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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第4章/第1節/3 

3 家庭

(1) 保護者

 III-69図は,鑑別所収容少年の保護者が実父母である比率(以下「実父母率」という。)の推移を男女別に見たものである。

III-69図 鑑別所収容少年の実父母率の推移(昭和63年〜平成9年)

 実父母率は,女子において常に男子を下回り,男子は50%台,女子は40%台から50%台で推移しているが,男女ともおおむね緩やかな上昇傾向にある。
 なお,保護者の生活程度が中以上である者は,昭和63年には76.7%であったが,平成9年には86.4%となっている。

(2) 養育態度

 III-70図は,鑑別担当者が鑑別資料に基づいて判定した親の養育態度について,主要なものの推移を,男女別に見たものである。

III-70図 鑑鍵所収容少年の親の養育態度別構成比の推移(昭和63年〜平成9年)

 父母いずれの養育態度も,男女共に放任の比率が最も高いが,この10年間で低下する傾向にあり,一方,普通の比率が上昇傾向にある。特に,男子に対する母の養育態度は,平成8年,9年と普通の比率が放任の比率を上回っている。また,父親の方が母親よりも,全般に放任の比率が高くなっている。

(3) 親への態度

 III-71図は,鑑別担当者が鑑別資料に基づいて判定した少年の親への態度を,昭和63年と平成9年について,男女別に見たものである。

III-71図 鑑別所収容少年の親への態度別構成比(昭和63年・平成9年)

 親への態度は,いずれの年次も,男子で親和・信頼,女子で両価(一人に対して,相反する二つの感情や態度,特に愛憎が同時に生じること。)が,それぞれ最も比率が高い。親への態度は男女で異なっており,また父への態度と母への態度にも相違がある。特に女子では,父への態度で,拒否が男子に比べて,また母に対するよりも高い比率を示しており,父親との関係に問題がより大きいことがうかがわれる。
 平成9年における親への態度については,男女共に親和・信頼が,男子は両価が,それぞれ比率が上昇し,依存,無関心,拒否の比率は,男女共におおむね低下している。さらに,女子では,男子と異なり,両価の比率がわずかに低下している。男女共に親への態度がおおむね好転していることがうかがわれる。

(4) 現在の家族の問題

 III-18表は,鑑別の結果,少年の現在の家族に問題があるとして,鑑別担当者が評定(重複選択)した項目のうち主要なものを,昭和63年と平成9年について,男女別に見たものである。

III-18表 鑑別所収容少年の現在の家族の問題(昭和63年・平成9年)

 いずれの年次でも,男女共に指導力欠如の比率が50%前後を占めていて,最も高く,次いで,おおむね交流不足,しつけ不足の順となっている。女子では,男子より該当者の比率が高い項目が多く,家族の問題を抱えている者が多いといえる。また,各項目の比率は,昭和63年と比べて,平成9年にはおおむね低下している中で,指導力欠如,交流不足の比率が上昇し,とりわけ男子でその程度が大きく,さらに,男女共に問題がないとされる者の比率が上昇している。家族に問題がある者及びしつけ不足の比率は低下したものの,家庭の子どもに対する指導力欠如や家族間の交流不足が増えているといえる。