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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第7章/第2節/2 

2 少年院

(1) 概  説
ア 少年院の組織とその変遷
 少年院は,家庭裁判所の審判の結果,保護処分の一つである少年院送致の決定を受けた者を収容し,これに矯正教育を授ける施設である。
 第二次世界大戦終結前には,大正11年4月公布(12年1月施行)の矯正院法に基づき,矯正院で非行少年の処遇が行われ,昭和18年からは戦時体制下の処遇としての短期錬成(不良性軽微な者をも矯正院に収容し,2か月の短期間の錬成後,民間の軍需工場へ出業させる制度)もなされたが,これは終戦とともに廃止された。しかし,戦後の混乱期に,犯罪・非行の激増により多数の被収容者を抱え,物資の欠乏・食糧難等の困難な状況の中で,新しい時代の処遇が模索されることとなった。
 昭和23年7月,現行の少年法(昭和23年法律第168号)の公布と同時に,矯正院法に代わって公布された少年院法(昭和23年法律第169号)(24年1月施行)には,矯正教育の徹底と基本的人権の保障の観点から,少年院の教育的性格の明文化をはじめとして,新しい時代にふさわしい内容が盛り込まれた。(本編第2章第3節2参照)
 少年院には,庶務課,教務課(実際に少年の教育を担当),分類保護課(少年の入・退院及び分類・調査を担当)及び医務課の4課が置かれていたが,昭和63年4月には,教務課と分類保護課を統合して教育部門とする専門官制が導入された。少年院に勤務する職員は,法務教官,法務技官,法務事務官等であり,このうち,在院者の教育に携わる法務教官は,そのほとんどが教員免許又は職業訓練関係の指導員免許の取得者である。
 少年院法が施行された昭和24年に,矯正院として設置されていた20庁を新法による少年院としたほか,新たに8庁が設置された。その後も収容者数が増加を続けたため,20年代末までにさらに28庁が設置され,全国で合計56庁となった。さらに,その後も施設の新設・廃止等を経て,平成9年3月31日現在,全国で54庁の少年院が設置されている。
 少年院法施行当時の施設の多くは,少年保護団体の施設や旧軍事施設の転用であったため,物的設備は不十分なものであり,過剰収容等の事情も重なり,管理運営上の困難な状態が昭和30年代半ばまで続いた。
イ 少年院における矯正教育の展開
 昭和20年代半ば以降30年代前半までの間に,職業補導,通信教育,視聴覚教育,篤志面接指導等に関する運用通達や生活指導に関する通達が順次発出され,さらに,30年代の後半には,少年院の処遇を一層効果的にするため,各少年院ごとに,職業訓練,教科教育,体育等をそれぞれ重点的に実施する施設処遇のいわゆる特殊化・専門化の試みがなされた。また,少年院では,木工,板金,溶接,電気工事等の職業訓練を実施していたが,これらは,38年から職業訓練法(60年からは職業能力開発促進法)に基づく公共職業訓練として順次正式に認められるようになり,訓練修了者に対しては労働省職業訓練局長名(60年からは職業能力開発局長名)の職業訓練履修証明書の交付がなされ,少年の社会復帰に際しての大きな力となって現在に至っている。40年代には,収容者の非行性,資質,環境上の問題等に対応した,いわゆる処遇の個別化が図られた。
 昭和52年6月には,当時の少年院における収容期間の固定化や処遇内容の画一化への反省から,処遇の一層の個別化,収容期間の弾力化,各施設の処遇の特色化を図り,少年院における施設内処遇と仮退院後の保護観察との有機的一体化,さらには,関係諸機関や地域社会との連絡協調の一層の強化を基調とした運営改善がなされた。特に,収容少年の非行性,資質,処遇上の必要性に応じた処遇類型を新たに設置し,少年院の処遇を短期処遇と長期処遇に分け,新たに制度化された短期処遇については,一般短期処遇と交通短期処遇(主たる非行が自動車及び原動機付自転車の運転に係る,者を対象とする。)に区分した。
