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 平成 5年版 犯罪白書 第4編/第8章/第1節/2 

2 フランス

 1982年から1991年までの間のフランスにおける交通事故の発生件数及び死傷者数及び事故率は,IV-22表のとおりである。

IV-22表 交通事故の発生件数,死傷者数及び事故率フランス(1982年〜1991年)

 フランスにおいては,道路交通における違反行為は,道路交通法(Code delaroute)により規制され,駐車違反,速度違反等は,第1級ないし第4級の違警罪(contravention),無免許運転の初犯等は第5級の違警罪,酒気帯び運転・酒酔い運転(2月以上2年以下の拘禁及び2,000フラン以上3万フラン以下の罰金又はその一方だけの刑)等は軽罪(delit)などとされている。
 さらに,同法に規定されている第1級ないし第4級の違警罪で罰金刑のみにより処罰されるものについては,反則金(amendeforfaitaire)手続の対象となる。反則金額は,違警罪の級別に,30フランから900フランまでの定額の反則金額が定められており,反則金手続が適用となる違反行為に対しては,違反者に通告書及び支払票が交付され,違反者が反則金を支払った場合は,公訴権が消滅する。違反者が反則金納付に異議がある場合は,その旨の申立てをすれば,刑事手続に移行し,検察官により,起訴(通常の手続又は略式手続)又は不起訴が決定されることになる。また,行為者が期限内に異議の申立てをせず,かつ,反則金を納付しなかった場合は,加算反則金(amendeforfaitairemajoree)の納付義務を負う。違反者は,加算反則金に対しても異議の申立てを行うことができ,異議の申立てがなされた場合は,反則金に対する異議の申立てにおける場合と同様に,検察官により,起訴(通常の手続又は略式手続)又は不起訴が決定されることになる。
 第5級違警罪とされる事件については,検察官により,違警罪裁判所(tribunaldepolice)に対し,通常の手続又は略式手続が採られる。略式手続が執られた場合は,裁判官は,弁論を経ずに,刑の免除又は罰金刑の言渡しを内容とする略式命令(ordonnancepenale)によって裁判をし,これに対し,検察官又は被告人から異議の申立て(opposition)があれば,事件は,通常の手続に従って違警罪裁判所の公判に付されることになる。また,軽罪とされる事件については,略式手続によることができず,軽罪裁判所(tribunalcorrectionnel)における通常の手続によることとされている。
 一方,交通事故に関しては,刑法に規定する過失致死罪,過失傷害罪等が適用される。過失致死罪は,軽罪とされ,3月以上2年以下の拘禁及び1,000フラン以上3万フラン以下の罰金(事故時,酒気帯び運転・酒酔い運転をしていた場合やひき逃げの場合は,2倍に加重される。)に処する旨規定されている。また,3月以上の完全な就業不能となる傷害等を生じさせた場合における過失傷害罪は,軽罪とされ,15日以上1年以下の拘禁及び500フラン以上土2万フラン以下の罰金又はその一方だけの刑(事故時,酒気帯び運転・酒酔い運転をしていた場合やひき逃げの場合は,2倍に加重される。)とされ,さらに,3月以上の完全な就業不能とならない傷害等を生じさせた場合における過失傷害罪は,第5級の違警罪とされ,10日以上1月以下の拘禁及び3,000フラン以上6,000フラン以下の罰金又はその一方だけの刑(事故時,酒気帯び運転・酒酔い運転をしていた場合は,軽罪とされ,15日以上1年以下の拘禁及び500フラン以上2万フラン以下の罰金又はその一方だけの刑)に処する旨規定されている。なお,前述のとおり,第5級違警罪とされる事件については,略式手続又は通常の手続が採られるが,軽罪とされる事件については,通常の手続によることとされている。
 また,過失致死傷罪や一定の道路交通法上の軽罪等については,判決の言渡しをする際,裁判所により,補充刑として,運転免許証の取消し,停止又はその交付の禁止を命ずることができるものとされている。
 1984年から1989年までの間の軽罪裁判所及び違警罪裁判所における道路交通法違反及び過失致死傷罪の科刑状況は,IV-23表のとおりである。

IV-23表 罪名別有罪人員