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1 公務員犯罪の概況 公務員による犯罪には,その公務員の職務に関連して行なわれるもの,すなわち収賄,横領等の犯罪と,その職務に関係のない犯罪とがある。ここで公務員犯罪というのはこの両者を含めた,およそ公務員により行なわれるすべての犯罪を指すものである。
ところで,最近公務員犯罪は漸増の傾向にあるといわれている。すなわち法務省刑事局の調査に基づく統計によって公務員犯罪の戦後のすう勢をみると,I-34表のとおりである。まず起訴不起訴合計人員については,昭和二一年以降漸増し,昭和二五年にはピーク(一七,七四七名)に達した。その後昭和二六年から漸減し,昭和二九年には九,二六〇名まで減少したが,昭和三〇年から,ふたたび増加の傾向を示しはじめ現在にいたっている。そして昭和三五年には一八,一四四名という戦後最大の数字を記録するにいたっている。また起訴人員についても,昭和二三年まで逐年増加し,その後数年間はおおむね横ばいの傾向を示していたが,昭和二九年を境として,以後年々増加の一途をたどり,昭和三五年には,一一,九八七名に達している。 I-34表 公務員犯罪の起訴不起訴人員(昭和21〜35年) 次に公務員犯罪を罪名別に概観してみよう。I-35表は,おもな罪名別に昭和三二年から昭和三六年までの五年間における起訴不起訴人員の平均値および平均起訴率を示したものである。これによって明らかなように,起訴不起訴合計人員では,収賄が最も多く,次いで横領,窃盗,職権濫用,詐欺,偽造の順と存っている。起訴人員でも収賄が最も多く,以下横領,窃盗,詐欺,偽造,職権濫用となっている。次に起訴率についてみると,収賄の四二・七%が最高率で,以下横領,詐欺と続き,職権濫用が最も低く一・一%となっている。なお,この表にはあらわれていないが,最近公務員による道路交通法規の違反が,かなり増加しているといわれている。また昭和三七年公職選挙法の一部改正により,いわゆる公務員の地位利用による選挙運動が禁止されることとなった(公職選挙法第一三六条の二)関係もあり,この改正直後行なわれた参議院議員選挙において,公職選挙法違反の罪により,検察庁で処理された公務員の数が七八八名(起訴人員は二四八名)の多きに達したことは注目に値しよう。I-35表 主要罪名別公務員犯罪起訴不起訴人員(昭和32〜36年平均) I-10図 公務員犯罪の起訴・不起訴人員の推移(昭和21〜35年) |