 昭和55年6月には,教育課程を編成する基準や,教育の実施結果を個人別に適正に評価する基準が示され,矯正教育の標準的枠組みの整備が図られた。さらに,具体的な処遇実践のため,56年,57年に「技法別指導手引書」(第一集,第二集)が作成され,作文,内省,読書,集会,役割活動等の指導のほか,心理劇,カウンセリング,自律訓練法,交流分析等の治療技法等の導入・普及が図られた。また,薬物濫用や交通非行等の行動に直接働きかけ非行性の除去を図る,いわゆる問題群別指導も実施された。
 平成3年6月には,短期処遇の運用が改められ,一般短期処遇に,教科教育,職業指導及び進路指導の三つの処遇課程が設置され,また,従来の交通短期処遇は交通事犯以外の一般事件の少年をも対象に含めた特修短期処遇へと発展的に改編された。(本項(1)ウ参照)
 平成5年9月には,長期処遇において,処遇分類の徹底を図り,処遇の個別化を推進する観点から,外国人少年を対象とする処遇課程の新設を含めた処遇課程の改編により,生活指導及び職業補導の教育内容の充実が図られ,また,円滑な社会復帰を図るための社会適応訓練の導入,職業資格取得の拡充等が実施された。
 平成8年11月には,従来の教育課程の在り方を見直すことをねらいとして,少年院における新たな教育課程の編成,実施及び評価の基準が定められ,9年4月から実施されており,少年院教育の一層の充実が推進されることとなった。
ウ 少年院の制度と処遇
 少年院には,収容少年の年齢,犯罪的傾向の程度及び心身の故障の状況に応じて,[1]初等(対象は心身に著しい故障のない,14歳以上おおむね16歳未満の者),[2]中等(対象は心身に著しい故障のない,おおむね16歳以上20歳未満の者),[3]特別(対象は心身に著しい故障はないが,犯罪的傾向の進んだ,おおむね16歳以上23歳未満の者),[4]医療(対象は心身に著しい故障のある,14歳以上26歳未満の者)の4種類があり,男女を分隔する施設のある医療少年院を除き,男女の別に従って設けられている。また,対象少年の早期改善の可能性の大小により,短期処遇と長期処遇とに区分されている。
 法律上,少年院に収容することができる期間は,原則として20歳に達するまでとなっており,少年院送致決定から20歳に達するまでの期間が1年に満たない場合には,少年院長は,送致から1年間に限り収容を継続できることとなっている。また,少年院長は,矯正の目的を達した場合には退院の申請を,少年が処遇の最高段階に向上し,仮に退院を許すのが相当と認める場合には仮退院の申請を,それぞれ地方更生保護委員会に対して行わなければならないこととなっている。
 少年が収容される少年院の種別は,家庭裁判所の審判において決定されるが,初等少年院送致又は中等少年院送致決定の際,短期処遇(一般短期処遇又は特修短期処遇)が適当である旨の処遇勧告がなされる場合がある。
 審判により少年院送致決定がなされた後,少年鑑別所は,これを受けて,対象者の特性及び教育の必要性に応じ,各少年院で実施されている処遇課程等を考慮し,収容すべき少年院を指定することとなっている。
 少年院においては,できる限り短期間に効果的処遇を実施するように努め,処遇の個別化と収容期間の弾力化を図っている。
 短期処遇を実施する少年院は,非行の傾向はある程度進んでいるが,少年のもつ問題性が単純又は比較的軽く,早期改善の可能性が大きいため,短期間の継続的・集中的な指導と訓練により,その矯正と社会復帰を期待できる者を対象とし,開放的な雰囲気の中で処遇を行っている。短期処遇は,運用上,収容期間を6か月以内とする一般短期処遇と,非行の傾向が一般短期処遇の対象者より進んでいない者を対象とし,収容期間を4か月以内とする特修短期処遇の二つに区分されている。
 長期処遇を実施する少年院は,短期処遇になじまない者を収容し,運用上,収容期間は2年以内とされている。
 これら少年院の分類処遇制度を示したものがII-67図である。

