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 平成 5年版 犯罪白書 第4編/第8章/第1節/1 

第1節 各国の状況

1 ドイツ

 1981年から1990年までの間のドイツにおける文通事故の発生件数,死傷者数及び事故率は,IV-20表のとおりである。
 ドイツにおいては,交通犯罪に関しては,道路交通法(StraBenverkehrs-gesetz)により,無免許運転,運転禁止命令中の運転行為等につき,刑罰を科することとされているほか,刑法により,道路交通に対する危害行為(故意による場合は5年以下の自由刑又は罰金,過失による場合は2年以下の自由刑又は罰金),交通における酩酊運転(1年以下の自由刑又は罰金),事故現場から不法に離れる行為(3年以下の自由刑又は罰金)等道路交通における重大な危険行為等につき,刑罰を科することとされている。
 他方,その他の駐停車違反,速度違反等の交通違反行為は非犯罪化され,秩序違反行為として,秩序違反法(GesetzUberOrdnungswidrigkeiten)に基づく過料(GeldbuBe)の対象とされている。過料は,後述の警告(Ver-warnung)制度が適用されない場合や,違反者が警告に応じない場合に科されるもので,行政官庁により裁定がなされ,違反者が期限内に異議の申立てをしない場合は確定し,違反者が異議の申立てをした場合は,記録が行政官庁から検察官に送付されて裁判所に提出され,裁判所により事実認定がなされて,判決又は決定により過料が科されることとなるが,行政官庁,検察官又は裁判所は,手続を打ち切ることもできる。なお,過料額は,他に定めがない限り,5マルク以上1,000マルク以下(なお,酒気帯び運転については,その上限が3,000マルクに引き上げられている。)とされ,また,これに付随して,1月以上3月以下の範囲で,運転禁止を命ずることができるものとされている。違反者が,行政官庁の裁定や裁判所の判決・決定が確定したにもかかわらず,過料を納付しなかった場合には,裁判所は,行政官庁の請求により強制拘束命令を発することができる。
 さらに,駐停車違反等軽微な秩序違反行為に対しては,警告制度が設けられ,警察官による警告金(Verwarnungsgeld)なしの警告や,5マルク以上75マルク以下の警告金付きの警告がなされ,警告金を支払えば,過料の手続から免れるが,期限内に警告金を支払わない場合は,上記の過料手続に移行する。
 なお,連邦交通大臣が,規則により,過料額や警告金の基準額等に関する基準を定めている。
 また,交通事故に関しては,刑法に規定する過失致死罪,過失傷害罪等が適用される。過失致死罪は,5年以下の自由刑又は罰金,過失傷害罪は,3年以下の自由刑又は罰金に処する旨規定されている。過失傷害罪は,親告罪とされ,告訴がなければ訴追されないが,刑事訴追につき特別な公益が存するときは,告訴がなくとも起訴することができる。また,保安処分の一種として運転免許の取消し(併せて,再取得禁止期間が定められる。),付加刑として1月以上3月以下の運転禁止刑を科することができるとされている。
 なお,ドイツにおいては,罰金刑に関しては,いわゆる日数罰金制(Tagessatzsystem)が導入されており,日数が原則として5日以上360日以下,日額が2マルク以上1万マルク以下の範囲内で罰金刑が科される。また,罰金を納付できないときは,罰金に代えて自由刑が執行される。
 1981年から1990年までの間の裁判所における道路交通法違反及び交通関係刑法犯の処理状況は,IV-21表のとおりである。

IV-20表 交通事故の発生件数,死傷者数及び事故率ドイツ(1981年〜1990年)

IV-21表 裁判確定人員