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 平成 5年版 犯罪白書 第4編/第7章/第2節/1 

第2節 交通犯罪処遇対象者の実態

1 実刑群及び執行猶予群の特質

 最初に,実態調査に基づき,実刑群及び執行猶予群の特質を明らかにする。
 各群を罪名別に見ると,次のとおり,実刑群では,交通関係業過と道路交通法違反がほぼ同数であるが,執行猶予群では,道路交通法違反が約6割を占めている。
         合    計   交通関係業過   道路交通法
 実 刑 群    397(100.0)     199(50.1)    198(49.9)
 執行猶予群    116(100.0)     46(39.7)     70(60.3)
 以下,罪名が交通関係業過のみである者を業過群とし,道路交通法違反のみ又は交通関係業過と道路交通法違反である者を道路交通法違反群(以下「道交群」という。)とし,両群を比較検討することによって,実刑群及び執行猶予群の特質を分析する。
(1) 実刑群
 実刑群について業過群及び道交群の特徴をまとめると,次のとおりである。
 業過群  [1] 知能指数が高い
      [2] 本件時「職業運転手」が多い
      [3] 起訴猶予の回数が多い
      [4] 運転の動機が「業務」に基づくものが多い
 道交群  [1] 年齢が高い
      [2] 言渡し刑期が短い
      [3] 本件時「運転免許なし」又は「免許停止中」が多い
      [4] 本件までの運転実経験が長い
      [5] 道路交通法違反による罰金・科料の処分回数が多い
 本件時「職業運転手」は,業過群では22.6%,道交群では2.5%となっている。また,運転の動機が「業務」に基づくものは,業過群では22.1%,道交群では12.1%となっている。業過群では,「職業運転手」による事故又は「業務」中の事故が多いことが分かる。
 本件時「運転免許なし」又は「免許停止中」は,道交群では72.7%,業過群では17.1%,また,道路交通法違反による罰金・科料の処分「4回以上」は,道交群では39.9%,業過群では7.0%となっている。道交群では,何回も罰金を科されても懲りずに無免許運転を繰り返し,実刑を言い渡されている事例が多い。
(2) 執行猶予群
 同様に,執行猶予群について業過群及び道交群の特徴をまとめると,次のとおりである。
 業過群  [1] 本件時「職業運転手」が多い
      [2] 道路交通法違反による罰金・科料の「処分歴なし」が多い
 道交群  [1] 本件時「運転免許なし」又は「免許停止中」が多い
      [2] 道路交通法違反による罰金・科料の処分回数が多い
 業過群では,本件時「職業運転手」が19.6%を占め,道交群の1.4%を大きく上回っているが,道路交通法違反による罰金・科料の「処分歴なし」が65.2%で,道交群の15.7%に比べかなり高い比率を示している。
 道交群では,本件時「運転免許なし」又は「免許停止中」が62.9%で,業過群の23.9%を,運転免許取消し・効力の停止の回数「2回以上」が37.1%で,業過群の23.9%を,それぞれ上回っている。また,同群では,道路交通法違反による罰金・科料の処分「3回以上」が42.9%で,業過群の10.9%を上回っている。
 執行猶予群でも,業過群では「職業運転手」による事故が,道交群では常習による道路交通法違反行為が,それぞれ多く注目される。
 なお,執行猶予群では,罰金・科料以上の前科・前歴が相対的に少ないこと,現に執行猶予中でないことなども,特徴として指摘することができる。
 ちなみに,本件時執行猶予中の者は,業過群では皆無,道交群では31.4%で,いずれも実刑群(業過群では10.6%,道交群では77.8%)より低い比率となっている。