II-67図 少年院分類処遇制度

(2) 入・出院状況
ア 入院状況
 昭和24年以降の少年院新収容者の人員の推移は,II-68図のとおりである。(巻末資料II-40参照)新収容者は,26年に1万1,333人と最高値を記録し,以後減少しつつも,34年及び39年から41年にかけてピークを示した。42年以降は急減し,49年に1,969人と底となった後増加して,59年に6,062人のピークに達し,60年以降平成7年まで漸減傾向にあった。

II-68図 少年院新収容者の男女別人員の推移(昭和24年〜平成8年)

 平成8年における新収容者は4,208人,一日平均収容人員は2,945人であり,前年よりそれぞれ増加している。その内訳を,少年院の種別及び処遇区分別に見たものがII-39表である。(巻末資料II-41参照)

II-39表 少年院新収容者の種別及び処遇区分別人員(平成8年)

イ 出院状況
 平成8年の少年院出院者は,3,899人であり,その96.5%(3,762人)が仮退院者である。これら出院者の進路については,43.4%が就職決定,39.6%が就職希望,6.6%が進学希望,2.1%が中学校復学決定,1.7%が高等学校復学決定となっており,進路未定のまま出院する者は5.4%である。また,仮退院者の平均在院期間は,長期処遇では370日,一般短期処遇では148日,特修短期処遇では78日である。
(3) 新収容者の特徴
 少年院新収容者の特徴について,入院時の年齢,非行名,一保護者,薬物関係,不良集団関係等の面から,順次見ていくこととする。
ア 入院時の年齢
 II-69図は,少年院新収容者の年齢層別構成比の推移を見たものである。(巻末資料II-42参照)

II-69図 少年院新収容者の年齢層別構成比の推移(昭和24年〜平成8年)

 年長少年の構成比は,少年法の適用年齢が20歳未満に引き上げられた昭和26年以降は,39年,40年を除き,一貫して40%台から50%台を占めているが,平成8年は,44.1%と中間少年の42.6%と近接した比率となっている。
 平成8年の新収容者4,208人について,入院時の年齢別構成比を男女別に見ると,男子は17歳(25.9%)が最も多く,次いで,18歳(23.4%),19歳(21.4%),16歳(16.7%)の順となっており,女子は17歳(26.0%)が最も多く,次いで,19歳(20.4%),18歳(18.2%),16歳(16.6%)の順となっている。
イ 非行名
 新収容者の非行名に占める窃盗の比率は,年を追って低下傾向にあるものの,一貫して最も高い。近年では,傷害・暴行,恐喝等の粗暴非行,薬物非行,交通非行の比率が上昇傾向にある。II-70図は,こうした動きの中で,昭和26年以降5年ごとの新収容者の非行名別構成比を見たものである。
 平成8年の新収容者の非行名別構成比を男女別に見ると,男子は窃盗(37.2%)が最も高く,次いで,傷害(12.0%),道路交通法違反(10.9%)の順であり,女子は覚せい剤取締法違反(39.9%)が最も高く,次いで,虞犯(16.6%),窃盗(13.9%)の順となっている。(巻末資料II-43参照)

II-70図 少年院新収容者の非行名別構成比(昭和26年〜平成8年)

ウ 保護者
 II-71図は,昭和26年以降,新収容者の保護者の構成比を見たものである。保護者が実父母である新収容者の比率は,40%台から50%台を占めている。
 平成8年の新収容者のうち,保護者が実父母である者の比率は51.9%(男子52.6%,女子47.0%)とほぼ半数である。

II-71図 少年院新収容者の保護者別構成比(昭和26年〜平成8年)

エ 薬物等使用関係
 非行時に薬物等を使用していた新収容者の構成比を,統計資料の入手可能な昭和57年以降の15年間について見たものがII-72図である。非行時に有機溶剤を使用していた者の比率が低下し,非行時に薬物を使用していなかった者の比率が上昇している。
 平成8年の新収容者のうち,非行時に薬物等を使用していた者は30.5%(男子27.4%,女子54.1%)である。それらについて,使用薬物の種類を男女別に見ると,男子は有機溶剤(18.3%)が最も高く,次いで,覚せい剤(8.2%),大麻(0.3%)の順となっており,女子は覚せい剤(41.7%)が最も高く,次いで,有機溶剤(10.8%),大麻(0.8%)の順となっている。

II-72図 少年院新収容者の薬物等関係構成比(昭和57年〜平成8年)

オ 不良集団関係
 II-73図は,新収容者の非行時の不良集団関係を,昭和57年以降の15年間について見たものである。暴走族関係者の比率が上昇し,暴力組織関係者の比率が低下している。

II-73図 少年院新収容者の不良集団関係構成比(昭和57年〜平成8年)

