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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第7章/第1節/2 

2 少年審判

(1) 少年審判の変遷
 少年審判とは,少年事件についての処分ないしは措置を決定するために行う,一般の刑事裁判とは異なる審理・審判の手続をいい,(旧)少年法に始まり,現行の少年法に継承されている制度である((旧)少年法と現行の少年法の概要については,本編第2章第2節参照。)。
 現行の少年法は,少年事件の処理に関して,(旧)少年法が採用した審判等の非訴訟的な手続による制度を継承したが,少年審判は裁判所が行うことに改められ,少年審判所は廃止されて,新たに家庭裁判所が設けられた。これに伴って保護処分の決定と執行の機関が分離され,家庭裁判所は,原則として保護処分の決定のみを行い,執行は行政機関が行うこととされた。また,(旧)少年法では,少年審判所は保護処分の継続中いつでもこれを取り消し又は変更することができたが,現行法では,家庭裁判所は一度保護処分を決定してしまうと,これを変更することはもとより,取り消すことも極めて例外的な場合を除いては許されないこととなった。一方,(旧)少年法は,少年側からの保護処分に対する不服申立てを認めなかったが,現行法では,保護処分の決定に対して,決定に及ぼす法令違反,重大な事実誤認又は処分の著しい不当を理由に,処分の取消しを求める抗告を高等裁判所に申し立てることができることとした。
 少年審判所に置かれていた少年保護司の制度は,家庭裁判所に家庭裁判所調査官制度として引き継がれた。家庭裁判所調査官は,審判に必要な調査を行って裁判官を補佐するほか,少年の観護及び観察の機能をもつものとされた。
(2) 家庭裁判所における事件の受理及び処理の推移
 II-57図は,昭和24年以降について,少年保護事件の家庭裁判所受理人員の推移を一般事件及び道交違反事件の別に見たものである。受理人員総数は,26年以降増加し,41年に109万4,339人と最高値に達した。その後49年までは減少し,50年から再び増加に転じ,58年に68万4,830人とピークに達したものの,59年以降平成7年までは減少した。受理人員総数の推移は,道交違反保護事件の受理人員の推移におおむね連動している。

II-57図 少年保護事件の家庭裁判所受理人員の推移

 道交違反事件の受理人員は,昭和61年までは一般事件の受理人員より多かったが,62年に交通反則通告制度の適用範囲が拡大されたことにより激減し,以降平成7年までは減少している。これに対し,一般事件の受理人員は,昭和41年までは増加し,42年以降減少したものの,49年から再度増加に転じ,58年に30万2,856人と最高値に達し,その後63年まではおおむね横ばいとなり,平成元年から7年までは減少している。
 平成8年における受理人員総数は29万8,775人(前年より5,072人,1.7%増)であり,うち一般事件が19万620人(同3,797人,2.0%増),道交違反事件が10万8,155人(同1,275人,1.2%増)といずれも前年より増加した。
 交通関係業過,道交違反及び虞犯を除く一般保護事件の終局処分の構成比は,昭和27年以降平成7年までの間の審判不開始がおおむね40%台から70%台へと上昇傾向を示す一方,不処分はおおむね20%台から10%台へと低下傾向を示している。また,保護処分のうち,保護観察が10%台から1けた台に,少年院送致がおよそ8%から2%に,その間の起伏はあるものの,それぞれ低下傾向を示している。また,平成7年の交通関係業過,道交違反及び虞犯を除く一般保護事件における非行名別終局処理人員は,窃盗が最も多く,以下,横領,傷害,毒劇法違反等の順となっている。(巻末資料II-38参照)
 昭和27年以降平成7年までの間の交通関係業過の終局処分の構成比は,近年保護観察の比率が上昇傾向にあり,検察官送致の比率が低下傾向にあるのに対し,少年院送致の比率は,一貫して低い。同じ期間についての,道交違反の終局処分の構成比は,保護観察の比率が近年20%を超えており,少年院送致の比率は一貫して極めて低い。また,虞犯の終局処分の構成比は,審判不開始の比率が40%台から10%台への低下傾向,保護観察の比率が10%台から30%台への上昇傾向がそれぞれ見られ,少年院送致の比率は1%から5%の低い値で推移している。II-58図II-59図及びII-60図は,この間について,おおむね5年おきに,交通関係業過,道交違反及び虞犯の終局処分の構成比を見たものである。

II-58図 交通関係業過の家庭裁判所終局処理人員構成比(昭和27年〜平成7年)

II-59図 道交違反の家庭裁判所終局処理人員構成比(昭和27年〜平成7年)

II-60図 虞犯の家庭裁判所終局処理人員構成比(昭和27年〜平成7年)