平成3年中に業過(その大部分は交通関係業過である。)及び道交違反により第一審の裁判所で懲役・禁錮の有罪判決の言渡しを受けた者は1万2,705人であり,有罪判決総数に対する比率は27.3%となっている。また,業過及び道交違反により有罪判決の言渡しを受けた者のうち,81.6%は執行猶予を言い渡され,実刑を言い渡された者は18.4%,2,333人である。
これら有罪判決の言渡しを受けた者が,どのような特質を有し,どのような意識をもっているかについて理解を深めることは,矯正処遇や更生保護を適切かつ効果的に実施し,あるいは交通犯罪の防止対策を講ずる上で,極めて有意義であると思われる。
このような趣旨から,法務総合研究所では,二つの特別調査を実施した。一つは,平成4年9月1日から6か月間に,交通関係業過及び道路交通法違反により,全国八つの交通事犯禁錮受刑者集禁施設(交通事犯懲役受刑者も併せて収容している。)に新たに収容された交通犯罪受刑者(以下「実刑群」という。)397人を対象として,実態調査及びアンケート調査を行った。他の一つは,4年11月2日から3か月間に,前記2罪名により,保護観察付執行猶予の言渡しを受け,初回面接のため全国の保護観察所に出頭した者(以下「執行猶予群」という。)116人を対象として,同様の調査を行った。
実態調査は,刑務所又は保護観察所の職員に対し調査票への記入を依頼し,また,アンケート調査は,調査対象者がアンケート用紙に直接回答する方式を採用した。
なお,実態調査及びアンケート調査の主な内容を列記すると,次のとおりである。
実態調査 身上経歴等一般的な事項,前科・前歴等に関する事項,本件に関する事項,本件事故に関する事項
アンケート調査 交通安全に対する意識,交通違反行為に対する意識,本件に対する罪意識,非刑罰化・量刑に対する意識,本件判決に対する評価,刑事処分・行政処分の受け止め方
これらの調査結果に基づき,最初に,実刑群及び執行猶予群の特質を明らかにし,次に,実刑群が執行猶予群に比べて多くの交通問題性を抱えていると仮定し,両群の比較を通して,特に,次の七つの事項について検討する。
検討する事項
[1] 違反内容,過失の態様と科刑の関係はどうなっているか
[2] 前科・前歴,執行猶予歴と科刑の関係はどうなっているか
[3] 運転経験等と科刑の関係はどうなっているか
[4] 被害の程度,被害者感情等と科刑の関係はどうなっているか
[5] 交通安全に対する意識はどうなっているか
[6] 交通規範に対する意識はどうなっているか
[7] 刑罰に対する意識はどうなっているか