 平成8年の新収容者のうち,不良集団に関係のある者は58.0%(男子60.3%,女子40.0%)である。その内訳を男女別に見ると,男子は暴走族(28.2%)が最も高く,次いで,地域不良集団(24.7%),不良生徒・学生集団(3.9%)の順となっており,女子は地域不良集団(21.5%)が最も高く,次いで,暴力組織(6.5%),暴走族(5.9%)の順となっている。
カ 共犯,職業,教育程度
 平成8年における新収容者のその他の特徴は,次のとおりである。
 [1] 共犯者がいる者は66.6%(男子68.0%,女子56.2%)であり,その内訳は遊び仲間が最も多く,共犯者の54.7%(男子54.0%,女子60.7%)を占めている。
 [2] 職業については,無職者が46.2%(男子43.6%,女子65.2%),学生・生徒が15.4%(男子15.0%,女子18.6%)であり,職業の中で最も多いものは,男子は建築関係の技能工(24.9%),女子は接客関係のサービス業(10.6%)である。
 [3] 教育程度は,中学卒業が47.9%(男子48.1%,女子46.8%)と最も高く,次いで,高校中退が32.9%(男子33.0%,女子32.1%),中学在学が8.3%(男子7.7%,女子12.9%),高校在学が7.6%(男子7.8%,女子5.9%)の順となっている。
(4) 少年院の処遇
ア 処遇の基本
 処遇課程は,一般短期処遇では,教科教育,職業指導及び進路指導の3課程,長期処遇では,生活訓練,職業能力開発,教科教育,特殊教育及び医療措置の5課程が,それぞれ設けられており,各処遇を担当する少年院は,全国を八つのブロックに分けて設けられた矯正管区ごとに指定されている。
 少年院の処遇を,入院から出院に至る時間経過に沿って見ると,新入時教育,中間期教育及び出院準備教育の三つの過程に分けられる。また,各少年の処遇段階で見ると,入院時の2級下から,改善,進歩等に応じて,順次,2級上,1級下,1級上と進級する四つの処遇段階に分けられる。
イ 処遇の流れ
 教育過程と処遇段階の関係を示したものがII-74図であり,以下,この図に従って説明する。

II-74図 少年院処遇の流れ

(ア) 新入時教育過程における教育
 この期間の指導のねらいは,新入少年の特性及び教育上の必要性を把握し,矯正教育への円滑な導入を図ることである。入院直後のこの期間には,健康診断や院内生活を理解させる指導及び境遇,経歴,教育程度,技能等の身上に関する各種の調査を行い,少年院長及び関係職員によって構成する処遇審査会の議を経て,一人一人の少年ごとに個別的処遇計画を作成する。
 この個別的処遇計画は,当該少年の処遇上の問題点,出院までに達成させるべき個人別教育目標,各教育過程ごとに設定する段階別教育目標,具体的な教育内容及び方法を記載の上作成されるが,固定化したものではなく,必要に応じて修正・変更される。
 1か月程度の新入時教育過程の後,中間期教育過程に移行する。
(イ) 中間期教育過程における教育
 この期間は,新入時教育過程における教育の成果を踏まえ,少年の特性及び教育上の必要性に応じた矯正教育の展開を図るものである。
A 生活指導
 在院者の個別的な問題の改善並びに健全なものの見方,考え方及び行動の仕方の育成を図るための生活指導の主なものには,[1]問題行動指導,[2]治療的教育,[3]情操教育,[4]基本的生活訓練,[5]保護関係調整指導,[6]進路主旨導かある。このうち,非行にかかわる意識,態度及び行動面の問題を中心に指導する[1]においては,いわゆる問題群別指導として,薬物,交通,家族,不良交友等の各問題を取り上げ,集団討議や視聴覚教材を利用した授業等により活発に実施されている。また,保護環境上の問題のある者も多いことから,面会・保護者会等での保護者を含めた指導や家族参加行事等を通して,家族関係の調整が行われている。
B 職業補導
 職業補導は,勤労意欲の喚起並びに職業に関する知識及び技能の習得を目的とし,[1]生産実習,技能実習を中心とする職業指導,[2]職業能力開発促進法等関係法令に基づいて行う職業訓練,[3]施設外の事業所等に委嘱して行う院外委嘱職業補導がある。
 少年院で実施している職業補導の主な種目は,男子では農業,園芸,溶接,木工等,女子では,事務・ワープロ,応接サービス,介護サービス等の22種目(平成8年12月31日現在)である。平成8年の出院者が,在院期間中に受けた職業補導の種目に関連して取得した資格・免許の取得人員総数は1,505人(出院者の38.6%)であり,その種類別人員の構成比は,II-75図のとおりである。

II-75図 出院者の資格・免許取得人員の種類別構成比(平成8年)

