留中であったものが七五・一%の七九,七四三人で,そのうちの二七・二%の二一,六九八人が保釈によって釈放されている。この保釈の率は,昭和三三年は二二・六%,昭和三四年は二四・四%で,逐年増加の傾向を示し,起訴時勾留中の率が年々減少しているのと対比し,興味深い現象である。さらにまた,再保釈の率も昭和三四年は前年に比し相当大幅に増加し,昭和三五年はわずかに減少したものの,なお二九%を占めていることは注目すべきであろう。 保釈によって釈放されるためには,保釈保証金を納付しなければならない。この金額は,犯罪の性質および情状,証拠の証明力ならびに被告人の性格および資産などを考慮して裁判所が決定するのであるが,要するに,被告人が逃走することを防ぎ,公判廷へ出頭することを確保するに足りる相当な額であることが必要である。いま昭和三一年以降三五年に至る五か年間の,保釈保証金の金額別の分布をみると,II-31表のとおりである。 II-31表 保釈保証金額別百分率(昭和31〜35年) この表によると,比較的低額のものが順次減少し,高額のものが逐年増加していることがわかる。その中間にある一万円以上五万円未満は,各年度とも,総数中に占める率が最も高く,その率は昭和三三年まで逐年増加し八一・一%に達したが,その後は再び減少している。このように保釈保証金がしだいに高額になってゆくのは,国民経済生活の向上と物価の値上がりが反映した結果であろう。なお,保釈中に逃走したために公判が開かれず,事件が長期未済として残っているものがあるが,年末現在係属事件の被告人総数,勾留されている被告人数,保釈されている被告人数,逃亡中の被告人数の状況を示すと,II-32表のとおりである。II-32表 年末現在係属事件の被告人の身柄関係(昭和33〜35年) 本表の「その他」には,在宅起訴人員,保釈以外の事由で釈放されている人員,保釈失効で未収監の人員,在監中の人員等が含まれている。この表によって明らかなとおり,毎年末の逃走人員が四,〇〇〇人を越えていることはまことに遺憾であるが,昭和三三年には逃走人員が全係属被告人の八・三%もあったものが漸次減少し,昭和三五年には六・五%に減少していることは好ましい傾向といわなければならない。 |