 院外委嘱職業補導の委嘱内容は,高齢者介護,スーパーマーケット店員等多岐にわたっており,平成8年中に出院した者のうち,693人(出院者の17.8%)が院外委嘱職業補導を受けている。
C 教科教育
 義務教育未修了者に対しては,教科教育課程に編入し,中学校学習指導要領に準拠した教科教育を実施しており,さらに,進路に応じて受験指導等も行うなど,出院時の円満な復学や進路選択に配慮している。また,短期間の院内教育の後,保護者の元から出身中学校又は高等学校に通学させ,週末だけ帰院させる方法が,主に特修短期処遇において実施されている。
 平成8年中に出院した者のうち,出院後に中学校又は高等学校に復学した者は,それぞれ81人,67人であり,在院中に中学校又は高等学校の卒業証書若しくは修了証明書を授与された者は,それぞれ224人,2人である。
 高等学校教育を必要とする者には,通信制の課程を置く高等学校に編入させるほか,大学等への進学を希望する者に対しては,それに応じた補習教育を実施して,文部省の行う大学入学資格検定を受験する機会を与えている。
 平成8年中に出院した者のうち,大学入学資格の認定を受けた者は2人,特定科目の合格者は12人である。また,学校教育以外の知識を必要とする者に対しては,書道・ペン習字,自動車整備工,電気工事士等の文部省認定の社会通信教育を受講させている。
D 保健・体育
 少年院においては,心身の健康の回復・増進が強調され,保健・体育の重要性が認識されている。保健では,保健衛生,健康管理に関する指導,体育では,体育実技,体力の向上に関する指導を実施している。
E 特別活動
 特別活動は,在院者に共通する一般的な教育上の必要性により,主として集団で行われるもので,[1]自主活動,[2]院外教育活動,[3]クラブ活動,[4]レクリエーション,[5]行事がある。生活に潤いを与え,余暇時間を活用し,多種多様な経験をさせるためには,特別活動の役割は大きいものがある。
 平成8年の出院者のうち,在院中に院外活動として外出したことのある人員及び外泊したことのある人員は,それぞれ3,615人(92.7%),430人(11.0%)である。
(ウ) 出院準備教育過程における教育
 1級上に進級した少年については,中間期教育過程から出院準備教育過程に移行するとともに,少年院長から地方更生保護委員会に対して,仮退院の申請がなされる。この期間においては,矯正教育の成果を総括し,社会生活への円滑な移行を図ることが指導のねらいであり,出院後の生活設計を立てるため,対象者の必要性に応じた進路指導が徹底される。就職希望者に対する求職方法等の具体的指導,進学希望者に対する受験指導・受験外出,進路未定者に対する情報提供等,少年の必要性に応じたきめ細かい進路指導が行われる。特に,出院後に予想される危機場面への対処方法を習得させるため,ロールプレイングや集団討議等を用いた社会適応訓練が活発に実施されている。
ウ 医療及び食事等
 専門的又は長期の医療を必要とする者は,医療少年院に収容されるが,その他の医療を必要とする者は,各少年院の医師の診察を受ける。しかし,少年院内で適当な医療を施すことができないときには,施設外の病院に通院又は入院させるなど,適当な場所で医療を受けさせている。
 平成8年の出院者のうち,在院中に病室等で治療を受けた者は,医療少年院での長期にわたる医療を受けた者を含め1,182人(30.3%)であり,その大半は短期間に治癒している。
 食事については,最近の国民一般の食生活水準と栄養学的知見を考慮して,平成9年4月1日から,一人1日当たりの総給与熱量は男子2,980kcal,女子2,600kcal,米と麦の重量比率は米80対麦20,副食費は一人1日467.73円となっている。
 衣類,寝具,その他日常生活に必要な物品は,少年院において貸与し,又は給与しているが,規律や衛生に害がないと認められる場合には,自己の物品の使用も許可されている。
エ 民間協力
 少年院の教育は,生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育及び特別活動の各領域における多くの場面で民間篤志家の協力を得て行われている。その一つとして,篤志面接委員と教誨師(本編第5章第3節1参照)による面接活動等がある。
 平成8年12月31日現在の少年院の篤志面接委員数は808人,8年における面接実施総回数は1万5,160回であり,その内容は,精神的悩み,教養指導等多岐にわたっている。一方,同日現在の少年院の教誨師数は344人,同年における宗教教誨実施総回数は3,993回であり,その内容は,在院者の希望や必要に応じて行う彼岸法要,講話,個別面接等である。
 最近10年間について,篤志面接委員数及び篤志面接相談内容別実施回数を見たものがII-40表であり,教誨師数及び宗教教誨実施状況を見たものがII-41表である。

II-40表 篤志面接委員数及び面接実施状況(昭和62年〜平成8年)

II-41表 教誨師数及び宗教教誨実施状況(昭和62年〜平成8年)